日米FTAについて、以前一文 を書きました。趣旨は「もうちょい、データに基づいて、かつ国際情勢も見た上で判断すべき」ということでした。


 選挙が終わったので、あれこれと資料を取り寄せました。なかなか興味深い結論が見えてきました。


 まず、アメリカからの輸入に占める農林水産物の額は2008年でおよそ2兆1940億円で、輸入額全体で27.4%になります。かなり大きいなという印象があります。なお、2007年は1兆9653億円で、比率は23%前後です。徐々に増えてきているようです。


 その中でも大口は実はトウモロコシです。アイオワ、イリノイあたりの中西部が主たる生産地です。全体の1/4程度はトウモロコシの輸入です。食用・工業用もありますが、飼料用が圧倒的に多いです。そして、飼料用トウモロコシの関税は無税です。


 そして、次は小麦で農林水産品全体の10%程度です。小麦については、色々と複雑な制度がありますが今、輸入しているものの大半の関税は無税です。その後、国内に入った後、マークアップという課徴金が課されますが、これは関税ではないというのが政府の仕切りです。


 次が第3位がたばこです。これはパイプ用たばこは結構高い関税(29.8%)がありますが、普通のたばこは無税です。ちなみに、これを主管する官庁は財務省です。農林水産省ではありません。専売公社の伝統がここで引きずられています。


 その後、豚肉、大豆、生鮮・乾燥果実、丸太、たら、冷凍野菜、ペットフードと続きます。豚肉は差額関税で有税ですが、大豆は無税、生鮮・乾燥果実は有税ですけど、私に言わせるとそれ程高い関税とは思えません(大半が10%以下で、目立つのはりんごの17%)。ましてや熱帯果実については、そもそも日本で取れないものについては関税を課す必要がないのではないかと思っています。これについての農林水産省の見解は「熱帯果実の消費が増えると、日本産果実の消費量が減る。だから関税を課すのだ。」ということのようですが、ちょっと眉唾だと私は感じています。


 ・・・、こうやって見ていくと、仮にアメリカ側からの輸入の25%強が農林水産品であったとしても、相当程度は関税が無税なわけです。勿論、小麦のように純粋に無税とは言えないものもありますが、それでも無税は無税です。


 その一方で、自由貿易協定(FTA)は、原則貿易の自由化である中、例外が認められています。国際的に確立した基準はないのですが、概ね10%の例外は認められるとされています。この「10%」が何を指すのかについても議論があります。ただ、金額ベースで考えれば、農林水産品をそれなりに守るツールは用意されているし、それである程度の部分は守りとおせると思うわけです。


 そうやって考えると、交渉くらいは始めてもいいんじゃないかなと思ったりします。守るべきものが守れないのなら、妥結しなければいいのです。そもそも、アメリカよりも輸入における農林水産品の比率が高いオーストラリアとですらFTA交渉を始めているのです。その時は大した議論にはなりませんでした。


 日米FTAによって、日本が得るものはたくさんあります。その大半は非農林水産品です。ただ、経団連の皆様は、米国市場で韓国、中国、EUとの競争で勝つためのツールとしてFTAを切望しているはずです。いつも、不満なのは経団連をはじめとする産業界はこういう時に前面に出てくれないのです。FTAをめぐって、経団連と農協が向き合ってhard talkしてくれないかなという思いが私にはあります。