日記(?)シリーズ~天宮千織編(3‐1)~ | ななちのブログ

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馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

○月□日 午前10



 今日は京子さんから呼び出しを受けてラブミー部の扉を開けた。



「おはようござ……!!??」



 扉を開いた瞬間に、中から溢れだしてきたのは、大量のピンクのハートと色とりどりの花々と平和の象徴、白鳩達…の幻影。

 桃色空気がもわりと零れ出てきたその部室の中には……



「きゃ~~~~っ!!すごいわ、モー子さん……!!キラキラしているわ、可愛いわ!!もうどうにかなっちゃいそう~~~~~!!」



「イヤ~~~ンッ!!」と、何やら色っぽい声を出す京子さん。…色々誤解されることを防ぐために、私は慌てて扉を閉めた。

「モ~~~~ッ!!気持ち悪い声ださないでくれる!?」

「だ~~って~~~!!モ~~~子さ~~~ん!!」



 「アハ~~ン」「うふ~~ん」と、クネクネしながら、ハートと花と鳩(の幻影)を飛ばし続ける京子さんに、盛大に「モ~~~~ッ」と怒鳴る琴南さん。



 そんな二人がいるテーブルの上には…指輪やブレスレットなどのビーズアクセサリーが並べられていた。



「…どうしたの?それ。」

「あぁ。うちの兄の友人がこういうの、作っているんだけど。大量にくれたのよ。だから、おすそわけでもしようかと思って。」



 クールに応えた琴南さんの言葉を聞いた後、もう一度テーブルを見る。



「…お兄さんのお友達は、女の人?」

「いいえ、男性よ。でも、こういうものが好きみたいね。趣味の領域でやってきたみたいだけれど、今度からネット販売とかも始めるみたい。」

「へ~~…。」

「…ま、新人とはいえ話題作に出ている『京子』や私達を使った自作品の売り込みも考えているでしょうね。」



 可愛い物を作る男性…っていうので、ちょっと乙女系を想像してしまったけれど。腹はそんなに可愛くないみたいね。



「そういうわけで、『新人女優』の私達で分け合っていいってことみたいだし。あんたもどうぞ?」

「そっ、そう…。ありがとう。」



 ブレスレットをとってはクネクネ腰を動かし、指輪をとってうっとり…と目まぐるしく表情と動きを変える京子さんに圧倒されつつも、私もその中の一つを手にとる。



 繊細な作りに、センスのあるデザイン…思わずうなってしまうくらいにできのいいものだった。



「ねぇねぇ、モー子さん、天宮さん!!ラブミートリオでお揃いにしようよ!!」



 京子さんの掌の中には、色違いの指輪があった。オレンジ、赤、青の石がそれぞれに基調とされたシンプルでありながら乙女心をくすぐるような可愛らしさもあるそれは、私の目も釘付けになった。



「あら、いいデザインね。」

「でっしょ~~!!??ね、ね!!お揃いにしよう!!」



 京子さんは、青の石のデザインのものを琴南さんに、赤を私に手渡し、キラキラ光る瞳で私達のことを見てくる。



「…お揃い、ねぇ……。」



 琴南さんは、とりあえず受け取りはしたものの、眉間に深い皺をよせて口をひくつかせている。

 …うん、そうよね。『ペア物』とかに対して拒絶反応起こしそうだもの、琴南さん。





「……ダメ?」

「っ!!」



 おっと!!ここで京子さんの必殺技、おねだり上目づかいが炸裂だわ!!無意識で繰り出されるこの技には大抵の男性もノック☆ダウンな上に、琴南さんをオトす確率は70%!!



「…べっ、別にいいわよ……?それ、可愛いものね……。」

「!!わ~~い!!モー子さんとペアリングだわ!!嬉しい!!」



 琴南さんは、「ふぅ~~~…」と深い溜息を吐いた後、頬を若干染めながら了承をした。『ペア』ってことは、私は遠慮したほうがいいのかしら…?



「私はいいわ。その代わり、このブレスレットをもらうから。」

「え!?そうなの?どうして??」

「指輪は彼氏にもらうことにしているの。…一応、そういう意味の『愛』に関しては欠落しているつもりはないから。」

「…そっか~…。残念ね……。」



 …本当は『彼氏』なんかよりも今は女優として『演技を愛する道』を探すことに懸命なんだけれどね。でも、こう言っておけば京子さんも無理して私を仲間に入れる必要がなくなるでしょ?…この同じような赤を基調としたブレスレットだって、デザイン的には似ているし、京子さんも納得してくれたみたいだしね。



「うふふ~~っ!!そしたらモー子さん、指輪、付け合いっこしましょ♪」

 

 京子さんは琴南さんから再び青い石の指輪を受け取ると、恭しく彼女の右手を掬いあげた。



「っ!!??何考えてんのよ、あんた!?」

「付け合いっこしようよ~~!!私とモー子さんの愛の誓い、しようよ~~!!」

「バッカじゃないの!?」



 琴南さんは顔を真っ赤にしながら、京子さんから指輪を奪い返すと、さっさと自身の右手の薬指にはめてしまった。



「うぅ~~っ、モ~~子さ~~ん。」



 恨めしげな京子さんの声が室内に響き渡る。…あれ、なぜかしら、何か背筋が薄ら寒い…?



「っ!!??あっ!!??あんた、また変なもん飛ばしているわね…!!??」



 琴南さんは、青白い顔色になると、ホラー映画で怯える主人公のような表情をして周囲を見回している。何か頭上に渦巻く物を必死に追い払っているようだけれど…。えっ、何かいるわけ!?



「うっ、うううっ……。」



 京子さんがホロホロと瞳から涙を零す。…零すにつれて、部室内が暗黒世界へと引きずり込まれていく……。



「……モ~~~ッ!!分かったわよ!!あんたの指輪ははめてあげるからっ!!ほら、さっさと指輪!!貸しなさいよ!!」

「っ!!モ~~子さ~~ん!!大好きぃ~~~!!」



 部屋中が何かオドロオドロしい黒い空気に包まれていたのに、途端にピンクの空気が部屋中を包み込む…。……京子さん……あなたは空気さえも自在に操れるの……?







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