はるりん様からのリクエスト~魔法使いの恋(4)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「あぁ、そうだ。」

「?どうかしましたか?」



 カラコロと、再び響く可愛い音。その音を心地よく聞きながら、俺は先ほどから考えていたことを口にする。



「今日は俺のこと、『敦賀さん』って呼ぶのは禁止。」

「え!?」

「だって、こんな姿なんだよ?『敦賀』って名字、なんか変だろう?」

「…はい…。」

「だろ?それに、この体格と『敦賀』で俺の正体に気づく人だっているかもしれない。…いつかの君みたいに、ね?」



 俺が言ったのが『カイン・ヒール』のことだとすぐにわかったのだろう。彼女は「そうですね…」と小さく呟いた。…まぁ、俺としてはあんなこと、彼女以外にできないことだと思っているんだけれどね。



「え~~っと、…あの、そしたら、私は何とお呼びすれば…?」 

「…そこって疑問に思うところかな…?」



 名字がダメなら答えは一つしかないだろうに。どうして俺に確認する必要があるのだろう?



「え~~と…。じゃあ…。『先輩』!!」

「…………。」



 最上さんの出した結論。あまりの答えに、俺は思わず再び足を止めてしまった。



「ふぅ~~~……。」

「えっ!?ダメ息!?えっ、えっ、ダメですか…!?」

「ダメ。」



 俺は背後を振り返り、何が間違っているのかと慌てる彼女と視線を合わせるため、少し屈みこんだ。



「『蓮』。」

「ふぇ!?」

「だから、『蓮』って呼んで。」

「そっ、そそそ…そんな!!尊敬する大先輩をお名前でお呼びするだなんて恐れ多い……!!」



 最上さんは高速で俺と繋がれていない左手と顔を横に振り続ける。



「今日は先輩も後輩もないだろう?一緒にオフの時間を楽しんでいるんだよ?遊びに行く時くらいいいじゃないか。」

「ダメです!!上下関係というものは常にあってしかるべきものです!!それが社会の摂理であります!!」



 浴衣ゆえか、いつも以上にピンと伸びた背筋の彼女は、きっぱりと言った。



「…じゃあ、『コーン』。」

「へ?」

「『コーン』でいいよ。俺、君の妖精の王子様に似ているんだろ?」



 あんぐりと、大口を開ける彼女。可愛いその表情に、思わず噴き出しながら、提案をしてみる。



「……それはもっとダメです。」

「え?なんで?」

「いくら似ていても『コーン』と敦賀さんは別人です。…他の人の名前を呼ばれるのは、役に入っている時だけで充分でしょう?敦賀さんには、オフの時間をちゃんと『敦賀さん』として過ごしてもらいたいんです。」

「…………。」



 役者である俺達は、いつも何かの『役』であることが仕事だ。そもそも『敦賀蓮』という存在自体が俺にとっては役のようなもので……。



 でも、彼女は『素の俺』でいることを望んでくれている。そして、その時間を共に過ごすことを了承してくれているのだ。



 あぁ…君って子は、本当に……



「…じゃあ、やっぱり『蓮』って呼んで。」

「ふぇっ!?だっ、だから、あの……」

「オフの時間は『先輩』でもいたくないんだ。だから、『蓮』。これ以外は返事しないから。あぁ、それから俺は君のこと、『キョーコ』って呼ぶからね?分かった?」



 言うだけ言うと、返事も聞かずに俺は彼女の手を引き、再び歩き始める。



「あっ、あの…!!」

「ほら、行くよ。もう電車も混んでくるはずだから。」



 話は終わりとばかりに、呼びとめる声を出す最上さんを無視して俺は駅への道を急いだ。









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