9月27日。
私にとって、多大な影響を与えてくれた偉人が2人亡くなりました。
The Crusadersのサックス奏者で、ベース奏者としても幅広く活躍したWilton Felder氏。
もう一人は、1970年代のハリウッド大作映画の監督として知られる、John Guillermin氏です。
Wilton Felderについては、これまでもブログで何度も取り上げてきました。
The Crusadersのメンバーとしてデビューしたものの、なかなか売れなかったために、ベーシストとして数々のセッションに参加して日銭を稼いでいたようです。1960年代にはMotownのセッションにもかなりの数に参加しているようですが、当時は詳細なクレジットが全くないので、正確な記録が残っていません。けれども、Jackson 5の「I Want You Back」も、Wiltonがベースを弾いているらしいです。
また、私の大好きなBarry Whiteの初期の頃のベースも、ほとんどWiltonが弾いているようです。もちろん世界的に知られている「愛のテーマ(Love's Theme)」も、Wiltonらしいです。
彼のソロ・アルバムについての記事は、こちら。
最初の一音だけで「彼」だとわかる個性的な音は、限りない魅力を感じます。
「No Matter How I Get」
そして、一時期私がベースを練習している時に、レコードに合わせて繰り返しプレイしていたのが、Wiltonが全面的にベースを弾いている「Free Ride」でした。
派手なプレイは全くないものの、実に印象的なフレーズを作り出していて、現在でも私が影響を受けていることをしばしば感じます。
冷静に考えても、私の「音楽」の原点の大きな「核」のひとつだったと痛感するのです。
恩人に、心から感謝です。
John Guillermin氏は、ハリウッドの大作映画の監督として映画史に残る人です。
彼が監督した作品は、70年代の3本だけをチェックしておけば、十分かもしれません。
まずは、74年の「タワーリング・インフェルノ(The Towering Inferno)」。
実は、私がハリウッド映画にのめり込むキッカケになった作品です。
それまでも映画館で映画を楽しんでいた私ですが、今まで観たこともないスケールの大きさに、カルチャー・ショックを受けたのでした。
The Towering Inferno Main Title
映画については、ジェニファー・ジョーンズの訃報を受けて、ちらっと記事にしています。
そして、76年の「キングコング(King Kong)」。
こちらも、ハワイのロケーションが素晴らしくて、鮮烈な印象です。
John Barryの音楽が魅力的で、記事にしています。
King Kong Love Theme
さらに、78年の「ナイル殺人事件(Death On The Nile)」。
当時ブームだったアガサ・クリスティのミステリーを映画化したうちの一本です。
これも、スケールは大きかったですねー。
Death On The Nile Main Title
この3本は、批評家の評価はそんなに高くはありません。
確かに、大き過ぎるスケールをまとめきれずに、凡庸な画になっているところが多々あります。「キングコング」にしても、近年のPeter Jackson監督のリメイクの方が、遥かに映画としてのまとまりがあります。
なぜ、この時期にJohn Guillermin氏に大作が任されたのでしょうか?
私の勝手な推測ですが、大人数のキャストやスタッフをまとめる力があったのではないでしょうか?つまり、監督としてのスキルよりも、彼の「人徳」が必要だったのではないかと思うのです。特に、「タワーリング・インフェルノ」と「ナイル殺人事件」は、ひとクセもふたクセもある大スターが大挙して出演しています。これらのキャストをまとめるのがとんでもなくプレッシャーになることは、想像に難くありません。それを無難にこなしたのは、まぎれもなくJohnの最大の功績でしょう。
そして、何よりも私が映画ファンになるキッカケを作ってくれた「大恩人」なのです!!
さらに、この3作は大予算であることもあって、音楽が豪華です。
「タワーリング・インフェルノ」が、John Williams。「ジョーズ(Jaws)」でアカデミー賞を受賞する直前の作品ですね。
「キングコング」は、John Barry。既に名声を確立していたJohnが、個性として確立していたエキゾチシズムをフルに発揮した、名スコアです。
「ナイル殺人事件」は、大御所Nino Rota。ナイル川の雄大な流れを表現したスコアは、今でも印象に残っています。Ninoにとっても、最もスケールの大きな作品でしょう。
ということで、私はこの3作については、サウンドトラック・アルバムを当然のように持っているのです。
この出会いは、全てJohn Guillerminがいなかったら、なかったのです!
John Guillermin氏に、心から感謝です。
R.I.P.
と、私の恩人二人の記事を書いているところに、また訃報が入って来ました。
Phil Woods氏。9月29日に、83歳で亡くなりました。
アメリカ出身のサックス奏者ですが、本国ではず~っと不遇で、ヨーロッパを拠点にして活動をしていました。本国で評価されたのは、晩年になってからでした。
ヨーロッパでの活動が長かったせいでMichel Legrandと親密な関係にあって、彼との共演作もたくさんあります。
私は恥ずかしながら彼のリーダー・アルバムは持っていませんが、ジャズ・ヴァイオリンのStephen Grappelliとの共演作などは持ってます。ヨーロッパの影響を受けたちょっとおしゃれな感じのプレイが、彼の魅力だと思っています。
そんな彼がジャズ・ファン以外にも知られるようになったのが、Billy Joelの名曲「素顔のままで(Just The Way You Are)」での、印象的なサックスでした。
Billy Joel : Just The Way You Are
私がPhilの名前を初めて知ったのも、この曲でした。
明るくて流麗なアルト・サックスのプレイは、当時話題になりましたもんね。
Phil自身は彼のスタイルを崩すことなく、呼ばれるままに様々なセッションに参加していました。
SMAPのスタッフにも私と同年代で「Just The Way You Are」をリアル・タイムで体験している人がいるようで、SMAPの6枚目と8枚目、さらに「Smappies II」にもPhilを呼んでプレイしてもらっています。今となっては、貴重な録音ですね。
ということで、久々の更新が訃報記事になってしまいました。
私の音楽生活に多大な影響を与えてくれた御三方に、心からの感謝です。
R.I.P.
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