まず、学生を大勢集めて「ストレスに関する授業」と称し、とあるビデオを見せる。
それは、ある人がクイズに挑み、間違えるたびに電気ショックを与えられ苦しむ、というかなりドSな内容のビデオだった。
授業のあと、学生は3つのグループに分けられ、それぞれアンケートに答えることになる。
まず、Aグループには、「あのビデオに出てた人は、実は演技で苦しんだフリをしてただけで、本当は電気ショックなんて受けてませんよ」とネタバレする。
Bグループに、ビデオに出てた人の情報はなし。
Cグループには、「ビデオの人は、実はあとで報酬30ドルをもらってました」と教える。
その上で、それぞれのグループの学生に、ビデオの人のパーソナリティー評価(要するに電気ショックを受けてた人を好きか嫌いか)を答えてもらった。
結果は、AとCグループの評価は高かったのに、Bグループの平均評価はぶっちぎりで低かった。わかりやすく言うと、Bグループは「嫌い」と思ってる人がめっちゃんこ多かったということ。
ラーナーはこの現象についてこんな仮説を立てた。
Bグループの学生は、ビデオの人がただただわけもなく電気ショックを与えられてると思っていた。こういう人が善人だと、自分の信念にそぐわない。一方、この人が悪人だと、因果応報で納得がいく。
つまり学生たちは、「いい人にはいいことが起き、悪い人には悪いことが起きるはずだ」という信念を持っていたのではないか、ということだ。
努力は報われ、悪事はバレる。天網恢恢疎にして漏らさず。世界は公平にできてるはずだ。
世の中の人は一般にそう信じている。
これをラーナーは「公正世界信念」と名付けた。
Bの学生たちは、この信念を守るためにビデオの人を「悪人」に仕立て上げたわけだ。そうじゃないと彼らの「公正世界信念」が崩れるから。
ここからわかるのは、人間っていうものは結局、信じるに値するものを信じるんじゃなくて、信じたいものを信じてるんだ、ということ。で、その信念に沿うように、まわりに対する評価を変えちゃうわけですな。
そういえば東日本大震災が起きたとき、
「あれはね、日本人がカルマを落とさなかったから起きたんですよ」
とか、
「断捨離をもっとしてたら、あんなことは起きなかったのに・・」
なんてことをブログで書いておられるスピリチュアル系の方を散見したっけ。これも、「なんにも悪いことしてないのに被害を受けた」という事実が、この人たちの「公正世界信念」に反してたからだろうな。
フェスティンガーの「認知的不協和」にも通じるものがあるけど、とにかく人間は屁理屈つけてでも信じたいものを信じようとする生き物なんですよ。公正とか正義なんてカッコイイ言葉を使ってね。
もしも「世界は公正にできている!」とか言うやつがいたら、眉毛にツバをべったべたにつけて聞いた方がいいね。
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