大人になってからのルドルフは実質約15分の出演時間ですが、3人ともそれぞれのアプローチでその人生を描きました。
今回は澄輝さやと、蒼羽りく、桜木みなとの3人について、ルドルフを中心に書きます。
澄輝さやと
最初から壊れそうなオーラや自死する結末を全く感じさせないところが最大の特徴であり魅力だと思います。
演じる側、観る側、多くの方が物語を知っている再演物の場合、ゼロからフレッシュに役の人生を生きるのはかなり難しく、センスや感性を問われます。
澄輝ルドルフは青年ルドルフとして純粋に強く高い思想を持って生き、仲間にも感化され国王への欲も垣間見せています。
そんな夢や希望と、どこか臆病な面との表裏一体も含め、常に表情豊かに演じていました。
また歌だけにナーバスになることなく、その歌詞と歌詞の心情を吐露することに集中しており、話すように歌うことで言葉に気持ちが自然に乗り、抜群の説得力が生まれました。
「闇が広がる」の銀橋デュエット、澄輝ルドルフはトート@朝夏まなとに引きずられているので足が地面との摩擦でガタガタしていることに気づきました。
確かに足元がスーッとスムースに動いていくより自然な動きなのかもしれません。
握った手にかける体重、体の倒し方の工夫もあると思いますが、かなり繊細にバランスを保つ必要があると思います。
2人の間に相当な信頼関係があるのを感じました。
エルマーとしては第13場ハンガリーの場面が特筆に値します。
突き出した銃を下ろすスピード、角度、雰囲気がトート@朝夏まなとの下ろす手と完全にシンクロしていました。
合わせているというより、エルマーが魂から操られているような動きで、何気ない一瞬でしたがそこに漂う霊気のようなものは役への集中力に依るものだと思います。
蒼羽りく
彼女はルドルフを「トートによって生み出され、運命を握られた存在」として演じていて、終始儚さが漂っていました。
ルドルフはトートがエリザベートに愛されるために操った様々な人生、そこから派生する歴史がきっかけで生まれた存在という視点に立つことができます。
その場合、エリザベートにとってルドルフは最初希望となり、そして彼の死によって絶望となりました。
彼はどんなに必死に生きても、そこには常にトートがいて、だから儚い存在としていつも非力でした。
たとえ無意識だとしても(トートに)操られている感じが蒼羽ルドルフにはあるので、「常に、そしていつか壊れてしまいそうなルドルフ」という役へのアプローチ、この場合は適切だと思います。
この役作りは演者が「ルドルフが自死する」という結末を知っているが故に、(演者が)役に死を意識させて儚い存在になるのとは全く異なります。
蒼羽りくのルドルフは何か精神の深いところ、あるいは大きな存在に魂を掴まれ、どんなに頑張ってもその範囲でしか生きられないように見えました。
また、怯える姿、苦しむ姿がピュアで非常に切なく感じられました。
実は今までにない新しいアプローチなのかもしれません。
桜木みなと
桜木みなとは「クレバーなルドルフ」。
世間知らずに育ったフランツと異なり、世の中を、少なくとも国を現場から知り、自らが受けてきた教育を国のため、国民のために活かせる賢い人物に映りました。
ただ、その賢さで国を変えるだけの力(政治力)がなく、また本当に力になってくれる人がいない点で常に孤独でした。
不甲斐なくてやるせなくて・・・そこをトートに突かれて奮い立たせられます。
しかしもちろんその程度の奮起で彼の描く改革(革命)が成功するわけもなく、見事に失敗。
(クレバーなルドルフが冷静であれば、こうなることは分かっていたはずなのに。それでも思い切ってしまうほど彼は孤独に追い詰められていたのだと思います)
エリザベートにも見放され、トートに誘われるままに黄泉の世界へ行ってしまったルドルフ。
「生きていけない」
この考えに到達するまで、ルドルフは考えすぎるほど考えたのでしょう。
賢いことが災いしたようにも見えます。
考えすぎて、トート以上に自分を追い込んでしまった。
この不幸の辛さ、想像以上に重いなと。
非常に嬉しかったのは彼女の歌唱力。
美しく伸びる高音に、パンチ力のある歌声。
絶叫しそうな気持ちが、歌にこもって劇場に、心に響き渡りました。
ルドルフがここまで歌えて、トートとしっかり「闇が広がる」のデュエットが成り立つ。
こうでなくては、とその余韻にまで鳥肌が立ちました。
もともと情感に溢れる声質で、個人的にも好きな歌声なのでこれからもっと様々な役で、場面で聴きたいです。
(という矢先、KAATで存分に聴かせてもらいました!)
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「ヅカデミー賞2016」、25日(日)まで投票受付中。
・・・と言いながら私は4部門全てまだ悩み中です。。