「……ふ~~~~~~……。」
「!?」
情けない自分自身が悔しくて。ポロポロと零れる涙を止めることができない。
そんな私に、敦賀さんがダメ息をついた。
「君はバカか?」
「!?なっ!!??」
そして呆れかえったかのような声で、昔同じ口から聞いたことがあったような言葉を吐かれる。
「……君がいなかったら、俺は高熱を出した時に仕事を続けることなんてできなかった。」
「!!??」
「それから。君がいなかったら、俺は愛の演技なんかできなかった。」
「え……?」
「それに。…君がいなかったら、俺は自分の闇に囚われて、身動きできなくなっていた。」
「あ…あの……?」
「君にこれだけ助けられて、守られて。生きてきた人間は俺だけだ。俺を守る人間こそが俺の隣に最も相応しいと言うなら、君以上の人間はこの世にいない。」
「つ……敦賀さん………?」
敦賀さんの語る言葉の意味は分からない。
けれど、彼が語る言葉に嘘を感じることはなく……。
「恥ずかしい話、君が俺の初恋の相手だ。」
「…………。……え!?」
「しかも、ダークムーンの撮影の頃からは君を本気で愛していた。」
「!!???」
「……まぁ、多分……。その、再会した『あの日』から…特別な存在、という意識はあったような……。」
「え!?あの、事務所から放り投げた日のことですか!?」
「俺、普通はあんな非道な行動に出るタイプじゃないからね……。気付いていなかったけれど、気になる娘には、意地悪したくなるタイプだったみたいだ。」
「うん、うん。」と自分の言葉に納得している敦賀さんだけれど。
私は全然納得できないわ!!
「うっ!!嘘です!!」
「何が?」
「ダークムーンの時から好きだなんて……!!そんなはずがありません!!だって…そんな片鱗、見せたことないじゃないですか!!」
「……あのね。軽井沢で不破君が来た時、俺、大人げなく本気で怒っただろう?」
「?は、はい……。」
「あれは奴への嫉妬。」
「へ!?」
「それから。変なストーカー男に啖呵もきったし。」
「………はい。」
「なおかつ、打ち上げの時は貴島君から君を遠ざけるために割り込んでも行った。」
「……?そうでした……?」
「そうだったんです。君が気付いていなかっただけ。その他にも色々あったことはあったんだけれど…まぁ、数えきれないからもういいや。」
「ふぅ」と小さく息を吐いた後。
敦賀さんは私が座る椅子の傍まで歩いてきた。
「君は俺のことをとんでもなく誤解している。俺は君のこととなると心が極端に狭くなるし、社さんが失笑するほどみっともない姿を晒す。決して格好いいわけじゃない。」
「………………。」
「もう、俺ひとりじゃ自分自身のバランスも保てないんだ。……君がいて、初めて一人前になれる気がする。」
「わ…私がいることで……。敦賀さんは、バランスが保てるんですか……?」
「うん。君といれば、どこまでも飛んでいける気がする。」
私は、彼の邪魔にはならないのだろうか?
私と敦賀さんは、こんなにもバランスが悪いのに。
助けられてばかりだと思っていたのに…………。
「だから、どうか。俺の手を取って?」
私は、彼を守る存在に、なることができるのだろうか?