Wilton Felderの「Inherit The Wind」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

先日のBobby Womackの訃報から、このアルバムをじっくり聴き直してみました。

Inherit The Wind

Wilton Felderの1980年リリース作「Inherit The Wind」です。
一度CD化されたものの、近年ではプレミアが付いていた作品です。
2012年に2in1でリリースされたのを今年になって知った私は、すぐに購入したのでした。

80年のリリース当時は、レンタル・レコードからダビングしたテープをヘヴィ・ローテーションしていました。Crusadersのサウンドが気に入っていた私にとって、当然のようにこの作品もお気に入りの一枚なのでした。



私がBobby Womackの名前を胸に刻むキッカケになったのが、アルバム・タイトル曲「Inherit The Wind」です。


Wilton Felder : Inherit The Wind



覚えやすいメロディに、Wiltonの絶好調のテナー・サックス。勢いを感じます。曲毎の詳しいクレジットがないので想像するしかないのですが、この曲に関してはWilton自身がベースを弾いているように思えます。
そして、なんと言ってもワン・アンド・オンリーのBobbyのヴォーカルが絶品ですね。
ゲスト・ヴォーカルを引き立てながらもWiltonのソロも存分に楽しめる絶妙のバランスは、フュージョンの典型と言っても過言ではない名演だと言えるでしょう。


2曲目はDonny Hathawayの名曲「Someday We'll All Be Free」です。


Wilton Felder : Someday We'll All Be Free



今でこそ多くのカヴァーが存在する名曲ですが、恥ずかしながら私がこの曲を知ったのは、このWiltonのヴァージョンだったのです。
奇を衒うことのないシンプルなアレンジで、3コーラス繰り返すだけの構成なのですが、実に聴き応えのある演奏です。
1コーラス目は、Wiltonが朗々とメロディを吹きます。Wiltonの歌心を満喫して下さい。
2コーラス目は、男女のコーラス隊による歌です。さらっと聴くとHenry Manciniみたいなイージー・リスニングっぽい歌なんですが、珍しいバリトンの声が入っていてハーモニーに厚みを加えています。それに絡むWiltonのアドリブも、とっても魅力的です。
3コーラス目になって、やっと「大御所」Bobbyのヴォーカルが登場します。この「じらし方」には、思わずニヤリとしてしまいます。
Bobbyのヴォーカルをもっと聴きたいという方のために、彼のソロ・ヴァージョンも存在しています。こちらをどうぞ。


しっとり&エモーショナルな曲の後は、リズミカルなナンバーです。


Wilton Felder : Until The Morning Comes



Abraham LaborielのベースとPaulinho Da Costaのパーカッションがラテンの風を感じさせてくれて、爽快です。Wiltonのサックスも、豪快で見事です。
Joe Sampleのピアノの音色も、素敵なスパイスになっています。
ラテン・フュージョン、良いですねー。大好きっ!


「Insight」は、アルバム中最も「トンガッた」曲です。
クラヴィネットがリズムを支配していて、コーラスが「ディスコ」を感じさせます。
Wiltonも、Michael Breckerが当時多用していたエレクトリック・サックスで、ソロを組み立てています。
シンセの音が「時代」を感じさせますねぇ。
私にとっては「古い」音なんですが、ひょっとしたら今、逆に新鮮なのかもしれませんね。
クラヴィネットに負けていないAbeさんのベースは、この曲最大の聴きものでしょう。


「LA Light」はJoe Sampleの作品で、Crusadersのアルバムに入っていても何の違和感もない曲です。
マイナーの曲ですが、サビでメジャーに転調する時の開放感が最高です。
WiltonとAbeさんのプレイが光っています。


アルバムのラストも、Joe Sample作の「I've Got A Secret I'm Gonna Tell」です。
エキゾチックなイントロから引き込まれます。
ここでのWiltonは、アルト・サックスを吹きます。テナーほどの個性はありませんが、実に気持ち良いですね。Grover Washington,Jr.やSpyro Gyraみたいな感じもあります。
アルバムを通して聴くと比較的地味な曲なんですが、実は緻密にアレンジされています。ベース、パーカッション、ギターなど、ソロこそありませんが、それぞれに聴かせどころが用意されているんです。
そして、終盤にゲストが登場します。
フレットレス・ベースとドブロ・ギターが、掛け合いを始めます。ホントに気持ち良くて印象に残るプレイです。ミュージシャン・クレジットがないので、誰が弾いているのか全くわかりません。
当時のフレットレス・ベースと言えばダントツでJacoが有名ですが、JacoとCrusadersの接点が私には思いつきません。ドブロ・ギターについては、皆目わかりません。けれども、この気持ち良さは格別です。
この二人のプレイのおかげで、カントリー風の余韻を残してアルバムは幕を閉じます。
ひょっとしたら、私はこの曲が一番好きかもしれません。


ということで、Wiltonの最もブリリアントな時期の音を楽しめると共に、様々な音楽を取り入れた正に「フュージョン」という言葉がふさわしいサウンドがぎゅっと詰め込まれたアルバムなのでした。

これは、私が胸を張っておすすめできる「フュージョン」の傑作です!



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