ハルカ様とのコラボ企画~いたずら。(side蓮)4~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「つ、つるがさ……。」

「…うん。」



 世界がクリアになった彼女は、やっと俺が瞳を開け、彼女を見つめていることに気づく。どこかぼんやりとしていたその瞳は、急速に正気に戻って行った。



「つるがさん、起きて……?」

「うん。…今日はね。寝ていなかった。ちゃんと、君にお礼を言って。…次の、約束を取りつけたかったから。」



 震える少女の身体をぎゅっと抱きしめて、俺は事実を口にする。…本当は、今夜は彼女の動向を観察して、毎夜繰り返される彼女の可愛い『いたずら』を他の男には絶対にしないようにと諌めるつもりだった。そして、帰ってきたらすぐに会えるように……また夕食を作ってほしいとお願いをするつもりだった。



「っ!!も、申し訳ございません!!あの、私、本当に後輩としてあるまじき行為を……!!」

「最上さん、落ちついて?」

「本当に、度が過ぎたいたずらをしてしまい…!!もっ申し訳ございません!!寝入っている先輩にこんな…!!その、すっぽんに噛みつかれたとか、そんな風に変換していただいて…!!」

「最上さん……。」

「忘れてください!!尊敬する先輩にこんなことをしでかす私みたいな存在…!!もう、記憶の中から消去してくださっても構いませんから……!!」

「最上さん!!」



 強く名前を呼び、抱きしめる腕を強める。混乱した彼女の発言を、これ以上聞く気にはなれなかった。



……君を俺の記憶から消してしまうなんて…そんな残酷なこと、言葉にしてほしくない……



「君は、俺のことが好きなの?」

「あ、あの…。」

「言っていたよね?俺のことが好きだって。…それも、『いたずら』?」

「……ちっ、違い、ます。でも、あの…わ、忘れて、ください……。」



 彼女の可愛い『いたずら』。それを、俺は楽しみにしていた。その『いたずら』は、彼女が俺の傍にいてくれた証のように思えたから。この2週間、毎日食事を作ってくれ…そして、この1週間、毎日『いたずら』という名の証を残して帰っていった愛しい少女。…彼女が傍にいてくれた証は、少しずつ、俺達の関係を変化させていってくれていたんだね。



「忘れるなんて無理だ。」

「っ!!」



 そう、もう無理だ。君を『後輩』と思うことも、君を手放すことも…君の傍を、離れることも。



「最上さん、泣かないで?」

「っ!!」



 真っ青な顔色になった最上さんは、俺の声により一層涙を浮かべ、そしてぎゅっと瞳を固く閉ざしてしまった。…もしかしたら、俺が彼女の告白を断るとでも思っているのだろうか……?



 必死に世界を見ないようにと目を瞑る彼女の表情が、とても愛しく思えて……。



 俺は、少女の瞼に唇を寄せ、そこから溢れる美しい雫に舌を伸ばした。



「!?」

「ん。しょっぱいね。…でも、とっても甘い。……病みつきになりそうだ。」



 広がる甘みは、本当に癖になるほどに美味しい。全身の『乾き』が潤わされるような気がして、もう片方の瞳もぺろりと舐めた。



「っ!?つっ、敦賀さ…!?」

「クスクス…もっと泣く?別にいいよ。何度でも拭ってあげるから。」



 顔色を青くしたり赤くしたり…忙しい変化を見せる彼女に、笑いかけてみる。



「泣きません!!つるがさんのいじめっ子!!」



 途端に弱々しい光が消え、気の強いいつもの彼女らしい瞳となる。そんな少女に俺はわざとらしく首を傾げてみせた。






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