かけがえのない日々~そして、クランク・アップ(1‐1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

※ご注意ください!!

 こちらの長編『かけがえのない日々』は本ブログでは見られないシリアスものでございます。スキビキャラが傷つけられることが苦手な皆様は、くれぐれもお読みにならないでください!!




「たっ…、たたた…、大変申し訳ございません!!」



大京町の歩道橋の上。キョーコは腕を組み、自分を睨みつける4対の目に対し、深々と頭を下げていた。そんなキョーコに、彼女を睨みつけていた少女達は「ふぅ~~~…」と長く息を吐きだした。



「…今日って、あんたの最後の撮影よねぇ?」

「はっ、はい!!そうです!!」

「それって、私達、なかなか会えなくなるってこととイコールだと思わない?」

「はい!!その通りだと思います!!」

「…で?もう一回言い訳、言ってみなさいよ。」

「!!はっ、はい!!実はこの後、尊敬する先輩とお茶をして、お食事をするお約束をしてしまっておりまして、皆さま方がサプライズ企画してくださったプチ打ち上げには参加できないのでございます~~!!」

 

「大変申し訳ございません~~!!」と更に深く頭を下げるキョーコに、先ほどから矢継ぎ早に棘のある言葉を吐いていた穂奈美は「は~~……」と溜息をつく。



「あ~~あ、一か月前からじゃないととれないレストラン、予約しておいたのに…一人キャンセルか…。しかも主賓が。」

「えぇ!?そんな前から!?」

「友達がいがないというか、なんというか…。ねぇ?マルミー?」

「うっうっ…。」

 

 穂奈美が話を振るその先には、泣きじゃくる留美がいる。



「うえ~~ん、京子ちゃん、ひ~ど~い~~……」

「!!あわわっ…!!ごっ、ごめんなさい……」



 うえ~ん、と泣く留美に、キョーコは目を泳がせながらなんとか宥めようと必死になる。



「しっかし、いじめのドラマでよく仲良くなったよなぁ、あの5人。」

「えぇ。しかも普段いじめられる…というか、いじられているのは、マルミーじゃなくて京子ちゃんなんですよね。」



 安南監督が片づけの指示をしながら、微笑ましいもめごとをチラリと見る。

 その隣で、助監督を務める男は大きく頷き、同意を示す。


「まぁまぁ、二人とも。」

「止めないで、ちおりん。この子にはお灸を据えておかなきゃ!!今度の全体打ち上げにも顔を出さない気かも知れないじゃない!!」

「!!そっ、そんなことしません!!絶対参加しますから~~!!」



 お許しを~~と、留美からもらい泣きをしたのか、涙をいっぱいに溜めて穂奈美にしがみつくキョーコ。



「…絶対ね!?約束、破らないわね!?」

「はい!!お約束、命を賭けてお守りします!!」



 穂奈美から手を離し、敬礼するキョーコに、穂奈美は「そう…」と言い、やっと笑顔を見せた。



「じゃあ、許してあげる。」

「!!ありがとうございます~~!!」

 

 深々と頭を下げるキョーコを見て、助監督はクスクスと笑う。



「本当にすごいな~、京子ちゃんは。」

「なぁ?あぁやっていたら、普通の子なのにな。」



 演技に入れば、いつだって『リーダーのナツ』だった。



「それもそうですけれど。最初、険悪なムードだったでしょう?京子ちゃん、かなりいじめられていたと思うんですよ。」

「あぁ。それに、俺もあんまりいいイメージ持ってなかったしなぁ。現場のスタッフも悪い空気、作っていたよな。」



 思いだした、とばかりに安南監督が呟く。それに対し、助監督は苦笑した。



「それが、見て下さいよ。今の状況。」



 ありがとうございます~と、穂奈美と友加、千織と留美に頭を下げまくるキョーコに、「よかったなぁ、京子ちゃん。」と、気さくにスタッフ達が声をかけた。彼女達の周囲には、穏やかで優しい空気を持つ人だかりが、いつの間にか出来上がっている。



「あの空気の中心にいるのは、間違いなく京子ちゃんですよ。」

「…そうだな。」



 思えば、現場の空気を作っていたのは『京子』だった。礼儀正しくあいさつをして登場し、ニコニコと明るい笑顔を浮かべて、役者やスタッフ、分け隔てなく接していた。…そんな少女が、役に入れば空気を変え、誰にも息を吐かせない残酷なイジメシーンを楽しそうに演じてみせた。



「あの子は大物になるでしょうね。」

「そうだなぁ。今、お近づきになれた俺達って、運がよかったのかもしれないぜ?」

「ふふふっ、いつか彼女が主演のドラマ、撮ってみたいな~。」

「おぉ。大きな目標だな。…俺も作ってみたいな。…『BOX‐R』の人気に応えて、ナツのスピンオフでも撮ってみるか?」

「あ、それ、面白そうですね!!」



 盛り上がる監督達のそんな次回作の話になど気もつかず、若い役者達はなおも楽しそうに会話を続けている。



「そういえば、その『尊敬する先輩』って、どんな人なわけ?LMEの人なの?」

「わざわざクランクアップの日に時間作ってくれるなんて、すっごく可愛がられているのね~。」

「あ、あの…。えっと…。」



 穂奈美と友加の質問に、思わずキョーコは頬を染めてしまった。



「え!?何、何!?先輩と見せかけて実は彼氏とか!?」

「え!?」

「こいつ~~!!私達を捨てて、男に行くわけ!?信じらんない!!やっぱり許さないわ!!」

「ふえぇ!?」



 友加がまず反応し、キョーコが対処できないでいる間に、穂奈美がキョーコの襟首に手をかけ、上下に揺さぶりをかける。



「!!いえっ!!ちっ、違います!!あの、モデルさんの歩き方…というか、ナツの役作りの特訓に協力してくださった先輩で…!!昨日お会いした時に、今日が最後だって言ったら、お祝いしてあげるって言ってくださっただけで……!!決して彼氏などでは……!!」



 揺さぶられることで声がぶれてしまう。だが、必死になってキョーコは弁解した。恐れ多い間違いはすぐにでも正さなければと、その一心で。






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