CH ディケム詳解 その1
シャトー・デイケム その1
Chateau D'Yquem
Premier Cru Supeieur
AOC Sauternes Commune Sauternes
~旧所有者ソヴァージュ・ディケム家の名に由来。
又は旧の一帯の地名がディケムとの説も
セカンド セカンドとしての販売では無いが〝 Y〝 イグレック 。
畑 面 積 125ha(生産中は103ha)
年間生産量 9万5千本~11万本
オーナー SAデュ・シャトー・ディケム
リュル・サリュース家
1711年フランス政府から取得
作付割合 セミヨン80% ソーヴィニョン・ブラン20%
平均樹齢 30年
植栽密度 6,500本/ha
平均収量 8hl/ha
土質等 浸透性の少ない粘土と砂利、表土は砂利が混じった
薄い砂質層が多いが、多様性がある。
収穫・選果 6週間から8週間かけて、最低でも4回の収穫。
150人(常用雇用者40名)の摘み手。粒の収穫。
タ ン ク 木製桶枠プレス 3基、 3回の圧搾。
発 酵 2週間から6週間
新樽比率 100% 4社 焼付ミディアム
樽 熟 成 42ケ月
酵 母 自然酵母
澱 引 3ケ月に一度
コラージュ す る、ゼラチン(一説に雄牛の血?)
濾 過 ヴィンテージにより。
特 徴 リッチでふくよかで甘い。スクタール(神の酒)
香 り カラメル、スイカズラ、桃、アンズ、蜂蜜、
オレンジマーマレード、ココナッツ、パイナップル、
飲み頃の続く期間/ 収穫後10年から100年 出典 ボルドー第4版
飲む時期、予想される成熟度、デカンティング時間
シャトー・ディケムはデカントなしで若い側で楽しむことができます。もちろん、ワインは甘いですが、信じられないほど際どい酸味がたくさんあり、ワインは常に新鮮で、決して閉じていないので、若い子で楽しむのはとても楽しいです。シャトー・ディケム、そして率直に言って、すべてのソーテルヌでは、温度はデカンテーションよりも重要です。
シャトー・ディケムはリリース時に美味しいです。しかし、d'Yquemは35年~50年、または最高のヴィンテージではさらに長く完全に成熟することはありません!それは魔法が起こるときです!しかし、それは世界のワインを飲む人の99%にとって非現実的です。だから、それを必要とする特別な機会にそれを楽しんでください。
出典 The Wine Cellar Insider
マリアージュ
シャトーディケムは、摂氏14度、華氏57度でお召し上がりいただけます。涼しい、ほとんどセラーの温度は、ワインにより多くの新鮮さとリフトを与えます。ワインはグラスの中で自然にゆっくりと温まり、アロマの複雑さが増し、肉付けされます。
シャトー・ディケムは、シーフード料理、特に貝、ロブスター、カニ、カキを半殻で添えて提供できます。フォアグラは、その自然な甘味、塩味、風味の特徴との完璧な組み合わせです。シャトーディケムは、スパイシーなローストチキン、子牛肉、豚肉の料理と組み合わせることもできます。
スパイシーなアジア料理、寿司や刺身などの生の魚、チーズは、ハードとソフトの両方で、シャトーディケムとの相性も抜群です。 出典 The Wine Cellar Insider
ノン・リリース・ヴィンテージ
1910年 1915年 1930年 1951年 1952年 1964年
1972年 1974年 1992年
貴腐ワインの由来について、オーナーが旅行中に収穫の指示を忘れたために貴腐ワインとなったとの説は、ドイツのシュロスヨハニスペルグの話であり、混同されて伝えられたものと思われる。
オーナーがドイツ人フォックスの時代に、トゥール・ブランシュが意図的に貴腐ワインを造ったようです。
ロシア皇帝の弟であるコンスタンティン公が通常価格の4倍の値を付けて購入したことにより、ヨーロッパ王候貴族に知れ渡り名声を博したのがきっかけで有名となりました。
浸透性の薄い粘土質土壌のため、97㎞に及ぶ排水設備(パイプ埋設)を完備、1本の樹からグラス1杯しか採れないとされ、樽熟成3年の内、エンジェル・シェアは20%。
1978年は全収量の85%を格下へ。プリムール販売は行っていないようです。
セカンド的な存在として、イグレックがありますが辛口ワインもあるようです。イグレックはディケム用には使えないものを使用しているとの説と貴腐菌の付かないであろう区画の葡萄を収穫して作られるとの2説がありどちらがほんとうか不明です。ただし、ディケムに使えない果汁はソーテルヌ名で販売との記述からみると、一定区画の果汁からイグレックが造られるとした説が正解かも。
べた甘さの全くない正に極上の上品な甘さ。アイス・ワインより数段スッキリとさせた甘さ。あたかも、高級羊羹を食べた時にお茶がなくても沢山食べられるのと一緒。口の中の甘さを洗い流す必要のない甘さと言ったら少しは伝わるでしょうか。
貴腐ワイン
貴腐菌(ボトリテス・シネレア菌)は熟成途中の葡萄に付着して腐らせてしまいます。しかし、一定の条件下では成熟した葡萄に付着した貴腐菌の菌糸が果皮の中まで入り込み葡萄の水分を外気に放出することとなり、結果的に糖分エキスが凝縮した干葡萄状となります。貴腐菌によりグリセリン、グルクロン酸の生成も行われるためワインは複雑な風味を得るようです。
一定の条件は、貴腐菌が繁殖しやすい環境であり、カビの一種ですから当然適度な湿気となります。湿度が高すぎても良い環境とは成らず、夏の晴天が多く、秋口に朝もやが立ち、午後に晴れる環境が良いとされ、水辺が条件となります。
ディケムでは、北にガロンヌ河、特にシロン川に近く、いつも微風が吹き、湿り過ぎず、適度な湿度がある条件が整っていると言われています。ガロンヌ河の湿気とシロン川の湿気、シャトーを取り囲む森が年間92日間にも及ぶ霧の発生を生むと言われているようです。
しかし、いつでも上手く貴腐菌が付くとは限りません。秋口の雨でせっかくの貴腐菌が流されてしまい、ディケム用の葡萄を得ることが出来ず、ディケムがリリースされない年も発生し、ノン・リリース・ヴィンテージとなってしまいます。
因みに、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイアズーがディケムとともに世界三大貴腐ワインと呼ばれているようです。
収穫・選果
ディケムがデイケムであるための要因の1つが厳しい選果にあるようです。150区画に分けられた畑からの収穫は完熟した葡萄のみを選ぶこととなるのでしょうが、ディケムでは葡萄の貴腐化が房によっても異なるため、貴腐化した房の一部分だけを収穫、又は粒のみを収穫するという厳しいもので、同じ房を5~6回収穫するそうで、長い時は8週間に渡ることもあるようです。
貴腐ワインを造る
前述のとおり完熟(貴腐化)した葡萄のみを、収穫から1時間以内に醸造所に運ばれ圧縮機で絞られることとなります。ですからメジャー・シャトーが赤ワインを造る際に、区画ごとに収穫した葡萄をそれぞれ別タンクで発酵させるのとは異なります。ディケムでは収穫した日日毎に完熟(貴腐化)した葡萄のみを圧縮機にかけることとなるので、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランが混じる事もあるようですので正確なセパージュは判らないと思われます。
圧縮は空気圧式と垂直式の圧縮機を使っているそうですが、1回目、2回目は空気圧縮機を使うそうで、1回目で約75%の果汁が絞り出され、2回目は15%が絞り出されるようです。最後に垂直式圧縮機にかけて絞り出すようです。
得られた果汁は地下タンクに移され、発酵が始まらないように温度を下げて1晩寝かされます。お早う!朝だよ!一晩お寝んねした果汁の底には不純物が沈殿しているので、上澄みを新樽に移して室温を上げて酵母不添加でアルコール発酵をさせます。
アルコール発酵が終了したものは、ステンレスタンクに移され-4℃に保たれ、再度発酵が起きないようにし、その後新樽に移され2年から3.5年間の樽熟成となります。
アルコール発酵に於いて、糖度が14度になっても発酵が止まらないものは、二酸化硫黄を添加して発酵を強制的に止める(ミュタージュ)そうです。このミュタージュを行った樽に関しては最初の1ケ月から1ケ月半バトナージュを行うそうです。補糖はした事が無いのが自慢とか。
収 量
1ha当たり800ℓ(約1,066本)から900ℓ(1,200本)しか生産されません。ディケムでは1本の葡萄樹から1杯のワインしか採れないと言っていますが、平均植栽密度が6,500本/haですから、6,500本/ha÷1,200本≒5.41本となり、1本のディケムを造るのに5.41本の葡萄樹が必要となります。1本のディケムからグラス6杯として概ね辻褄が合いそうですが、ソーテルヌ・グラスで飲むとなると6杯以上採れることとなり、辻褄が合わなくなりそうですが、全収量は使えませんので計算通りかも。
葡萄品種
栽培面積の20%を占めるソーヴィニオンの収穫から始めますが、貴腐化はあまり期待していないようで、独特の風味、複雑さ、果実味が得られます。セミヨンはワインに骨格やアルコール分をもたらすようです。
セカンド扱い?〝 Y〝 イグレック
Y は英語で ワイ ですね。フランス語では イグレック なのだとか。ワインは辛口の白ワイン。貴腐化する前の葡萄を収獲。年間生産量 1.2万本
シャトー・ディケム詳解 その1 詳解はこちら
シャトー・ディケム詳解 その2 1967年~1997年 詳解はこちら
シャトー・ディケム詳解 その3 1998年~2010年 詳解はこちら
シャトー・ディケム詳解 その4 2011年~ 詳解はこちら
シャトー・ディケム詳解 その5 詳解はこちら
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