光と闇のフォークロア~sideキョーコ(4-2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「…ねぇ。一つ聞いていいかな」

「?どうされたんですか?」



 二人の私の神様に心の中で誓いを立てていると、突然隣にいる神様が改まって尋ねてくる。



 …何かしら?何だか微妙に怒っていらっしゃる?



「稽古の時に、この衣装みたいに足を出した格好しているわけじゃないよね?」

「へっ!!!???」



 真顔で問われたのは、私が着ている、は、ハレンチ極まりない衣装への突っ込みだった。

 

いや~~!!指を指さないでください~~!!なんだかハレンチです~~!!



「な…なんてこというんですかぁぁ~!」



 全身に熱が回るのが分かった。なんとかならないかと思って両手でスカートを引っ張ってみたんだけれど…っ。の、伸びないっ!!伸びない~~!!

 いや~~~っ!!私、学校でもスカート丈で先生から怒られたことなんかなかったのに~~!!こんなところでこんな辱めを受けるなんてっ!!



「当たり前じゃないですかっ」



頑張ってスカートを引っ張るのだけれど、敦賀さんの視線はなぜか私の露出した足から離れない。それこそ「じ~~~~っ…」という音がその目から出ているかのようにじっくりと観察されてしまうっ!!



紳士のくせにっ!!他の女の人には紳士のくせにっ!!なんで私にばっかり意地悪なの~~っ!!ひぃ~~んっ!!見ないでよ~~~!!!!セクハラ天然いじめっこ~~!!



「基本ツナギですっ」

「…ラブミー部の?」



 スカートを引っ張りながら叫んだら、「ツナギ」の言葉に反応して敦賀さんの視線がやっと私の足から離れる。



「はいっ!動くにはとてもいいですし、色があれでしょう?カメラチェックしながら練習してるんですけど、自分の動きが見やすいんです」



先輩からの視線を足から逸らすために、私は早口で話す。すると、目の前の敦賀さんは妙にきょとんとした顔をしていた。でも、もう私の…なっ、生足を眺める事はしなくなったみたい……。



もう、何だったのかしら…。敦賀さんって本当に時々良く分からない言動をするのよね。



「そう、だね。」

 

敦賀さんは納得がいったとばかりに肯いて見せる。その視線は、私を見ているのに、私ではない何かをみているような瞳をしている。



……きっと想像しているのよね、私が呪いのどピンク繋ぎを着て師匠に教えを乞うているところを……



別にいいじゃない。あれ、本当にどの色よりも動きが見やすいんだから。私は全っ然恥ずかしくなんかないんだから!!



「あれだと、動きが良く見えるよね。」

「はい。だから先生が画面と実際の動きで説明してくれる時に比べやすくてわかりやすいんです。…?どうかされました?」



 なぜか心底安心したような笑顔を浮かべている敦賀さん。でも、私の問いについては「ん?いや。なんでもないよ。」としか答えてくれなかった。

 でも、敦賀さんから漂うオーラが、やっといつも通りの紳士的なものに戻ったから、私はそれ以上気にしないことにした。



「それに、設定だから仕方ないですけど、この格好だって本当はすっごく恥ずかしいんですよ。」



 それよりも、弁解が先よ。このミニスカは私が望んで履いているんじゃないってちゃんと伝えなきゃ!!…まぁ、衣装なんだから敦賀さんだって分かっているはずだけど。だけどだけど!!またあんな変な目で見られたたまったもんじゃないしっ!!

あ、そうか!!さっきの変な視線は「色気もないくせに何でそんな露出しているんだ、あぁん?」的なものだったんじゃないかしら!?それとも、「目に毒なんだよ、出直してきやがれっ!」的な視線!?うぅ~~っどっちにしてもヘコむ~~!!



「…敦賀さんはすごく似合っててかっこいいですけど、私は…こんな恰好なのに少しも色気がないし」



 ちらりと視線を敦賀さんに向けると、羨ましいくらいに甲冑姿が様になっている。まるで物語の中の王子様や騎士様といった感じの敦賀さん。…ずるいくらいに格好いい…。



「…………。」

「え?何かおっしゃいましたか?」



 思わず溜息をついた私に、敦賀さんが何かを呟いた声が聞こえた。



「ん?いや、別に」



 でも、敦賀さんは答えてはくれなくて、視線をセットの方へと向けた。

 そこでは新たな舞台のセッティングが完了した雰囲気が流れていて…



「さて、そろそろ次のシーンの撮りが始まるね」

「あ、そうですね。」



 敦賀さんの言葉に、私も舞台に立つ人間として気持ちを切り替える。

 この休憩時間中、全然心が休まることはなかったけれど…。敦賀さんと話をしていて、今まであった緊張感がほぐれてしまった。

 手の震えも治まったし、いらないことを休憩中に考えなくてすんだ。

 …これも、敦賀さん効果、かな…?



「さ、気を引き締めていかなきゃ…。」



私の呟きと同時に、「はじめま~す!!」というスタッフさんの声がかかり、私は『ティア魂』をつけて『カイル』とともに物語へと戻って行く。



そして物語の続きが、始まった。










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