「誰か…誰か、これは夢だと言って~~~~っ!!!!」
その年の『流行語大賞』となったこの京子さんの絶叫から1ヶ月後。『その日』は訪れた。
「いつからお付き合いが始まったんですか!?」
「そうですね、それは…。」
敦賀蓮がク―・ヒズリの一人息子、クオン・ヒズリであったことも同時に発表されることとなった交際会見の場で、敦賀蓮はノーブルな大人の男性らしい笑みを浮かべて答えてみせる。その姿は、俳優『敦賀蓮』らしく、どの角度から見つめてもこれ以上ないほど格好いい。
「『月刊 ビューティー』の関です。質問、よろしいでしょうか?」
数多のフラッシュがたかれる会見会場。目を白黒させている京子さんと、紳士的な笑顔を崩さない敦賀蓮が私を見る。
「「はい、どうぞ。」」
その瞬間。京子さんは嬉しそうに…敦賀蓮は、悪戯っ子のような笑顔を浮かべる。
…敦賀さん、私、ちゃんと約束守ったでしょう?
この日までずっと彼らの関係を黙っていた私。…今日は、敦賀蓮がどれだけ京子さんを好きで、京子さんがどれだけ素敵な女性か、全国のお茶の間の皆さんに知ってもらおうじゃない。
「お二人は、いつ出会われたんですか?」
ニヤリ、と意識的に笑って質問をした。…京子さんはちらりと敦賀蓮を見て…敦賀蓮は、そんな京子さんに小さく頷いてみせた後、一つ深呼吸をして京子さんが手に握りしめていたものを受け取った。
「これは、俺達二人にとっての大切な思い出の品なんです。この石が、俺達を結び付けてくれたんだと思います。」
敦賀蓮の手の中で、キラリと光る青い石。アイオライトの加工前の石だというそれ。
…あれが、天女の羽衣か…。
なるほど、と納得してしまう。だって、アイオライトは進むべき道を見つけ、達成するための道しるべとなる石。
幼い日。彼らは一度、離れてしまったけれど、本当に歩むべき道は同じだったのだ。だからこそ羽衣の導きで二人は再会し、『業界のトップ』という天に続く道を見据え、空高く舞いあがろうとしているのだ。今度こそ、二人一緒に。
「俺の初恋は、10歳の時でした…」
敦賀蓮は語り始める。彼と彼女のおとぎ話のような出会いを。
私は幸せそうに語る敦賀蓮と、その隣で恥ずかしそうに頬を染めながら照れ笑いを浮かべる京子さんを見て、会心の笑みを浮かべた。
(はつこいFIN)