ねここ様からのリクエスト~愛ある家族の大嵐(4-3)~ | ななちのブログ

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馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「と、いうわけで。敦賀君。」



 勢いよく土下座姿勢をとった社を茫然と見つめていた蓮は、穏やかな紳士の声を聞き、そちらに視線を向ける。



 に~~~っこり、と笑ってみせる、世界を代表するアクション・スターは。

 

「あの娘の父として命令する。ニ度とキョーコに近付くな。」

「なっ!?」

「恋人でもないくせに、厭らしい接触ばかりするような悪い虫を、親である私が許すと思うか?」

「そんな、ミスター!!」



 もはや最上キョーコは敦賀蓮になくてはならない存在だ。

 あの可愛らしい声を聞いて、柔らかく華奢な身体に触れて、香りを嗅がなければ1日が始まらない。どうしても会えない時用に、隠し撮り写真(社、マリア、時々ローリィが提供)を何十枚もスマホにデータ保存しているのだが、それを見つめているだけで満足するのは3日ほどである。



「まぁ、とはいえ。キョーコにとっても、君が尊敬し、崇拝する先輩俳優であることは分かっている。」

「そ、そうですよ、最上さんにも俺は必要です!!」



 少なくとも、キョーコに嫌われているということはないはずだ。なぜなら、キョーコは蓮がどんな接触をしてきたとしても、その翌日も出会うと嬉しそうに微笑みかけてくれるのだから。

 だからこそ、社からどれほど忠告を受けようとも、結局はキョーコが真っ赤になり、少し拒否をしつつも受け入れてもらえる接触を求めてしまうのだが。



「黙れ、ケダモノめ。君は、キョーコの『尊敬』し、『崇拝』する先輩以上でも以下でもない。つまりは、それ以上を望むことはその立場上許されないし、下品な触れ合いを求めるべきじゃない。」

「…………っ!!」

「まぁ、ボスは?どんな愛でも受け入れてしまうようなラブモンスターだから、お前の接触を面白おかしく観察していたのだろうし??そこのマネージャーはきっと努力はしたんだろうが、結局はお前に甘いお兄さんだったんだろう。」

「…………………。」



 そう言われれば、否定できる要素は何一つ思い浮かばない。

 ローリィ宝田という事務所社長は、「ほどほどにしておけよ~~」とは言ったものの、蓮の恋路を邪魔するようなことはなかったし。

 マネージャーたる社は、「お前、本当にいい加減にしろ!!キョーコちゃんが可哀想だろ!?」と言いながらも、キョーコの日々の予定をチェックすることに余念はない。

 ちなみに琴南奏江というキョーコ曰くの大親友は、「大先輩を敵に回すような愚かな真似はしませんよ。」と言うのみで、キョーコの盾になる気は一切ないようである。

 不破尚という恋敵は、再三キョーコに蓮の危険性を忠告しにやってきているらしいが、そもそもキョーコに嫌われている男の代表格たる人物である。まともな警告ひとつできずに追い返されている状況にある。



 つまり、蓮にはこれまで面と向かって恋路を邪魔する輩は1人としていなかったのだ。



「だが、父たる私が来たからには、これまで通りいくと思わないでいただこう。一応、私はハリウッドで成功をした人間だから、ありあまる財力とそれなりの地位を確保している。だから、今までどおり君の好き勝手はできないということをよく覚えておくように。」

「っ!!!!!!」



 に~~~っこり、笑いながら忠告してくる男の顔。

 その顔を、蓮はよくよく覚えている。

 それは、幼い頃。

 自分でも反省しなければならないようなことをしでかす度に、若かりし日の目の前の男が、彼に向けていた微笑みと一緒なのだ。



 この笑顔を浮かべている間に、きちんと反省し、次の行動について整理をしなければ、どのような目に遭うかは……。よく分かっているつもりだ。



「っは、はい!!」

「よろしい。これで君とはうまく仕事ができそうだ。では、対談。よろしく頼むよ?」



 「良い仕事をしよう。」と男は、右手を差し出してきた。

 休暇で日本を訪れたヒズリ氏は、そこに存在するだけで周囲が放っておかない。結局、ローリィに頼まれて、こうして新旧嘉月の対談などという仕事が入ってしまったのだ。

 だが、きっとこの仕事をヒズリ氏が受けたのは、この蓮への釘さしをするためだったはずだ。



 それを分かっている。分かっているのだが……。今は、目の前の威厳ある男の姿に、すっかり気押されている。



 蓮は引き攣る笑みを浮かべながら、コクコク、と声なく頷き、その手を握り返すことしかできなかったのである。










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