ねここ様からのリクエスト~愛ある家族の大嵐(10-4)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「君を好きになる男は、たくさんいる。」

「そんなっ!!私みたいな地味で色気がない女…「いいや、たくさんいる。現に俺は何人もつぶしてきたから。」」

 

 彼女の言葉にかぶせるように言うと、「ヒッ!?つぶす!?」と恐怖におののく表情をしてみせた。そんなキョーコに、蓮は思わず苦笑を浮かべる。

 

「だから、君が俺以外の誰かに心を奪われることもあるだろう。俺なんかより魅力的で君に似合う男はいるだろうからね。」

「………………。」

 

 その中には、キョーコのことをデビューしたての頃から見守り、好意を寄せているタレントも含まれている。

 

―――えっと。敦賀さんが何を思って俺にそんなことを言ってくるのかは分からないですけれど……。あなたと京子ちゃんが親しいことは前から知っていましたし。あなたの様子を見ていて、あなたの気持ちに気付かないほど鈍いつもりもないんです。-――

 

 蓮の精一杯の、『お前より俺の方が彼女と親しいんだ。でしゃばるな。』という思いを込めた言葉たちを、大きく開いた瞳のまま黙って聞いていた男は。

 蓮の一通りの話を聞き終えると、戸惑いを含む笑顔を蓮に向けながら口を開いた。

 

―――どんどんきれいになっていく京子ちゃんを見ていると、俺じゃダメなのかな?と思うこともあるんですよ。俺の気持ちなんて、全然気づいてくれていませんしね。―――

 

 苦笑いを浮かべる彼は……。しかし、まっすぐに蓮を見つめて言った。

 

―――でも。まだ誰の者にもなっていないのなら。俺は頑張りたいと思っています。例え、相手があなたであろうとも。―――

 

 きっぱりと言った、彼の瞳はまっすぐに蓮を見つめていた。蓮はそらしたくなるその瞳を、意地と見栄でなんとか受け止め続けた。

 

―――でもね、敦賀さん。―――

 

 どれほどの間、視線を交わしていたのかは分からない。蓮にとっては息もできない時間が続いた後、目の前の青年はにこり、と人懐っこい笑顔を蓮に向けた。

 

―――京子ちゃんが俺の隣で笑っていなくても。俺は、彼女が幸せになってくれるなら、それでいいんです。―――

 

 外見のこともあり、どこか幼さがある、間の抜けた印象を持っていた彼が、蓮よりも随分と大人なのだと気づかされた瞬間。敗北感で胸が苦しくなった。

 

 あがいて、あがいて…そして、その先にあるのが、自分の手を取り微笑む少女ではなかったとしても。

 きっと、目の前にいる彼は、心から祝福する言葉を、キョーコに贈ってみせるのだろう。

 

 心がズタボロになっていようと。彼女が欲しいと、叫んでいる心があったとしても。

 それでも、笑ってみせるのだろう。

 

 それに比べて、蓮のなんと狭量で自分勝手なことか。

……みっともなく、醜いことか……。

 

 それを感じていながらも、虚勢を張り、彼女にふさわしいのは自分なのだと、周囲に牙を剥き続けた。

 あまりに滑稽で、なんと哀れな存在。

 どこに彼女にふさわしい部分があったというのだろう。

 けれど。

 

「ちゃんと、君に認めてもらえる、いい男になる。」

「……………。」

「君が振り返ってくれるまで、ちゃんと待つ。君の心と体に無理を強いることは絶対にしないと誓う。」

「……………。」

「そして、振り向いてくれたら……。」

 

 振り向いてくれたなら。

 そんな、奇跡のようなことが起きるのならば。

 

「一生、君だけを女性として愛し続ける。大切にする。幸せにできるように、努力し続ける。君を誰よりも一番に、愛し続けるから。」

 

 キョーコが生まれてから与えられなかった、自分にだけ注がれる愛情。

 誰かから「一番」に想われることがないと思うのならば、蓮が「一番」に愛するだけだ。

 

「だから、」

 

 蓮の目の前で、大きな瞳を見開いている少女。

 立ち尽くし、蓮の言葉を理解しようとしてくれているその娘は、蓮から視線をそらさない。

 

「君の気持ちが整理できてからでいい。『俺でいい』と思ってくれたら、その時は。」

 

 そらされない瞳は、少しずつうるみ始めていた。その変化がどういった想いの下での変化かは分からない。

 だけど、もう蓮も、後には引けない。

 

「俺の、手を取ってください。」

 

 再度、差し出す右手。

 そらすことなく見つめる先のキョーコの視線は、蓮の顔からその差し出された右手へと移る。

 

 そして……。

 

 蓮が見上げた先の少女は、くしゃりと顔をゆがませて。

 

 差し出された右手ではなく、跪く蓮の身体に抱き着いてきた。

 

 

 

 

 

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