かけがえのない日々~欠けたモノ(3-2)~ | ななちのブログ

ななちのブログ

このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「傍にいながらキョーコを助けることができなかった男にとって、当然下される罰じゃねぇか?」

「……。帰れ。お前がここにいても、最上さんが興奮するだけだ。」



 不敵に笑う男に、もはや『敦賀蓮』を演じる気力もない。…内から溢れる負の感情に任せ、蓮は尚を睨みつけた。



「それを言うならあんたも同じだろう?今のあんた、キョーコにとっては単なる厄介者じゃねぇか。」

「……!!」

「ちょっと、尚……!!」

「あぁ、違うか。…『大嫌いな』相手なんだよなぁ。」

「…っ!!」



『私はねぇ…あなたなんか大っ嫌いなんだから!!!!』



 …耳に響き続けるその言葉は、まるで呪いのように木霊し続け、それから逃れることができない…。



 ―――― ダンッ…!! ――――



「!?れっ、蓮!!」

「ひぃっ!!」



 どこか遠くで、制止の声を発する社と、女性のひきつった悲鳴が聞こえた。…けれど、それはテレビから聞こえる音のように他人事に思えた。

…今、見えるのは愛しい少女の心を占有する憎悪の対象だけで。…今、聞こえるのは、ドクドクと脈打つ己の鼓動と少女の残酷な言葉だけ……。



「……いってぇ……。」

「…………っ。」



 襟首をつかみ上げられ、思い切り壁へと叩きつけられた金髪の少年は、痛みに顔をゆがめつつも、さも楽しいとでもいうかのように蓮を見て笑った。



「いい面してやがんじゃねぇか。えぇ?敦賀サンよ。…でも、別に落ち込むこたぁねぇよ。『嫌い』と言ってはいるが、あいつの頭ん中にあんたがいる場所なんてないわけだし?」



 蓮の目の前にいる少年の瞳の中には、凶悪な表情をした、醜い男の姿が映っている…。殺意と狂気を宿した相貌を持つその人物が、蓮にはこの世で最も醜悪な存在に見えた。



「今のあいつの頭を占めているのは、この俺だ。…あんたが入る余地はどこにもねぇよ。」

「………っ!!」



 キョーコの、『不破尚』に対する執念をよく知っている。…でも、『それ』は自身を作り上げようとするキョーコの努力の中で、少しずつ鳴りをひそめていった想いだった。

しかし。一年前は。

 

 ……彼女の心には、彼に対する『特別な感情』と、彼という存在しか、なかった……



 ―――目の前の存在を、消してしまいたい。この世からこの存在さえいなくなれば……―――



「!!やめろっ!!蓮!!!!」

「尚……!!」



 身から溢れ出るその感情を、どう止めたらいいのかわからない。負の感情とともに振り上げた拳を振り下ろすことを、止めることができる人間は、もうどこにもいない。



 ……誰も。もう、誰もいない……



 ―――助けてくれ、と。聞こえぬ声で叫んだのは一体、誰だったのだろう…?―――




web拍手 by FC2