「俺とは『似合わない』というんです。」
「!?いいえ、昨日の敦賀さんと京子さんは美男美女カップルでとてもお似合いでした!!」
「ダークムーンの打ち上げの時のお二人もとてもお似合いでした!!」
「キャリアには差があるとは思いますが、それでも否定される要因なんてありませんよ!!」
哀愁漂う顔で言ってみせると、そんな俺の言葉を否定して下さるマスコミの方々。一部は社長が仕込んだ人間だが、それに応じる声がほとんどだ。
……ほら、最上さん。俺達はこんなに多くの人達に認めてもらえる関係なんだ。……
「ありがとうございます。皆さんが温かく俺達のことを見守ってくださるなら、あの娘からも良い返事がもらえそうです。」
「頑張ってください!!敦賀さん!!」
「はい。」
心からの笑みを向け、頭を下げると、視界を焼く大量のフラッシュと「応援してます!」という後押しの声が聞こえてくる。
……さぁ、これで君に逃げ道はない……
君が信じなくても、多くの人が君と俺を『お似合い』だと言ってくれるだろう。
俺こそが、君に似合う相手ではないかもしれない。
けれど、そんなことを考えていると、君を得ることができないと言う事は、嫌というほど分かったから……。
だから、俺は。
無理やりにでも君の隣に居場所を作って、そこに居座ってやる。
―――お父様が先生で、お母様が女神で……!!その上妖精界の王子様だなんて、そんな方と私では釣り合うわけがないじゃないですか~~~~~!!―――
真実を告げた日。
俺たちが幼き日に美しい思い出を作った者同士なのだと。
俺たちの関係が、この芸能界だけのものではないのだと伝えた時。
俺が欲しかったのは、いつもの彼女通りのメルヘンチックな言葉だったのに。
……彼女の口から出た言葉は、やはり、バランスの問題……
「……チッ、バランスがなんだっていうんだ……。」
「コラコラ、蓮君。極悪な顔になっているからおやめなさい。カメラがなくても、人通りが少なくても、ここ、一応事務所の中だからね?誰が見てるかわからんよ?」
思わず本音が出たところで、隣から忠告される。
「……失礼しました。」
「うん。…さて、それじゃあ俺はこれからお前の仕事の調整をしてくるから。お前はキョーコちゃんをちゃんと口説いて来い。」
「はい。」
俺は社さんに頭を下げると、この事務所の一室を目指し、走り始めた。
「全く。問題児同士、お似合いじゃないか。どうしてバランスが悪いなんて、思うんだろうねぇ。キョーコちゃんは。」
俺の後ろで、そんな失礼なことをマネージャーが呟いていたことなど知らずに。