Saint Julien 評 価 その1 | ろくでなしチャンのブログ

Saint Julien 評 価 その1

      Saint Julien 評 価 その1 ボルドー第4版より 

 

 

概 観

 

位 置/ いろいろな意味で、メドックの中心である。マルゴーの北に

  あり、南はキュサック・フォール・メドックの村に、北はポイヤッ

  に接している。ボルドー市からは約35㎞。


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葡萄の栽培面積/ 880.6ha

 

       参考掲載 サン・テステフ  1,378ha

              ポイヤック     1,200ha
               マルゴー     1,356ha

 

村 名/ 中心になるのはサン・ジュリアン村だが、小さな区画がキュ

  サックとサン・ローランにある。実はサン・ジュリアン村の一部は

  ポイヤックにある。

  

平均年間生産量/49万ケース(1ケース12本)

 

       参考掲載 サン・テステフ  76.5万ケース

              ポイヤック 64万ケース
              マルゴー      64万ケース 

             

格付けされたシャトー/全部で11


   2 級  シャトー・デュクリ・ボーカイユ 
          Chateau Dhcru Beaucaillou 

        シャトー・レオヴィル・ラスカーズ 

          Chateau Leoville Las Cases 

        シャトー・グリオラ・ローズ 

          Chateau Gruaud Larose 

        シャトー・レオヴィル・ポワフェレ 

          Chateau Leoville Poyferre 

        シャトー・レオヴィル・バルトン   

          Chateau Leoville Barton  

   3 級  シャトー・ラグランジュ 

          Chateau  Lagrange  

        シャトー・ランゴア・バルトン

          Chateau Langoa Barton 

   4 級  シャトー・タルボ 

          Chateau Talbot

        シャトー・ベイシュヴェル 

          Chateau Beychevelle  

        シャトー・ブラネール・デュクリ 

          Chateau Branaire Ducru 

        シャトー・サン・ピエール 

          Chateau Saint Pierre   

 

主な葡萄品種/ カベルネ・ソーヴィニョン。メルローと少量のカベルネ・         

         フランがそれに続く。品種の構成比はポイヤックに追従

         する傾向がある。

 

主な土質/ 極めて細かい砂利。特にジロンド河沿いの偉大な畑はそう

      である。内陸部になると砂利も相当に多いが粘土も増してくる。

 

 サン・ジュリアンはポイヤックのコミューンが終わる地点から始まる。それが何よりはっきりするのが、レオヴィル・ラス・カーズが村境でラトゥールと接していることだ。ポイヤックから県道2号線(メドックのワイン街道)を南下すると、まずレオヴィル・ラス・カーズとレオヴィル・ポワフェレが両側に現れ、続いてランゴア・バルトンとレオヴィル・バルトンが右手に、デュクリュ・ボーカイユが左手に、そしてブラネール・デュクリュが右、ベイシュヴェルが左に出てくる。普通の速度で車を運転しても、これらの有名なシャトーを全て通り過ぎるのに5分もかからない。ジロンド河から離れたもっと内陸の一帯には、グリュオー・ラローズ、タルボ、ラグランジュ、サン・ピエールなどの大規模なシャトーがある。

 
 急進的なワイン造りや革命的な実験、新興のマイクロ・シャトーに関しては、サン・テミリオンやコート・ド・カスティヨンがボルドーで先陣を切っているが、メドックで(いや、この意味ではボルドー全体でもそうなのだが)サン・ジュリアンほどそう言った醸造技術が盛んに実践されている場所はない。だから、サン・ジュリアンを購入すれば好みのワインを手に入れられる可能性は高い。ブルジョワ級のシャトー、とりわけグロリアがつくる一群の高級ワインだけでなく、11の格付けシャトー全てが非の打ちどころのないワインを造っている。もっとも、いずれもスタイルは大きく異なっている。

 

赤ワイン ポイヤックはメドックで最も一級シャトーの多いことで有名なところで、マルゴーは最も広く知られたアペラシオンであるとするなら、サン・ジュリアンはメドックで最も過小評価されたコミューンである。サン・ジュリアンにおけるワイン造りは、グロリア、テレ・グロ・カイユ、ラランド・ポリーといったあまり知られていないブルジョワ級のシャトーから、レオヴィル・ラス・カーズ、デュクリュ・ボーカイユ、レオヴィル・ポワフェレ、レオヴィル・バルトン、グリュオー・ラローズといったこの地域で最も重要な5つのシャトーに至るまで、どれをとっても独特であり、輝きを放っている。最初に挙げた4つのシャトーは、全て川沿いに、水はけが非常に良い畑を持っている。最後に挙げたグリュオー・ラローズは内陸部にある。

 

赤ワイン レオヴィル・ラス・カーズは最もポイヤックに近いワインだ。大きな理由は2つある。畑がポイヤックの有名な一級シャトー、ラトゥールの畑に隣接しているのと、オーナーの故ミシェル・ドゥロンとその息子のジャン・ユベールが、けた外れの凝縮感のある、純粋な、タニックなワインを造っているためだ。その特色である香りは微妙なバニラのオークっぽさと手を結んだ荘厳なレベルのカシスやスィートチェリーの果実を思わせる。たいていのヴィンテージでタンニンのマントを脱ぎ捨てるには最低10年はかかる。グリュオー・ラローズとレオヴィル・バルトンは例外かもしれないが、サン・ジュリアンで初めからこれほど頑固なまでに内向的なワインはない。他の最高のシャトーはたいていあまり消費者の忍耐を必要としないワインを造っているようだ。

 レオヴィル・ラス・カーズはサン・ジュリアンに3つあるレオヴィルの名を冠するシャトーの1つでもある。現在、3つのレオヴィルはいずれも卓越したワインを生産しているが、ラス・カーズはそのうちで最良のものだ。これは所有者のドゥロン親子が完璧主義者であると言う理由によるところが大きい。


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赤ワイン 残りの2つのレオヴィルのうち、レオヴィル・ポワフェレは途方もない潜在能力の持ち主で、幸いにもその能力を生かすようになってきた。このシャトーの事務所とシェ(ワイン蔵)は、レオヴィル・ラス・カーズと同様、小さくて静かなサン・ジュリアン・ベイシュヴェルの町にある。ポワフェレの出来は、1960年代と1970年代はあまり芳しいものではなかったし、1980年代にもばらつきがみられたが(1983年と1982年は卓越していた)、1990年代に入って非常に将来有望と評価されるに至った(2000年、1996年、1990年のワインは大成功と言える)。今日ポワフェレは、以前に比べるとはるかに力強くてリッチで、目に見えて暗い色を見せるようになっている。

 

     

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赤ワイン  レオヴィルの名を冠した3つ目のシャトーはレオヴィル・バルトンである。傑出したワインで、ますます一貫性が出て来ている。ことに割と軽くてエレガントなワインを生みだすヴィンテージではそうである。1980年代半ば以降、非の打ちどころのないボルドー紳士の1人であり、最も魅力的なワインの擁護者でもあるハンサムなアントニ・バルトンが全てを取り仕切ってきたが、一貫性を規則としてきた。ここのワインは飲み頃になると西洋杉の香りがするようになる。古典的な、伝統的な造りのワインであり、サン・ジュリアンで最も男性的だ。また、メドックで最も適正な価格が付いたワインの1つでもある。

 

      

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赤ワイン アントニ・バルトンは、サン・ジュリアンにもう1つ、ランゴア・バルトンというシャトーを保有している。この印象的なシャトーは交通量の多いワイン街道(県道2号線)沿いにあり、レオヴィル・バルトンとランゴア・バルトン双方のワインを造る施設を備えている。ランゴアとレオヴィル・バルトンのスタイルが非常によく似ているのも不思議ではない。西洋杉のような香りがあり、豊かで、風味に富んでいるが、この姉貴分ほどの凝縮感を持つことはめったにない。

 

        

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赤ワイン デュクリュ・ボーカイユの敷地にはイタリア様式の大邸宅がどっしりと建っている。このシャトーは毎年レオヴィル・ラスカーズやメドックの一級シャトーの品質に迫るワインを生産している。私は、1970年に初めてここを訪れた時のことを鮮明に覚えている。老セラー・マスター、プレヴォス氏にデュクリュが著しい一貫性を保っている秘訣は何かと尋ねたところ、彼はあっさり「選りすぐること、選りすぐること、選りすぐること」と答えたのだ。巧みに運営されているシャトーで、所有者である名門ボリー家がワイン造りの全ての過程を監督している。ジロンド河を見下ろせる素晴らしい場所にあり、そのワインは、レオヴィル・ラス・カーズやレオヴィル・バルトンほど重々しくもタニックでも無く、またグリュオー・ラローズほど力強く、陶酔感はないが、古典的なサン・ジュリアンのスタイルであり、豊かで、フルーティな、口当たりの良い風味が出てくるまでには8年から10年を要する。レオヴィル・ラス・カーズがサン・ジュリアンのラトゥールであるとするなら、デュクリュ・ボーカイユはサン・ジュリアンのラフィット・ロートシルトである。

 1980年代後半には予想外のスランプに見舞われたが、すぐに持ち直し、2000年と1996年、1995年には壮観なワインを生みだした。

 

     

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赤ワイン デュクリュ・ボーカイユから叫べば声が届きそうな距離にあるブラネール・デュクリュとベイシュヴェルは、サン・ジュリアンの最南端にある。ベイシュヴェルが広く知られているのは、おそらく、観光客がこのシャトーの庭(メドックで最も写真撮影に向いている)を好むためであり、またワインがしなやかで、フルーティで、軽く、すぐに飲み頃になるためだろうが、良好な、1989年、1986年、1982年には傑出したワインを生みだしているとはいえ、ベイシュヴェルは常に、その出来栄えから予想される評価を上回る評判を得ている。私のスコア・シートでは「シャトー・不安定」と呼んでいる。

 

       

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赤ワイン ブラネールは正反対だ。道路を挟んでベイシュヴェルの向かいにあるこのシャトーは、あまりぱっとしない、陰気な感じに見える。1982年から品質の点でスランプに陥ったが、1989年の上等な作品以降力強く立ち直り、1995年と1994年には優良なワインを、1996年と2000年には格別のワインを世に送り出した。それでいて、これほどの品質のワインとしては、今でも低価格なものの1つなのである。隣のベイシュヴェルよりもいくぶん大柄だが、明らかに、重々しい力強さやエキス分よりもフィネスを重視するワイン造りの流れをくんでいる。間違えようのないエキゾチックな、豊かさを感じさせる香りのブーケは、西洋杉やチョコレートを思わせ、ブルーベリー/ラズベリーの果実の風味や、液化したミネラル感がある。唯一無二のスタイルのワインだ。3つのレオヴィルやデュクリュ・ボーカイユのような熟成能力を持つことはないだろうが、それでも8年から20年は熟成するし、豪勢なまでに豊かな、独特なスタイルのワインになることもある。

 

     

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赤ワイン サン・ジュリアンで秀逸となり得るワインとしては、ほかにグリュオー・ラローズとタルボが挙げられる。この2つのシャトーは長年コルディエ社が所有してきたが、今では売却され、新しい所有者の手でそれまでとはいくらか異なったスタイルのワインが生まれている。

 グリュオー・ラローズはジロンド河からみるとベイシュヴェルとブラネールの裏手に位置している。最近になって所有者が代わるまで、同じ厩社に所属した北隣のタルボともども、濃い色をした、リッチで、フルーティなワインを生産していたのだが、たいていのヴィンテージでは生硬なものになる傾向があるタルボよりグリュオーの方が優れていた。ただし、両者とも歴史的に見ればかなり品質良好なワインで、1978年から1990年までは輝きを放っていた

 また、両者とも3万5000ケースを超えるワインを生産しているため、1本当たりの価格は常に控えめなようだった。そのため、両者とも舌と財布を大いに満足させてきたのだが、とりわけグリュオー・ラローズは、1961年から1990年まで、しばしば一級に相当する品質のワインを造り出していた。批評家の中には、グリュオー・ラローズには真の一級ワインと張り合うだけの偉大な複雑さと持久力が欠けることがあるという声もあったが、それが根拠の無い批判であることは、一級ワインとの比較ブラインド・ティスティングによって繰り返し証明されている。新しい所有者の元で造られたワインは、しなやかで、よりフルーティで近づきやすいスタイルをしているようだが、もともとの純血種らしい、肉の様な、たくましいスタイルが犠牲になったわけでもない。

 タルボの一部の所有権はまだコルディエ家に残っているが、こちらも1990年以前の古酒より早熟な、よりフルーティな、よりタニックでないワインを生産しているようである。

 

          

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赤ワイン 残りの2つの格付けシャトー、ラグランジュとサン・ピエールは、ともに大きな個性の変化があった。過去数十年間にわたって評価の低かったラグランジュは、新しい所有者を日本から迎え、再出発の際にはレオヴィル・ラス・カーズの故ミシェル・ドウロンから専門的な助言を受けて、目覚ましく改善された。いまやサン・ジュリアンの偉大なワインの1つに挙げられるほどになったのである。力強い、フルボディの、非常に凝縮感がある、明らかに熟成させる価値のあるものになっている。そればかりか、価格も依然としてリーズナブルなため、事情通御用達のワインとなっている。

 

    

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赤ワイン サン・ピエールは常にひどく過小評価されてきた。スタイル的には、色やエキス分豊かで、フルボディで、時に幾分朴訥になる事もあるが、常に十分にふくよかで、たくましくて、フルーティなワインだ。現在、シャトーとワインは、故アンリ・マルタンの義理の息子であるジャン・ルイ・トリオーの注意深い監督の元に置かれている。彼はサン・ジュリアンで最も有名なブルジョワ級であるグロリアの監督者でもある。「マルタン風」スタイルへの移行は彼らの最初のヴィンテージとなった1983年から既に明らかだった。豊かな果実味があり、殆ど甘いと言えるほどに、飲みやすい、しなやかなワインで、絶大な人気を博している。おそらくサン・ジュリアンでは最も惜しげなく樽を使っており、エキゾチックで、華々しいワインは、品質的にも成功が続いているため、相当な関心を持たれてしかるべきである。


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 サン・ジュリアンは素晴らしいブルジョワ級にも事欠かない。秀逸なグロリアに加えて、優良なテレ・グロ・カイユーとオルトヴィ、スタイリッシュでエレガントなラランドボリー、幾分商業主義的で、鈍重な時も良好な時もあるデュ・グラナ、そしてメジャーなシャトーが造る良好なドゥジェーム(セカンド・ワイン)の一群がある。中でも最良なのはレオヴィル・ラス・カーズがつくるクロ・デュ・マルキという輝かしいセカンド・ワインだ。  

 

    

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 サン・ジュリアンは、貧弱・凡庸なヴィンテージの宝探しに向いている。実際、ここの土壌は軽くて砂利が多いマルゴーに似ているのだ。もっとも、サン・ジュリアンの方が粘土が多いため、マルゴーよりボディや粘り気感が強くなっている。主要な畑はほとんどジロンド川の近くにあるため、秀逸な、水はけの良い、砂礫質の深い底土を持つ傾向にある。そのおかげで、

  1992年1987年、1984年、1980年

という雨にたたられたヴィンテージであっても、サン・ジュリアンはボルドーの何処よりも受け入れられるワインを生産できたのだ。

 

 もっとも、秀逸から偉大なヴィンテージのサン・ジュリアンはメドックの神髄らしいワインになる。

 

 1959年、1961年、1970年、1982年、1985年、1986年、

 1989年、1990年、1995年、1996年、2000年

 

は本当に偉大なヴィンテージとなった。それに続くのが

 1962年、1966年、1983年、1988年、2001年である。

 

 

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