「明日はあいにくの雨が降るでしょう」
お昼の天気予報で、
キャスターがそう言った。
もしかしたら今日が、
桜のピークかもしれない。
そう思い、
以前許可を頂いた事もあり、
ギターとビデオカメラを持って、
母校である「伏見南浜小学校」へ自転車を走らせた。
そして教頭先生にご挨拶をし、
誰も居ない校門と桜並木を、
(バックではなく)フロントにして、
主人公のその後の雰囲気として、
今の僕の心境を二番の歌詞として添え、
「コトバショvol.2」として、
「森山直太朗」さんの「さくら(独唱)」を歌って来た。
タイトル通りまさしく、
「独唱」だったけど、
鳥のさえずりと、
風の音色と、
行き交うバイクや、
車や電車の音と、
ハーモニーを奏でてた気がする。
誰もいないのに、
メチャクチャ緊張した。
誰もいないからこそ、
自分の心の細かい細かい部分が、
瞑想してるかのように、
あらわになって唄と向き合えた。
テクニックに走ろうとする自分を止めたり、
前から誰かが歩いて来て、
目が合ったらどうしようとか、
っていう妄想を振り切ったり、
とにかくこの唄と言葉に、
集中する為に全精力を注いだ。
そのせいか歌い終わった後、
内臓がすごく痛かった。
「唄ってすごいエネルギーを使うんだなぁ」。
一年間ライブ活動から遠ざかっていた事で、
改めて歌う事の凄さと難しさを感じた。
帰り際ギターに夕陽が映り込んでいた。
ギターホールの中に、
沈んでいきそうで何だか、
ずっと見ていたかった。
片づけて門を出ようとした時、
アウトロで画面を左から右へ、
歩いてった黒猫が僕を見てた。
なんだか23年前も、
この猫に見られたような、
錯覚におちいって首を振った。
歌詞通りあの頃の友達は、
いまどこで何をしてるんだろう。
この場所で又、
会える日が来るといいな。
その時桜の花びらが一枚、
僕の自転車のカゴに入った。
掴もうとしたら、
スルリと落ちて飛んでった。
「又会えるよ。
掴もうとせずに、
ただ待ってれば必ず」。
そう言われた気がした。
※上記写真:櫻井幹也(京都・伏見)