司法試験 自分が使っていた演習書 | KFデラックスの日記

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こんばんは!!



さて,最近司法試験シリーズが妙に続いておりますが,今日も司法試験シリーズにしようと思います。


本日のテーマは『演習』です。


おそらく司法試験受験者は指導者から耳にタコができるぐらい


「条文の趣旨が大切!」「制度趣旨!」「基本が大事!」と言われ続けていると思います。


合格して思うのは,確かにその通り。本当に条文をその制度趣旨に遡って解釈する姿勢はとても大切です。が,抽象的に分かっていも意味がありません。



それでは全く条文を「使える」ようになっていません。



そんな時,条文等の基本的知識の使い方を学べるのは『演習』です。


あくまでも愚見ですが,司法試験を遠回りせず短い期間で受かるためには演習は必須だと思います。基本的知識が仮に不完全だとしても,演習を通じてより完全に近づいて行くと思います。


アウトプットはインプットの最たる手段と僕は考えており,良質な演習書を通じてより精度の高いインプットができるようになると思います。



『演習』の最高の素材は言うまでもなく司法試験の過去問であり,これに取り組まないという選択肢はまずあり得ません。


しかし,司法試験のレヴェルが高かったり,問題数がまだ蓄積されていなかったり

(とは言ってももう平成18年度~平成25年度まであり相当程度ある)とするので,司法試験の過去問と並行して行う演習書が必要となります。


今日は,僕が取り組んでいた演習書について書こうと思います。



1 憲法


 僕が使っていたのは,宍戸『憲法 解釈論の応用と展開』です。

 

憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ )/日本評論社

¥2,916
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個人的にはこの本で憲法が好きになりました。


今や当たり前となった法令審査と処分審査の峻別はもちろん,具体的事案に則した審査密度の調整の方法,憲法判例の援用の仕方などが少し理解できるようになると思います。


この本は生徒Aと生徒Bの会話形式でなされており,生徒Aは視野の狭いコテコテ悪しき受験生で,生徒Bは従来の悪しき考え方から少しでも脱却しようとする姿勢のある生徒です。



生徒Aのような思考では司法試験の憲法は点数が伸び悩むと思います。


この本を通じておそらく自分の憲法観は一度破壊されると思います。破壊され混乱すると思います。しかし,そこで歯を食いしばりこの本の戦ってみてください。光が少しでも見えてくるはずです。


大切なのは従来のドクマから脱却して,宍戸先生的な憲法的な思考方法を少しでも吸収しようとすることです。個々に書かれている内容を覚えるというよりは,どのような事実に着目し,どのように審査密度を調整していくのかという部分の思考パターンです。


「憲法はあてはめ重視」とどこかの大手予備校が言っているみたいですが,大きな間違えだと思います。


審査基準(審査密度)を出すまでがとても大切なのです。


規範→あてはめ の流れが法解釈の基本ですが,憲法でも同じです。審査基準が規範であり,この規範を導くまでがとても大切です。



学問の自由が想定している典型場面は「思索」ですが,遺伝子研究とはまた毛色が異なります。この毛色の違いをどう審査密度に盛り込むのか?

短絡的に「遺伝子研究は学問の自由で保障されるため,厳格な基準・・・」と論証していては不合格答案です。


なぜ学問の自由が重要なのか?

その重要とされている根拠は遺伝子研究にも妥当するのか?

妥当しないとしたら,審査密度はどうチューニングされるのか?


この思考を踏めるかが大切です。



こういった思考を訓練してくれるのが,宍戸先生の本だったと思います。


2 行政法


 行政法は特に演習が必要かもしれません。単に教科書を読んでいただけではなかなかわかりにくいですし,答案も書けるようにならないのではないでしょうか。


 司法試験における行政法は大きく分けて


1)訴訟要件の問題,訴訟選択の問題

 ー処分性,原告適格,訴えの利益等

2)本案の問題

 ー実体審査・手続審査


 という構成です。


1)については判例法理のロジックを正確に学習していくことで一定程度の点数が取れると思います。


一方で2)についてはなかなか難しいところがありますので,感覚を掴むためにも演習は必要じゃないでしょうか。


定番なのはまずこれでしょうか。

事例研究 行政法 第2版/日本評論社

¥3,996

これは恐らく最もシェアの高い演習書ではないでしょうか。


実際に期末試験で出題済みの問題も含まれており,採点者の採点実感などもコラムで書かれているため大変参考になります。学生の間違えやすいポイントなど指摘されています。


本案問題の考え方をこの本で学べると良いと思います。


行政活動形式は様々であり,それぞれの行政活動形式の特徴から演繹的に考えてみたり,条文の文言がどうなっているのか,どのような不利益が課されるのかなどをふまえて裁量の有無,広狭等を考えたりします。


そういった思考パターンを鍛えることが大切です。


行政法―事案解析の作法/日本評論社

¥3,024
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この本もわりと利用されているかなと思います。


いずれにせよ,上記2冊のうち1冊は取り組んだほうが良いと思います。多くの受験生が取り組んでいると思うので,取り組んでいないとそれだけで不利益になるレヴェルだと思います。


3 民法

 

 民法については個人的にほとんど演習をしなかった,と言うより自分に合った演習書がなかったです。


Law Practice 民法II 債権編〔第2版〕/商事法務

¥3,456
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Law Practice 民法I 総則・物権編〔第2版〕/商事法務

¥3,456
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強いていうならこの2冊でしょうか。


本来はロースクール入試レヴェルの問題集ですが,僕としてはこの程度で丁度よかったと思っています。



民法を純理論的に解いているのがこれかもしれません。

基本事例で考える民法演習 (法セミLAWCLASSシリーズ)/日本評論社

¥2,052
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問題文は大して長くなく,旧司法試験程度ですが,本当に深く基礎理論を理解していないと歯がたたない問題かもしれません。

頭の訓練にはとても役立つと思いますが,長文問題の現在の司法試験に向いているかどうかは分かりません。


事例から民法を考える (法学教室ライブラリィ)/有斐閣

¥3,240
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最近出ましたね!


僕の受験時代はまだ連載の頃でしたが,使っている友人もいました。

「頭を使う」パターンの問題みたいです。


受験の時に出ていたら買っていたかもしれません。



4 商法


 商法は論点論点している傾向があるので,演習を通じて一定程度のパターンをストックしておくことが重要かもしれません。特に商法の演習書はクオリティが高いと感じていますので尚更。


 まず鉄板な2冊のうち1冊がこれ『事例で考える会社法』

事例で考える会社法 (法学教室ライブラリィ)/有斐閣

¥3,672
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僕の周囲では人気が高かったです。というより,慶應の商法の出題の素材にもなっていたというのもあるかもしれません。


大変高度な演習書ですし,中にはとても複雑高度な解説(特にS藤先生)がありますが,それ以外の先生の解説は基本的に明快であり有益です。


特に利益供与,組織再編(詐害的会社分割,合併無効)あたりの問題は司法試験にも出そうな感じで勉強になりました。



もう1冊がこれ。

会社法事例演習教材 第2版/有斐閣

¥3,132
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オーソドックスな問題と応用問題とがうまい具合に混合しておりこれもシェアが高いと思います。ただ,解説が付いていないため,授業で取り扱うか,優秀な解説を手に入れたりしないと厳しいかもしれません。



個人的にLPシリーズで一番好きなのは商法です。

Law Practice 商法/商事法務

¥3,240
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演習というより読み物的に使っていました。

ある論点についての思考パターンをそのまま覚えてしまう感じで使っていました。

大体の分野を網羅しており,解説も分かりやすく良かったと思います。


『事例で考える』が難しく感じる人はまずこれからやってみるのが良いと思います。もっとも,僕は『事例で考える』とLPを同時並行でやっていました。



ロースクール演習 会社法/法学書院

¥3,996
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そんなに使われていないけど,効果的な演習本としてはこれがあります。問題自体はオースドックスですが,判例の射程などの検討も必要であり頭のトレーニングにもなりますし,そのまま回答をストックしても良いと思います。


「答案作成のポイント」がどの問題にも書かれており大変参考になります。



商法は直前まで伸びると思いますので上記のうち1,2冊は徹底的にやりこんでおくと良いと思います。



5 民事訴訟法


 民事訴訟法についてはまず三木ほか『ロースクール民事訴訟法』が鉄壁としてあります。

ロースクール民事訴訟法 第4版/有斐閣

¥5,724
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まずはコレでしょうか。もっとも,解説が無いので授業で教科書指定されていないと厳しいかなと思います。幸い僕は指導教授が編者である三木先生だったので有効活用できたと思います。


この教材を使う学校の学生であればまずこれと格闘すべきです。


この教材のメリットは民訴の基礎的知識を利用し発展的な問題まで分析させようとする問題があることや,有力な反対説などを学べることにあると思います。


司法試験を受ければ分かりますが,民訴は「判例だけで良いのですか?」という暗黙のメッセイジをとても感じます。判例・通説を(上っ面だけ)理解していてもなかなか難しい問題が多くあります。



判例に対してどのような反対説があり,議論の対立点はどこにあるのかをしっかり探る必要があると思います。もっともこの姿勢は他の教科にも当てはまりますが,とりわけ民訴が顕著であると思います。



僕は上記ロー民訴以外にこれを。

基礎演習 民事訴訟法 第2版/弘文堂

¥3,240
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とても使いやすい教材でした。何度か取り組みました。

学部生対象かのように書いてありますが,司法試験受験生にとっても良質な教材であると思います。


判例通説をそもそも使いこなすことができるかを主眼に置いていると思います。複雑訴訟等は全体的に出来が悪いと思うので,演習を通じてしっかり自分のモノニしておくと本番精神的に楽になると思います。


民訴は元々理論性の高い科目であり,司法試験科目の中でも最も難関と言われていますが,抽象的な理論だけではイメージを掴めないので,演習を通じて「使える」知識とすることがとても大切だと思います。



事例演習民事訴訟法 第3版 (法学教室ライブラリィ)/有斐閣

¥2,916
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これは司法試験8位で受かった友人が使っていました。僕は使っていませんでした。試験直前に民訴を復習したいときに便利な教材だそうです。


6 刑法


 刑法の演習書もこの二大巨塔じゃないでしょうか。


刑法事例演習教材/有斐閣

¥2,808
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これはとても良い問題集だと思います。これをやり狂えば司法試験は十分対応できます。司法試験はこの中の問題の2~3を組み合わせたような感じなので。


 1~40までの問題を何度も何度も解いて,論点落としがないように鍛えると良いと思います。


 僕は刑法は本当に基本的知識とこの演習書で足りると思います。


 あと,僕が個人的に取り組んだのは旧司法試験の問題です。問題文は短いですが,理論面などは旧司法試験の問題で鍛えました。

事例から刑法を考える 第3版 (法学教室ライブラリィ)/有斐閣

¥3,456
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 僕は取り組みませんでしたが,これも名著だと友人が言っておりました。

 若くして亡くなられた島田総一郎先生の本ですね・・・・。


事例研究 刑事法 (1) 刑法 (事例研究 )/日本評論社

¥3,240
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刑訴ほどではないですが,この本も一応使っていました。

事例演習があれば足りると思いますが,窃盗の保護法益論の本質や放火などはこの本が大変参考になりました。


とにかく刑事は演習勝負なので,必ずやるべきです。



8 刑訴


 

 僕はこの本に出会えたから刑訴がそこそこ安定して点数が取れたんだと思います。


事例演習刑事訴訟法 (法学教室ライブラリィ)/有斐閣

¥2,700
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 本当に感動的な本でした。おそらく刑訴の体系書を1回通読し判例もそこそこ読んでいる人が取り組むと効果的だと思います。


 刑訴理論の本質に遡り,理論的な見当がされているし,判例の射程なども説明されています。この本を読んで初めて刑訴の舞台に立てるのではないかと思っています。


 捜査の基本的な理論や訴因変更の要否,自白法則と違法収集証拠の部分は特に良かったと思います。


 是非一読を薦めたい。演習書というより読み物です。 


 

事例研究 刑事法 (2) 刑事訴訟法/日本評論社

¥3,240
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基本は上記古江・演習で良いのですが,伝聞法則についてはこの本で補う必要があると思います。伝聞法則は司法試験との関係でもほぼ毎年出るので事前準備に時間をかける必要があります。


この本の伝聞の説明は明快ですし,とくに弾劾証拠については古江本には書いていないのでこの本を参照する必要があります。



8 知財


 知財も二大巨塔の演習書があるという感じです。

 選択科目の出題は基本的に素直であり,見たことあるような論点が本当にそのまま出たりします。そういう時に演習書を通じたストックは威力を発揮します。そのまま考え方などを覚えてしまうと良いと思います。

知的財産法演習ノート―知的財産法を楽しむ23問 第3版/弘文堂

¥3,240
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司法試験のネタ本的な感じになっていると思います。この問題集を網羅的にやっておけば,必ず似たような出題があると思います。

ただ,解説の毛色が担当者によって全然違うので注意が必要です。

論点解析 知的財産法/商事法務

¥3,672
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これもやっておくと良いです。余裕があれば上記の本と両方やった方が効果的です。論点解析には司法試験の過去問が問題として所収されているのが特徴的です。


また筆者は一人なので、解説も一貫しています。


ただ,田村先生の独自説が時折あるので注意する必要がありますし,模範解答も受験生目線的には微妙なので。


 知財は簡単な基本書,特許については百選を読むことが必要ですが,やはり問題集でしょう。



上記はあくまで一合格者の僕が使っていたものに説明を加えただけなのでどこまで有益なものとなるかは分かりませんが,僕から切り離した一般論を言うとすれば,司法試験において演習はとても大切です。ある種の公文式のような。

インプットの成果をアウトプットを通じて測り,その結果をインプットのあり方につなげていくのが良いと思います。


司法試験まで残り1ヶ月となりましたが,どうか身体に気をつけて最後までがんばってください!


では,明日も頑張りましょう!!