日米FTA
テーマ:外交日米FTAが話題に上ってきていますね。外務省のGATT・WTO屋さん上がりとしては思いが深いのですが、時間もないので簡潔に書いておきます。結論から言うと「議論が浅くて、とても残念」ということです。
● 自由貿易協定(FTA)には完全自由化の例外がある
FTAというのは、締結する国の間で「基本的に」貿易を自由化しましょうということです。本来の意義は、締結する国の間で事実上市場が統一できるくらいまで自由化されているなら、GATT・WTOで定められている無差別原則(特定の国に自由化したら、その自由化の成果はすべての国に適用されるということ)の例外を認めましょうということです。まあ、本来、このFTAの例外は、ベネルクス3国のようなとても小さい市場統合に適用されることを想定しており、今のようなFTA全盛時代を想定していたものとは思えませんが、それはともかくとしてFTAというのはそういうことになっています。
しかし、上記で「基本的に」と書きました。「基本的に」とお役所が書く時は、必ず例外があります。FTAの自由化にも例外が認められることは、これまで既に確立しています。さて、どれくらいの例外かというと「9割自由化すればOK」というのがEUの内規だったように記憶しています。この9割をどう計算するかというのは実は更にテクニカルな話がありますが、それをあえて捨象してみると、「日米間の貿易の9割を自由化すればFTAを締結できる」と考えることができます。
では、今、日本はアメリカからの輸入のうち、どの程度の農林水産品を輸入しているのでしょうか。的確なデータを探すことができなかったのですが、穀物はアメリカから日本への輸出の6%です。穀物以外にも色々と農林水産品を輸入していると思うのですが、その中には無税品目もあるでしょう。
私が上記に書いたことはすべてデータがいい加減なので、もしかしたらお叱りがあるかもしれませんが、「日米FTA=日本農業の崩壊」なんてことになるかなという気もします。「10%は例外」というその「10%」を使えば、どの程度のモノが守れて、どの程度のモノが自由化になるのかという議論なしに感情的な論調が起こっていることに懸念を覚えます。
● 韓国の動きを見れば
私はこの日米FTAの議論を考える時、常に韓国の動きを気にしています。韓国は超積極的にFTAに動いています。韓国はEUやアメリカと既にFTAについて合意しています。インドとも合意に達しました。既に発効しているかどうかは詳らかにしていませんが、ともかく李明博大統領の姿勢は相当程度積極的です(盧前大統領とて消極的だったわけではありません)。
韓国の思惑の中には「日本企業との間で優位に立つ」というのがあると思います。例えば、アメリカ市場、EU市場において、自動車で関税があるなしでは競争力に相当な差が出るのはお分かりいただけるでしょう(今は現地生産も多いですが)。韓国は日本がこの件でモタモタしている間に、さっさと出し抜いていこうと思っているはずです。
では、韓国ではこういうFTAに対する反対運動がないかというと全然そんなことはないのです。むしろ、日本よりも激烈な反応が農林水産業に従事する方から出てきます。最初にたしか韓国はチリとFTAを締結しましたが、その時の果物業界の反応は非常に激しかったのを覚えています。それでもあえて、国家戦略としてFTAの必要性を認識して、日本企業を出し抜いてやろうとする姿勢には怖いものを感じます。アメリカはそれ程FTAについては積極的ではないのですが(たしか、NAFTAを除くと、イスラエル、ヨルダンといった国とのFTAくらいだったように記憶しています)、そのアメリカをテーブルに引き出して締結にまで持っていくのも大したものです。
● ただですね・・・
私はあまりFTAがこういうかたちで跋扈するのは好きではありません。日米FTAということになると、世界の第一位と第二位の経済大国が二人で寄り添って貿易を自由化すれば、日本市場、アメリカ市場から排除される国が出てきます。そもそも、貿易理論上は上記の「無差別待遇」が一番世界全体にとって利益を最大化できるはずであり、その前提に立てば、日米FTAが世界貿易にもたらす歪曲効果というのは極めて大きなものがあるでしょう。世界で大国同士がどんどんFTAを締結するようになったら、WTOの中にある「世界みんなで発展していく道を探りましょう」というお題目が完全にパーです。
まあ、そんな理想論を言ってもしょうがないんですかね。ともかく攻撃的な貿易政策を考えて、日本がガツガツ外国市場を席捲していくことが、この大競争時代には必要でしょう。気がついたら、韓国企業にボコボコにやられているのも嫌ですしね。逆に言うと、そういう視点が全くなく、かつ「10%」例外でどの程度守れるのかの検討もなく、ただ、選挙のネタとして簡略化した議論だけが前に進んでいるのは残念であります。











1 ■無題
党首討論、日米FTAに関する鳩山代表の反論、歯がゆいです。「貿易額ベースの9割でいったら日米より難しい日豪を始めたのは今の与党だ」といってほしかった。
それにしてもこういうテーマに対するコメントって少ないですね。私は好きですよ。
いよいよ公示です。東京から応援しています。