「それならわからせてあげるよ。」
「!!??」
え、な、何をですか!?私は一体何を分かったらいいのですか!?
「そのまま目を閉じて?」
「!?」
「あぁ、何なら開けててもいいけど?」
「はっ、はいぃっ。こ、これでよろしいでしょうかっ」
言外に、「開けていると後悔するよ?」と言う声が聞こえた気がして、私は慌てて目を閉じた。
「うん、そうだね。…次に目を開けたときにはその意味がわかってるから」
うっとりするほど色っぽい声が耳に響く。
今、まさに瞳を開くと、何だか恐ろしく妖艶な微笑みを浮かべる帝王を目撃しそうな気がして、必死になって目を閉じた。
…見えるのは、闇!!闇しか見えてないわ!!決して夜の帝王様のとんでもなく心臓に悪い笑顔なんて、脳裏にだって浮かばないんだから!!
そんなことを必死に考えていた私に、突然おとずれる異変。
…ん?なんかすっごく敦賀さんの気配が近くなった気がする……。
そして、唇に触れる、柔らかな感触。
「!?」
慌てて瞳を開き、逃げようとしたけれど。私の動きよりも早く後頭部を抑え込まれ、再び唇が塞がれた。
「―――!!///ん~っ!」
触れる唇は優しくて、とても柔らかくて。うっとりしてしまいそうになる自分自身を叱咤して、私は敦賀さんに抗議の唸り声をあげた。
「ね?言っただろう、意味がわかるよ、って。」
「…………。」
「何をするんですか!!」と、怒鳴るつもりが先手を打たれ、満面の笑顔を浮かべた敦賀さんが私の頬に触れてくる。
「もしまだわからない、っていうのなら言葉で伝えるよ。君は『役者の法則』で逃げようと思うかもしれないけど、俺は本気だから。」
「何が」という、疑問が浮かぶ。…でも、それに反して、勝手に速度を上げる胸の鼓動。
…バカバカしい、期待を持った…私の、愚かな心が刻む音。
「さっきの撮影の時のキスも、今のキスも。君には迷惑だとしても、俺の気持ちは伝えたい。」
迷惑…そう、迷惑だわ。こんなに私の心を簡単に支配してしまう、敦賀さんの言葉や行動は。私は何も気づきたくなかったのに。一人でこの想いを昇華しようと思って、いたのに……。
「最上さん、君が好きだよ」
「…………。」
そして、先輩俳優はそんな私の想いを吹き飛ばしてしまう、とんでもない爆弾を落としてきた。
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