和洋渾然一体の躍動感溢れるドラマチック・エンターテインメント。


原作を知らずとも、宝塚歌劇を知らずとも、老若男女問わず、初見でも何度観ても楽しめる小池先生らしい原作への演出。

小池先生は宝塚歌劇の伝統的な「和もの」「日本物」というジャンルには収まらない、幕末~明治にかけての和洋混在の時代を鋭く的確に、そしてバランスよく表現しました。

例えば和装から洋装、おにぎりから赤べこ、クレープやオムレツ、ダンス、はたまたパヴォ(ケシ)の酒まで。

小池先生は原作に現れる様々な文化の型を一つ一つ丁寧に作りこみ、同時に急に西洋文化を受け入れ始めた明治初期の日本人の希望や不安、葛藤などの「揺らぎ」を登場人物たちそれぞれの内面を通して表現させました。

作品全体を俯瞰すると、「和洋混在」というより和洋の文化が「渾然一体」となってうごめきながら物語が進んでいったように感じます。

例えば1幕ラスト、プチ・ガルニエの場面は様々な文化が入り乱れていますが、舞台全体は雑然とはしておらず、不思議と時代の様相の縮図にも見え、なんとも言えない一体感がありました。

また、(細かいですが)フィナーレのセンター早霧せいなでの娘役群舞、途中でかんざしを抜いて髪を下ろしなびかせ、最後にまた挿し戻す振り(演出)も粋だなと思います。

黒のシックなドレスとかんざしの組み合わせが一連の娘役芸を引き立たせました。




一過性の打ち上げ花火で終わらない、想像力が膨らむキャラクター祭り。

原作漫画(アニメ)の世界観、特にキャラクターを尊重した(と感じられる)登場人物達への役作りは、原作を知らない私でもそのこだわりと徹底ぶりが伝わってきました。

登場人物(キャラクター)が多く、それぞれ濃く強烈な物語を、1人2役演じるスターでも外見を整えるだけに終わらずしっかりと作り込み、公演中も磨き続けました。

物理的な出番の長短にかかわらず、人物の背景まで伝わって来る奥行きのある雪組組子達の演技力。

神谷薫、加納惣三郎、高荷恵、武田観柳、相楽左之助、斎藤一、四乃森蒼紫、桂小五郎、明神弥彦・・・それぞれが主役になる物語までイメージできます(ドラマシティのような中劇場で観てみたいです)。

他にも御庭番衆、比留間組、「赤べこ」と関原一家という括りでも面白い作品が出来そうです。

いずれのスピンオフも人物と役作りが確立しているので、「本編のおまけ」レベルではないしっかりとした作品が期待できると思います。




「日本物の雪組」という点では、殺陣のレベルの高さには毎回目と心を奪われました。

激しい殺陣でも振り回すのではなく、常に美しい残像で引き締まった造形を魅せる剣士、早霧せいな、望海風斗、月城かなと。

彼女達だけでなく下級生達も、例えば「斬られ方」まで美しく整然としており、殺陣の場面の全景は雪組にしか描けない日本画のようでした。

スター編でも書きますが、ここまで高度な殺陣で組を牽引したのは早霧せいなの実力、センスに尽きると思います。

彼女は斬る姿だけでなく、斬った後の凛とした佇まいがずば抜けて美しく、力強かったです。
誰よりも激しい動きなのにドタバタすることなく、軽やかに舞うように斬り、静かに刀をおさめる。

「一夢庵風流記」の奥村助右衛門で魅せた一斬りから2年。
次元を超えた殺陣のレベルに達した早霧せいなに、トップスターとしての充実と円熟を感じました。




オリジナルの楽曲、場面、登場人物に合ったミュージカルナンバーの数々も「宝塚版るろうに剣心」成功の大きな要因の一つになりました。

アニメ版や映画版の主題歌などに頼らずゼロから作るスタッフのエネルギー、楽曲を自分のもの=役のものにしたスター達によって魂が吹き込まれたナンバーは全て親しみやすい名曲となりました。

特に望海風斗の「圧倒的な歌唱力」が作品全体に与えた影響は非常に大きく、要所で彼女に歌わせることで場面を締めたり彩らせたりする演出も見事にはまりました。




たとえ原作が何であっても。

漫画、アニメ、映画、小説、ゲーム・・・もちろんオリジナル作品でも。

そこに夢や夢を見出す過程があって、心からの感動を与えられる作品、舞台であれば、宝塚歌劇は幅広く挑戦して良いと思います。

(ちなみに私は宝塚の「夢」の中には「品格」が含まれていると考えます)

挑戦する力とチャンスは無限にあるはずです。

「原作が漫画だから」「原作が●●だから」とレッテルを貼るより、まずは舞台を観た方が良いと思います。

恥ずかしながら「るろうに剣心」を存じ上げないまま初見を迎えたのに、その観劇がなんと楽しかったことか。分かりやすかったことか。




大ヒット漫画が原作だからというだけで宝塚での舞台化も成功し、大ヒットしたのではないはずです。

舞台化、上演にあたって雪組は東京の千秋楽まで非常に厳しい戦いを強いられました。

かつて見たことのないスピード感溢れる殺陣の数々、強烈なキャラクターの役作り、激しい動きや盆周りなどを伴うミュージカルナンバーには稽古場での格闘の跡が伺えました。

(皆、できなかったであろうことを歯を食いしばって乗り越えたように見えました)

また、インフルエンザによる休演を代役が素晴らしいパフォーマンスでカバーしたり、様々なコンディションに対し冷静かつ柔軟に対応したりと、個も組も最高のパフォーマンスを磨き、目指し、追求し続けました。


雪組はこの公演を通してまた新たな、大きな力を得ました。
まだ見ぬ可能性も開けたように感じます。

それを観るためにも、次回公演「ローマの休日」「ドン・ジュアン」に行く予定です。



次回の記事「スター編」では登場人物を掘り下げたうえで、スター達の活躍について書きます。
お楽しみに。



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