京都橘120期と新しい仲間に、心から感謝。 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

前回の投稿から1ヶ月も経ってしまいました。既に卒業してしまった120期についてどうしても書いておかなきゃいけないことがありますので、ここでまとめておきたいと思います。

 

前回まで書いていた京都橘高校吹奏楽部の第60回定期演奏会の最終日には、多くの来賓や関西テレビをはじめとする取材が入りました。その中で、「日本でただひとりの吹奏楽作家」として有名な「オザワ部長」も2年連続の取材をしていました。

 

 

正式な取材でなければ得られない貴重なインタビューや写真は、貴重なものです。ちなみに、この記事の中で紹介されている動画は、本番当日の通しリハーサル、所謂「ゲネリハ」と呼ばれるものの様子です。唇がバテると本番に影響が出るので、トランペットやトロンボーンなどはポイントになる部分でしか吹いていません。なので、音の迫力は感じられません。

 

 

2022年の台湾公演から京都橘の一番側にいる中華文化総会の李さんも、来賓のひとりでした。

 

 

また、李さんは演奏会の翌日に学校で行われた「卒部式」にも列席して、卒業生たちを見送りました。

 

彼は、5月11、12日に京都で開催された台湾の見本市「TAIWAN PLUS」の主要メンバーでもあり、11日に京都橘がパフォーマンスをすることになったのも、彼のセッティングだと推測できます。これからも京都橘と台湾の絆は続いていくことになるのでしょうね。ただ、今期は既にスケジュールがびっしりで、台湾訪問はかなり難しそうですが・・・。

 

 

 

 

2017年の秋口から京都橘を追っかけている私にとって、120期は特別に思い入れがある年度になりました。

5月に開催された「博多どんたく」で初めて生の彼らを見て、さらにパフォーマンス以外のところでも彼らの様子を見ることができたので、もうほとんど「親目線」です。

 

正直に言えば、音に迫力がなくて、拍子抜けしました。同じパレードに参加している他の強豪校の音と比べると、明らかに「聞き劣り」しているように感じました。「暗中模索」といった印象だったのです。

そんな彼らがたった半年で見違えるように成長していった姿は、手放しで賞賛したいと思うのです。

 

120期のパレード・プログラムは、選曲・曲順共にとても素晴らしいものでした。けれども、振り付けは細かい複雑な部分が多くて、全体的にはダイナミックさに欠けているように思えました。多分、やりたいことがたくさんありすぎて、それを全部詰め込んでしまったのかもしれません。

そんな中で私のお気に入りは、「アメリカン・パトロール」で隊列が揃って左右へ移動する部分です。

 

 

視覚効果抜群でしょう?ローズ・パレードでは観客から距離があるので、こういったダイナミックな動きがアピールできるんじゃないかと思っています。

また、パレードの固定概念を覆す「星に願いを」は、京都橘の歴史の中でもエポックメイキングな選曲でした。

 

 

パレードにおいてスローな曲を導入するなんて、頭の固い吹奏楽関係者たちからは批判されそうですが・・・。

「聴かせるマーチングバンド」を体現する美しいハーモニーと美しい振り付け。曲の終わりに拍手・歓声が起こることを想定していたかのような完成度です。これまでも常識を打ち破ることを次々にやってきた京都橘ならではの快挙だと思います。

そのパレードの完成形は、台湾西門町でのパフォーマンスで見ることができます。「博多どんたく」の時と同じプログラムとは思えない素晴らしさです。

 

 

 

「3000人の吹奏楽ファイナル」で彼らが見せた驚きのフォーメーションは、DCIでしか見たことのないものでした。

 

 

このパターンがマーチング・コンテストのプログラムに取り入れられるんじゃないかという私の予想は見事に裏切られたんですが、昨年までの全国金賞のプログラムを凌駕するものに進化しました。

全編見どころですが、私のお気に入りは、まず「バラ色の人生」のイントロです。

 

 

鈴木英史氏によるロマンティシズム溢れるドリーミーなアレンジ。それを視覚的に表現するフォーメーションと振り付けは、繰り返し見ても飽きることがありません。

カンパニーフロントは当然素晴らしいのですが、一列に揃うまでの過程がスリリングで鳥肌が立ちます。

そして、クライマックス「The Sing」における高速フォーメーション・チェンジ。

 

 

他の強豪校のプログラムで、こんなに走り回る姿を見たことがありません。完全に京都橘の専売特許になった感がありますね。

きっと、今年度も驚かせてくれることでしょう。

 

 

 

 

 

さて、何の予告もなくアップされたのが、12月14日に台北の国家音楽庁で開催された単独コンサートの全貌を収録した動画でした。

予想を遥かに上回る素晴らしさで、120期の到達点を克明に記録したコンサート映像です。これをじっくり見れば、120期の完成度の高さを感じることができます。

まずは、第一部の「コンサート・ステージ」です。

 

 

1曲目は、イタリアの作曲家ヴェルディの歌劇「アイーダ」より「凱旋行進曲」です。残念ながら過去の動画はありませんが、京都橘は昔から折に触れて演奏してきました。とてもスケールの大きな曲で、吹奏楽でも人気の曲です。クラシック音楽に詳しくなくても、サッカーの試合では耳に馴染んだメロディです。

 

 

トランペットによる典雅なメロディが応援歌になるなんて、天国のヴェルディも予想していなかったでしょうね。

ここでの京都橘の演奏は、9分にも及ぶ大曲を途中ダレることもなく、実に緻密に組み立てています。「兼城サウンド」の究極の形と言える出来です。「楽しい演奏」を楽しみにして来場した台湾の観客も、彼らの実力に驚いたに違いありません。

クラシカルな曲をこれ1曲にして、ポップス・ステージへ移ります。観客のことを考えると、この割り切った構成は見事と言うしかありません。台湾でもよく知られている日本の曲を続けます。

そして、120期の座奏のハイライトとして演奏されてきた「翼をください」は、理想的な形で演奏されます。客席の通路に部員たちが散らばって、観客へ向かって歌います。たぶん台湾ではあまり知られていない曲だと思いますが、リズム・インしてからの観客の反応を見ていると実に楽しそうで、この演出は大成功だったと言えますね。

台湾公演のための特別プログラム「五月天(Mayday)メドレー」は、なかなかレアですね。台湾を代表するロック・バンドMaydayは2000年代にはしばしば来日もしていて、テレビにも出ていました。日本のバンドGLAYとも親しくしていたようで、たびたび共演もしていました。野外フェス、サマー・ソニックにも出演しています。そのおかげで、私も知っていました。ここでのメドレーでは、彼らのヒット曲を3曲繋げています。その最後の曲を、ライヴ映像でご覧ください。

 

 

楽器編成こそロック・バンドではありますが、メロディがとてもポップですね。観客がいっしょに歌えるような曲が多い印象です。

京都橘の演奏は、譜面を追うことに集中しているように見えます。リハーサルもそれほど出来ていないはずなので、それも仕方ないことですね。

座奏のプログラムの最後は「We Are The World」ですが、とても上手いMCさんの盛り上げでアンコールになります。マーチング・コンテストのプログラムを演奏するというアナウンスに、客席からどよめきが上がります。期待していたのか、はたまたサプライズだったのか・・・?

このプログラムは、マーチング抜きでたびたび演奏してきました。鈴木英史氏のアレンジの緻密さと京都橘の表現力を存分に楽しめる演奏です。人数制限もなく、全員でのゴージャスな音の洪水。演奏しながらも、自身に溢れた笑顔が印象的です。締めくくりの「The Sing」は、やっぱりドラム・セットが良いですねー。この一年で最も練習してきた曲のはずで、完璧な演奏でした。

 

 

そして、観客の皆さんお待ちかねの第二部「マーチング・ステージ」が開幕です。

座奏では気付かなかったのですが、録音が特殊です。中央のマイクを使っているようですが、指向性の強いもののようで、中央部の音だけが極端に大きくて両端の楽器の音が小さく収録されています。スタンド・マイクはきちんと使えているのに・・・、実にもったいないです。会場ではバランス良く響いていたと信じたいです。

 

 

構成の完璧さには、文句の付けようがありません。

120期を代表するナンバーは、どれ?と問われたら、私は迷わず「Celebration」と答えます。

京都橘の「美しさ、楽しさ、カッコ良さ」が詰め込まれた、素晴らしいナンバーです。これは他の団体で実現するのは、絶対に無理でしょう。振り付けとフォーメーションを考案した構成係には、称賛の拍手を送りましょう。

腰を痛めているピアノの部員には、椅子とクッションが用意されています。続く「君の瞳に恋してる」は、通常は彼女がグロッケンを担当するのですが、移動に時間が掛かることを見越して後輩がイントロだけを担当しています。このあたりの「なんとかする」ところは、毎度のことながら京都橘らしさを実感するのです。

 

「Summertime」は大人な振り付けがおしゃれな、私のお気に入りのナンバーです。

ステージの右側で4人のユーフォニアムがメロディを吹いていますが、全く聞こえません。前述した指向性の強いマイクのせいですね。実にもったいないです。

 

「My Way」では、ハープにもマイクを立てていて、高音のアルペジオが美しく収録されています。

ここ数年、スローな曲をマーチングに取り入れてきた京都橘ですが、120期においてそれが完成されたと言えます。振り付けの素晴らしさもありますが、ハープを大胆に取り入れたことはマーチングにおける「革命」とも言えると思います。音だけではなく、ヴィジュアル的にインパクトがありますもんね。

 

「Uptown Funk」は、一番人気のナンバーになりました。

久しぶりにBruno Marsのオリジナルを聴いてみたら、全く違う楽器編成にも関わらずオリジナルの世界観を見事に表現できていることに驚かされました。「橘グルーヴ」が完成されたからこそ実現できたカッコ良さです。そうそう、ティンパニによるアクセントが効果的ですよー。聴き逃し厳禁です。

 

ハープなしでは成り立たない「80日間世界一周」は、格調高く優雅な仕上がり。新しい京都橘をアピールするナンバーだと言えます。

 

端正な「Sing,Sing,Sing」でプログラムを締めくくると、大きな話題になったアンコール曲「愛の讃歌」へ続きます。

このアンコールの動画がアップされた時、私は台湾の人々へのリスペクトが彼らの笑顔と涙へ繋がったのだと書きました。けれども今回のコンサートの全貌を通して見てみると、それ以外に自分たちのベストを見せることができた満足感も大きな要因だと実感できました。そう断言できるほど、ベスト・プレイ満載の完璧な構成のコンサートでした。間違いなく120期の活動を総括する動画の決定版です。

 

正直なところ心配しかなかった5月の「博多どんたく」から、よくぞここまで成長してくれたと、親目線で感涙するのです。

私の記憶では、最も成長具合が大きかった年度です。実に良いものを見せてもらいました。120期の全てのメンバーとスタッフに、心から感謝します。

 

 

 

 

 

京都橘高校吹奏楽部について記事を書き始めてから1年半ほどになります。

私にとっての宝物は、私の拙い記事を暖かく見守っていただいた読者の方々です。何人かの方とはプライベートなメッセージのやり取りもするようになりました。身近に語り合う友人がほとんどいませんので、とても心強い仲間達です。そんな中のお一人から、こんなものを送っていただきました。

 

 

定期演奏会のプログラムと、2日目のクイズの賞品のクッキーです。

どのようにして感謝の気持ちを示せば良いのかわかりません。お返しできるものもありませんし・・・。

感謝の心を忘れずに、これからも記事を書くことしか私にはできません。

 

 

新入生を迎えた121期も既に動き始めています。今年は、どんな驚きと笑顔を届けてくれるんでしょうか?

 

 

今回で120期についての記事は、ひとまず終了です。

最後は、フラワークラウン画伯による120期を記憶に留めるイラストです。これからも、お世話になります。