帝の至宝~愛し君へ贈るもの(3-1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

 香蘭を、見守る。



 私ができる方法で。

 私なりの方法と、これまで通りの「友人」としての距離感で。

 

 愛しい笑顔を守るために全力で幸せにする。



 …そう誓ったのは、遠くない過去のこと。



 私の決意は、固いはずだった。誰よりも幸せになって欲しい人を幸せにすることこそが、私の存在意義なのだと思っていた。



 だけど……







 ******







「どうかしたの?」

「えっ……。」



 突然かけられた心配そうな少女の声に、志季はぼんやりとしていた意識を覚醒させた。



「やっぱり、体調悪い?」



 目の前には、志季がプレゼントをした簪をさした香蘭がいた。そんな彼女は、湯呑みを両手で抱えながら志季を心配そうに見つめている。



「いや、大丈夫だよ。」

「でも、顔色も全然よくないし。ぼ~っとしてばっかりだし…。」

「大丈夫だって。」

「だけど!!この会話、今日4回目だよ!?心配して当然じゃん!!」



 ぎゅっと眉間に皺を寄せて言う香蘭は、今日もいつも通りだった。変わりなく、志季の傍にいてくれて…そして、一緒にお茶を飲んでくれている。



「さっ!!志季、行くよっ!!」

「えっ?」

「も~~!!さっき約束したでしょ!?今度ぼんやりしたら、今日はお仕事やめて寝るって!!」



 「円夏様もいいって言ったもん!!」と香蘭は怒った表情で席を立ち、志季の右手を両手でつかむ。



「そんな約束、したかな?」

「したよ!!それも覚えてないの!?」



 「も~~~っ!!」と顔を真っ赤にしながら怒る香蘭は、近くで控えていた円夏と目配せをすると、志季の腕を引っ張った。



「でも、せっかく香蘭とお茶をしていたのに…。」



 とりあえず促されて立ち上がったものの。一つも口をつけていないお茶を見るとそこから動く気がもてない。

 香蘭とのお茶の時間は実に一週間ぶりなのだ。



 それこそ、『アノ夜』以来。香蘭の姿を見ていなかった。



「それよりも、今はちゃんと身体を休めてっ!!聞いたよ!?最近、全然眠っていなくて、仕事ばっかりしているって!!」

「…………。」



 目をつむれば。眠ってしまえば。

香蘭が幸せそうに微笑んで、志季の前からいなくなる。

そんな夢しか見る事ができない。

…それなのに、休めるわけがなかった。



「ちゃんと休まないとダメ!!ほらっ、行くよ!!じゃあ円夏様、志季、連れていくね!!」

「はい、よろしくお願いします、香蘭殿。」

「うん!!任せて!!」



 使命感溢れる表情で胸を一度「ドンッ」と叩き、香蘭がグイグイと志季を引っ張った。

 久しぶりにおとずれた、愛しい少女との逢瀬の時間。けれど、必死になって志季を動かそうとし続ける香蘭を見ていると、こちらが折れるしかなさそうだった。



「分かった、じゃあ行こうか。」 



 長く深い息を吐いて、志季は香蘭に手を引かれるまま、執務室を出て行った。







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