かけがえのない日々番外編~伴(3)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「そういえば、俺が取材に来た時は、まだハンバーグなんかなかったですよね?」

「うん。キョーコちゃんからハンバーグが大好きだって聞いたから、いつか食べてもらおうと思って練習していたんだよ。そんなことをしているうちに、なんだか店一番の人気料理になってしまってね。」

「クスクス…キョーコちゃんを思い浮かべてこだわりすぎましたか?」

「そうみたい。まだキョーコちゃんに一口も食べてもらってないんだけど。」



 「あはは」と笑った後、稲田は蓮を見つめる。



「君もね、本当に初めてこの店に来た時から変わったよ。なんていうか…肩に凝り固まっていたものがほぐれた気がする。」

「…そう、ですね。」

「敦賀君。」

「はい。」

「演技は、好きかい?」



 突然の質問に、蓮は目を大きく見開いた。

 稲田は決して、芸能関係者ではない。

だからこそ、この質問が出てきたことに心の底から驚いたのだ。

 

だが。



「…はい。」

「……そうか。」



 なぜかは分からないが、稲田であれば、蓮の気持ちを分かってくれるような気がした。

稲田はそんな蓮の答えに静かに肯くと、突然鉄板に火をつけ始める。



「稲田さん?」

「キョーコちゃんと食べてもらうハンバーグ、作るから。二人で食べてよ。」

「え?」

「どうせ一緒に暮らしているんだろう?」

「!?なんで知っているんですか!?」

「ふふんっ。料理人っていうのは繊細な職業なんだよ?お客さんの変化なんて、一目瞭然さ。」



「覚えておくんだね?」とニヤリと笑ってみせる稲田に、蓮は笑顔を返すしかなかった。

 

……全く、どうして俺や最上さんの周りには、曲者っぽい大人しかいないんだろう……



「では…。よろしくお願いします。」

「うん。ついでに目玉焼きの焼き方を教えてあげるよ。どうせ君、料理できないんだろう?」

「それは助かります。」

「僕はスパルタだからね?しっかり習得して帰ってくれ。」

「…はい。」



 エプロンを渡されると、蓮はそれを受け取り、立ち上がった。



 ……全ては、愛しい少女のため……



 定休日の鉄板料理の店からは、いつも以上に暖かな空気が流れていた。








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