完全に周囲をシャットアウトし、二人の世界を展開する敦賀蓮とキョーコちゃん。その二人の間に、再び尚君が割り込んでいく。
「何だい、さっきから。あまり大声を出しすぎると、喉を潰すよ?」
「何なんだ、お前らはっ!?俺への当てつけか何かか!?俺に嫉妬させようとか、そんなバカな考えじゃねぇだろうな!?」
「は?敦賀さんとのイイ男勝負なら結果なんて世間様がつけてくれているじゃないの。今更嫉妬とかしている場合じゃないでしょ?」
いいところを邪魔された敦賀蓮の表情には、「お前は邪魔だ」という言葉が張り付いていた。そんな彼の腕の中の少女は、意外と冷静なのだが…。尚君の発言に対する捉え方が斜めすぎて言葉の真意を分かっていない。
「キョーコッ!!今すぐそんなケダモノから離れろっ!!お前、絶対遊ばれているぞっ!!」
尚君は、真っ青な表情になりながら、敦賀蓮に寄り添うキョーコちゃんをその腕から離そうとしているのだろう、二人の間にジリジリと近寄って行く。
「はぁ?遊ばれているわけないでしょ?だってこれは仕…「俺達は家族だからね。」」
後数センチで敦賀蓮の腕の中のキョーコちゃんに尚君の指先が触れる…。その位置まできたところで、またしてもキョーコちゃんの発言を遮り、敦賀蓮がとんでもない爆弾を投下する。
「………。…はぁ?」
爆弾は、かなりの時間差で尚君の脳内で爆発をしたようだった。実際、周囲で見守る俺達としても、信じられない発言に脳が働こうとしない。
「……おっ……お前……何て言ったんだ……?」
確かに聞き返したくなる発言だった。尚君の声は激しく震えていたし、身体の震えも尋常じゃないものになっていたが、当然のことかもしれない。
「俺達は家族だって言ったんだよ。」
そんな尚君に対して、サラリと返される敦賀蓮からの答え。
…『敦賀蓮』と『京子』が『家族』。
「つっ、敦賀さん……!!」
「本当のことだろう?君は俺が手に入れた、『家族』なんだから。」
俺達の視線の先では、全身を赤らめたり青ざめたりしている少女と、その少女を腕の檻の中に囲い、決して離そうとしない青年がいる。
…『敦賀蓮』と『京子』が……。KAZOKU……。
……え~~~っと。
二人を見る限り、当然ながら容姿が似ているわけではない。っていうことは秘密の兄妹説はないよな。そもそも、尚君と京子ちゃんが幼馴染みだとするなら、敦賀蓮と京子ちゃんが兄妹であった場合、尚君と敦賀蓮も幼馴染みということになるだろう。だが、二人の様子からすると、その可能性は皆無だ。
大体、敦賀蓮と京子ちゃんの雰囲気から言っても先輩を立てる京子ちゃんの対応は、二人が血縁関係にあるとは到底思えないものだった。
そんな…他人同士が作り出す『KAZOKU』……。
「……ふざけんな~~~!!」
……NANNDASUTO~~~!!!!(←超動揺)