yununo様からのリクエスト~姫を守るは…(1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

 世界に溢れる、童話達。

 幼い子どもが読んで、夢に見るキラキラとした優しくも輝かしい物語の中では、大抵のパターンが決まっている。

 窮地に立たされた『姫』はいつも『王子』に助けられるのだ。

 俺が幼い頃に出会った初恋の少女(当時は無自覚だったが…)も、童話好きな女の子だった。

 彼女も、運命的に出会い、窮地を助けてくれる『王子様』に憧れていた。『王子様』がガラスの靴を持って来てくれるのを待っていた女の子だった。

 …そして俺は。この『王子が姫と出会い、助け、守り、愛する』という図式をいつの間にやら物語の絶対条件だと決めつけていたのである。



 でも。

 現実は違う。例え姫を守りたい王子が数多いたとしても、姫を守る存在は王子の他にもいるのだ。



 そしてその守護者としての究極の存在は…あの人達、なのかもしれない。







******







 俺は今、窮地に立たされている。



『さぁ。どういうことなのか説明してもらえるかしら?』

『……あの…。』

『まぁ、それも私達が納得できるだけの答えを持っているなら…だけれどね?』



『どうかしら?』などと、極上の笑顔を浮かべるは、美しい金髪をゆらす碧眼の女性。

 俺が覚えているよりは幾分か齢を重ねたその女性は。それでも、圧倒的な存在感と美貌を持つまさしく女神だった。



『さぁ、答えてごらんなさい?坊や。』

『…………。』



 俺達を遠巻きに見ながら行き交う人々は、うっとりと女性の甘い声を聞いている。…声だけを聞いていたら、俺は口説かれているようにも思われるかもしれない。それほどまでに甘美な響きのある声色なのだ。

 だが。その流暢に紡がれる英語には、一切の甘い内容は含まれなかった。

そして俺は知っている。……あの、キラキラと輝かしい笑顔の奥で……沸々と煮えたぎらせている怒りがあることを……。

俺も俺の父親も、あの笑顔を浮かべたこの人ににじり寄られて平身低頭しなかった日は、ない。



『なぁに?答えられないのかしら……?』



 ゴクリ、と唾を飲み込んだ俺の耳に、甘く響くは女神の声。慈悲深いはずの神は現在、怒りのあまり、その慈愛の心を100万光年彼方へと飛ばしてしまっているようだ。

 

 そんな女神の後方には、泣きじゃくる少女と…その少女の頭をなで、懸命に宥めるふくよかな体格の女性がいた……。



『さぁ、坊や。説明なさい。』



 女性の後方に向けていた俺の視線。それを遮るように前に立ちはだかった人物。その美しすぎる微笑を見て、背筋を流れる冷たい汗。



 ―――なんでこんな事態に陥ったんだ……―――



 そう、こうなったのには理由があるのだ。

 そもそもの発端は1週間前。…そんなに前から、この状況に陥る伏線は敷かれていたのである。







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