64(ロクヨン) | アブエリータの備忘録

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横山秀夫氏の『64』を読み終えて、NHKドラマの『64(ロクヨン)』を見終えた。


文庫本で読み始めたころ、ふとしたことでテレビドラマの主役がピエール瀧さんだと知った。以来、本を読んでいても彼の顔が浮かぶようになった。


本から得られる人物像を大事にしたいので、他の登場人物についてはできるだけ情報が入らないようにしていた。


読みながら自分の中で思い描いていた登場人物は、NHKドラマの配役とはかなりズレていた。


段田安則の役は寺尾聰でイメージしていた。
吉田栄作の役は当然、上川隆也のものと・・・。


映画や他局でのドラマのキャストと重なってしまって、本の中で描写されているような人物像を描きにくい。


この小説は、謎解きの推理小説的展開と並行して、主人公の、家出したまま行方不明になっている娘の物語が絡んでいる。


ピエール瀧という俳優が5回シリーズのドラマの主役と知った時は驚いた。この主人公の武骨な外見は娘の家出の原因にもなっていて、その一点だけで選ばれたのでは?と思った。


ピエール瀧は、脇役やコマーシャルでの存在感はユニークなものがあるが、彼の演技は決して上手いとは言えず、実際、原作でイメージしていた人物像の迫力には届かなかったように思う。セリフもボソボソと力が無く、聞き取りにくかった。この年齢層で他にもっと演技力がある俳優はいなかったのだろうか。


映画では佐藤浩市がその役を演じるそうだが、原作のイメージからまた遠く離れてしまう。ピエール瀧のほうが適役だ。


しかし、あくまで「原作」であり、映画製作にはいろいろ脚色され、創作が加えられたストーリーで、客寄せ効果の高い「旬の俳優」が使われて、エンターテインメント性の高い作品に仕上げられる。


『64(ロクヨン)』は、著者の長いブランクの後、文庫化するまで待ちに待った作品だったので、じっくり楽しむつもりだった。


ところが、全編を通して密度が濃く、読み終わるまでかなりのエネルギーを消耗した。また、NHKドラマの5回シリーズも重くて、すべて読み終わり、観終わった時はなんだかとても疲れていた。


年齢と共に読む力も衰えているようだ。