サマンサ様からのリクエスト~VSつるが(6-1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

俺の目の目には、えぐえぐと泣きじゃくる少女と、そんな少女を包みこみ、俺を睨みつける中年男がいた。



「ごめん、キョーコ。思わず、こう、会話の流れでポロリ、と……。」

「う~~~っ!!私、お嫁に行けません~~!!」

「いやいや、俺のお嫁さんになるんだから、行けないなんて絶対ないし。っていうか、責任は喜んでとるって言っているじゃないか……。」

「黙れこのケダモノ!!お前なんか絶対認めん!!断固拒否だ!!」

「黙るのはそちらでしょう!?大体あなたがあんな無粋な質問をするから……!!」

「なんだと~~!!??私のせいにするのか、この若造が~~!!」



 愛しい少女を宥めつつ、その父親と喧嘩して…と、目まぐるしい対応を余儀なくされる。だが、どちらも放っておくことができないのでどうしようもない。



「キョーコ。ほら、機嫌直して?そうだ。来週の金曜日。キョーコ、オフだよね?一緒におとぎの国に行こう?」

「……お、おとぎの……国……?」



 未だ中年男の胸に顔を埋めて泣き崩れる少女は、俺のメルヘンを刺激する言葉にピクリと反応をした。そして、おずおずと俺の方へ可愛らしい顔を向けてくれた。



「そう。ほら、あの有名な夢の国。シンデレラのお城や、お姫様がたくさん出てくる素敵なパレードもあるよ?」

「……っ!!」



 俺の言葉に、キョーコの瞳がキラキラと輝き始める。



「(社さんが死ぬほど苦労をして)金曜日に1日オフを手に入れたんだ。だから…「ちょっと待った!!」」



 頬を紅潮させ、幸せそうな笑顔を浮かべ始めた少女に俺も笑み崩れながらデートのお誘いをする。だが、またしても邪魔をする中年バカ親男……。



「来週の金曜日は、私もキョーコのためにオフをとったんだ!!その日は私とのデートをすることになっている!!」

「ふぇ!?」



 中年男は、敵意むき出しで俺を睨みつけながらキョーコを抱く腕に力を込める。そのバカ力に驚いたのか、キョーコは妙な叫びを上げつつも中年男の方へ視線を向けた。



「キョーコ!!私と○ィズニ―ランドに行くよな!?」

「ふぇぇ!?」

「俺が先約したんですよ!!何を横からでしゃばってくるんですか!!」

「お前っ……!!私が半年前から企画をしていた、たまにしか会えん親子の幸せサプライズデートの邪魔をするっていうのか!?なんって無粋な男なんだ!!」

「こっちだって必死に取った1日オフなんですよ!!なんであなたに譲る必要があるんですか!!」



 再び、火花散る親バカVS恋人バカ。バチバチと音がして、俺の後ろには竜が。ヒズリ氏の背後には虎が現れる。咆哮を飛ばし、対立を深める俺達の視線は、同時に無垢なる心を宿す、美しき女神へと向けられる。



「キョーコ!!俺と一緒に行くよね!?」

「いいや!!私と行くよな、キョーコ!!」

「ほぇいぇいぃっ!!??」



 彼女に迫る選択は、2日前にやっと結ばれた蜜月中の恋人か。それとも、たまに現れては父親ヅラを晒すだけ晒して去って行く中年男か。……選ぶのはどちらかなんて、考える必要もないよね……?



「……キョーコ……。ここは正直に答えて、この方にはとっととアメリカの美しい奥様の所に帰ってもらうべきだよ……?ね……?」

「……キョーコ……。このケダモノに正直にお前の気持ちを伝えてやって、せっかくできた休みは普段溜めた疲れをいやすことに使ってもらうべきだと私は思うぞ?な……?」



 俺は、努めて優しい笑顔を真っ青になりながら震える少女に向けた。ブルブルと小動物のように震えるキョーコは、俺を見た後、一見すると穏やかな笑顔を浮かべているが、脅迫するかのような迫り方をするヒズリ氏を見た。……この男……俺の恋人になんて視線を向けやがるんだ!!



「「キョーコ……?」」



 図らずも、愛する女神を呼ぶ声が俺とヒズリ氏同時となった。

 キョーコは真っ青な顔色のまま、俺達から顔を隠すように俯いてしまった。

「「キョ……」」



「うぇぇ~~~~~ん!!モ~~~~子さ~~~~ん!!!!!」



 再び俺とヒズリ氏でキョーコの名前を呼ぼうとした瞬間。彼女は勢いよく顔を上げると、心の底から助けを呼ぶような大声で…とある人物の愛称を叫んだ。



「モ~~~~~~ッ!!!!」



 それに呼応するように。…迎賓館の扉が再び大音量を響かせて開かれ…そして盛大な不満を込められた怒声があがった。







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