時は唐代。人間と妖怪が共存していた桃源の時代は過ぎ去り、世は混沌としていた。
そんな時代を憂いた1人の高僧と、彼を守る3人の妖。
彼らはこの世の乱れを正しき道へと戻すために経典を求め、天竺を目指していた。
そんな彼らの前に、立ちはだかるモ―魔王軍団。
そして今回、モ―魔王の息子である紅亥ジュリが、高僧・ローリィ三蔵の一番弟子、蓮悟空の前に立ちはだかる!!
「こっ、これはっ……!!」
「さぁ、ゴクウ!!ショウブよ!!」
そして始まった、2人の一騎打ち。
その舞台は……。
急遽、セッティングされたダイニングキッチン!!
木製の四人掛けダイニングテーブルの上には、これでもかというほどの大皿が並べられ、その上には色とりどりの……。
「さぁ、パパのようにこのウエのテリョウリをみんなタベテごらんなさい!!」
……色とりどりの、手料理のようです!!
「……あれ、料理なの?」
「料理だってジュリさんが言っているんだから、料理なんじゃないの?モ~~。どうでもいいわよ。」
それにしても、すごい……。……豪勢な手料理ですね!!色が斬新ですし香りも独特ですし……。…なんだか真っ黒なものの上にショッキングピンクのクリームやレモンイエローやライトグリーンの液体が乗っていて、目に鮮やか過ぎます!!眩しすぎて、目がくらみそうです!!
「……マズそうね……。」
そういうことは思っていたとしても口にしてはいけませんよ、モ―魔王!!
「さぁ、ゴクウ!!ママのテリョウリよ!!存分におタベなさい!!」
ズビシッ!!とダイニングテーブルを指差す紅亥ジュリに対し、蓮悟空は……!!!!
「…………(絶望)……………。」
その場に石像のように立ちつくしております。
これを業界では『棒立ち』と呼びます。
舞台の場合は大根役者によく使われる表現ですね。
「っていうか、今、結構な爆弾が投下されなかった?」
「えぇ……。今、『ママ』って言ったわよね?あの2人、どういう関係?」
おっと、こちらでも蓮悟空の大ピンチ!!モ―魔王と銀閣に正体がバレかかっています!!
「クオンっ!!どうしてママのテリョウリがタベラれないの~~~~!!このままじゃ、ママ、アト3びょうでシンじゃうわ……。」
「っ!!わ、分かりました!!食べます!!た、食べますからっ!!!!」
蓮悟空の『棒立ち』に絶望し、涙を流しながらその場に崩れる女神様。これほど美しい女性を泣かせるなんて、なんと罪深い男なのでしょう、蓮悟空はっ!!!!
「っていうか、設定ではあの人、私とキョーコの『息子』なのよね?」
「……まぁでも、あの衣装はどう見ても女モノよ。だから別にいいんじゃ「ぅおぇぇぇっ!!」」
冷静に状況を分析しながら話をしているモ―魔王と銀閣の会話の間に、突然地獄の底から響いてくるような苦悶の声が……!!!!
「ぅえぇっ、ま、マウイ………」
「どうっ!!??ひさしぶりのママのテリョウリのアジは!!オイシイでしょう!!??ねっ!!ねっ!!!ねっ!!!!????」
「ごぉむ…………っっっっ…ごきゅるっ!!!!
「どう!?どう、どう、どう!!!!???」
「~~~~お…、おりじなりてぃに富んでいて、とても……っふぁんたじっくだとおもいますぐ……!!」
「……………。…つまり、どういうこと?」
「……オリジナリティって、独創性って意味、でしょ?それにファンタジックは空想的っていうんだから……。つまり、『独特すぎて普通じゃ考えられないような味』ってことじゃない?」
「つまりはどういうことなのかしら??」
「モ~~~~~!!見たら分かるでしょ!!??マズイのよ!!マズイの!!!!」
……あまりはっきりおっしゃるのもどうかと思いますよ、モ―魔王様……
でも、そんなマズイ料理でも、一生懸命食べている息子さん。
優しい息子さんですね。……何だか泣きながら食べていらっしゃいますが。
…………。
これ、『敦賀蓮』としてはどうなんでしょう?アウトですか?セーフですか?
「アウトに決まってんでしょ!!??モ~~~~~!!!!」