「と、いうわけだから。俺と付き合ってくれるよね?」
「む、むむむ、ムリです!!」
「何がムリなんだ。そもそも君が言っていたことのほうがムリがあるんだよ?母親とベストカップルになんかなれるわけがないんだから。」
大絶叫の後、気を失った少女を連れて。俺は両親が宿泊しているホテルの寝室に彼女を寝かせた。そしてしばらくして目を覚ましたキョーコちゃんと交わした会話が上記のものだ。
「そ、その点については謝罪します!!というより、親子だからこそしっくりくるっていうか、完璧だったんだと、ものすごく納得をいたしました!!むしろ違う意味でベストカップルです!!」
「……俺は君とベストカップルになりたいんだ。」
「だ、だから先ほどから申し上げている通り、そんなことは絶対にぜ~~~ったいにムリですってば!!」
『キョーコ。お前は一体、私達の息子の何が気に入らないんだ!!??』
『え!?キョーコはクオンのことが好きじゃないの!!??…あぁ、あなた、私……っ!!悲しくて後3秒で死んじゃうっ!!』
『ジュリ!!しっかりするんだ!!キョーコ、否定してくれ!!』
『え!?あ、わ、私っ!!わ、わわわ私は敦賀さんが好きです!!大好きです~~!!』
『あら!!やっぱりそうよね?だって、クオンは私とあなたの大事な息子だもの!!キョーコに愛されて当然よ!!』
『そうだな、よかったな。ジュリ。』
『えぇ、あなた。』
……キョーコちゃんから『大好き』という言葉を聞けたのは嬉しい。しかし……。
『あなた……。』
『何だい?ジュリ……。』
「…………。」
「……ひっ、ひぇぇ………。」
俺達の目も気にせずにイチャつき始めた両親。彼らの助力があってこそ、彼女に真実を知ってもらう事ができたとはいえ、いい加減にうるさくなってきた。
そもそも、さっきから不毛な話が続いている上に、両親が会話の間に入ってきてまともに話ができない。
しかも。キョーコちゃんはゆでダコのように真っ赤になりながらイチャつく両親を凝視してしまって、俺の方を全然見てくれない。
『あの。大事な話をするので、席を外していただけますか?』
『ムッ!?この寝室でか?』
『あらヤダっ!!ダメよ、キョーコは未成年なんだから!!』
『~~~~何もしませんよ!!したいけれど!!』
そんな騒がしくも迷惑な二人を、寝室から追い出すべく俺は彼らの背を押した。
二人は小さな抵抗を示したけれど、素直に扉の前まで押されていき、振り返ると。
同時にニヤリと笑ってみせた。
『クオン、しっかりやるのよ!?(やるんだぞ!?)』
…なぜか親指を立ててウインクまでしてみせる。
『私は別に今すぐおばあちゃんになっても問題ないわよ。』
『~~あなた、今『キョーコは未成年なんだから』っていいましたよね?』
『あら。無理強いじゃなければ別に構わないわよ?キョーコが良いって言えば問題ないわ。だってあなた、したいんでしょ?』
『はははっ、我慢しすぎて爆発して、無理やりっていうケースは一番避けてほしいな。私も同意の上なら別に今すぐおじいちゃんになっても構わんぞ。でも、キョーコの身体を考えると、避妊はすべきかな?』
『だから、ほどほどにな。それから、これもやる。』と、そっと差し出された箱を無理やり胸ポケットに押し込められると。…俺は彼らの期待溢れる視線を受けながら扉を閉めた。
……全く。意識して『そういうこと』は考えないようにしているのに、煽るようなことを言わないでくれるかなっ……!!悪魔か、あの二人はっ!!……
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