シネレンズ試写会 | シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

カメラマンヨッピーのブログ。シネレンズやオールドレンズなどのマニュアルフォーカスレンズをミラーレスカメラに装着して遊び、試写を載せていきます。カメラ界でまことしやかに語られているうわさも再考察していきます。

先日と友達とレンズを持ち寄って試写会をしました。
シネレンズ編とFD編の2回にわたってアップします。
今回はシネレンズ編。

シネレンズとクラシックレンズで遊ぶ!
Cine-Xenon25mmF1.4
Arriflex16mm業務用シネカメラ用スタンダードマウントレンズ。マイクロフォーサーズで使用するとわずかに四隅がけられる。これはイメージサークルが足りないのではなく、レンズのふちが写り込むことによりおこる。開放時からピント面はシャープで高い解像度を持っていることが分かる。今回は右端の黄色い花の中心にピントを合わせてあるが、おしべやめしべまではっきり見える。またその下、画面の下に見られるハイライトのきらきらがシネレンズの特徴。特にXenonではこのきらきらがよく見られる。ちなみにこのきらきらがフットボール型なのは収差によるものである。ただしこれはシネレンズとスチールカメラレンズの設計思想の違いによるものであり、収差=質の悪いレンズというわけではない。設計思想の違いというのは、ムービーとスチールの最終的な見せ方の違いによる。ムービーカ
メラは最終的にスクリーンやテレビで動画の形で見せる。当たり前の話だが、その場合見せたいものにピントが合えば、その周辺はヌケのよいきれいなボケであれば問題ない。そのためピント面に解像度を集中させて周辺は急激にぼけていく。ヌケのよさ重視なので、スチールで敬遠される2線ボケ、3線ボケのものもある。一方スチールカメラの場合は最終的にプリントで見せるため、中心と周辺のコントラストや解像度の違いがレンズの良し悪しの条件として語られることが多い。そのため中心の解像度というよりは画面全体の平均的な解像度を求める傾向にある。あと圧倒的に個人所有が多いため、ライカやコンタックス、アルパなどの一部の例外を除き、コストという問題を抱えていることが多く、価格の割りにいいとか、悪いとかいう判断基準になることが多い。例外のレンズや業務用カメラレンズがいいのは圧倒的に原価による。高級な特殊ガラスや最新の技術を惜しげもなく取り入れ職人が1本1本組み上げているので『スペシャルレンズ』といえる仕上がりになっている。あと時代的な背景もある。アリのスタンダードマウントレンズは1930年代から1950年代に設計されたレンズが多い。そのためまだコーティング技術が成熟しておらず、レンズ構成をなるべくシンプルにすることが高解像度の必須条件であった。そのため各収差の補正が不完全であった。いずれにせよそんな各収差と高解像度があいまってこの独特の魅力的な世界観が成立している。シネレンズの話が長くなったが、このレンズの話に戻る。F5.6まで絞り込むと解像度はさらに上がる。絞り羽方のきらきらはやや趣に欠くが、このレンズの完成度の高さが分かる。中古市場ではあまり評価されていないが、間違いなくスペシャルレンズの中の一本であると思う。




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Cine-Xenon28mmF2
Arriflex35mmシネカメラ用のレンズ。前述の25mmと写りはよく似ている。最大の違いはイメージサークルの広さでAPS-Cで撮影してもケラレがない。開放の写りは25mmより少し被写界深度が深いこれは開放値が1段違うことによると考えられる。大きさと外観はよく似ているが25mmより若干前球が小さい。周辺がぐるっとボケるのも25mmと同じ特徴である。NEXなどで使うと焦点距離もほぼ標準になるので、常用に最適である。25mmと同じく個体数は少ないが市場価格は落ち着いていてとてもお勧めのレンズである。F5.6まで絞ったときの写りも絶品でこれ以上のレンズは数えるほどしかないと思われる。




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Cine-Xenon50mmF2
Arriflexシネレンズ用のレンズになる。16mmか35mmかは不明。マイクロフォーサーズで使ってもケラレは見受けられない。この個体にはかなり拭き傷があるためソフトな描写になる。レンズ構成は4郡6枚で初期プラナーと同じダブルガウスタイプレンズになる。詳しい方のホームページによるとシネプラナーと同じレンズ構成との事。写りは開放は柔らかい描写でこの時代のプラナータイプの特徴とおり色のりは浅めで淡い発色。全体にやさしい写り。5.6まで絞っても同じ印象で、ほぼ円形の絞りのおかげできらきらもほぼ円形である。ポートレートに最適といった印象である。逆光条件で撮影するとかなり強めのハレーションを起こしさらに濃度は低くなるが、解像度はあまり失わない。今回の試写は直射光を切って撮影しているので、その傾向を見ることはできない。





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SpeedPanchro50mmF2
Taylor&Hobson社製35mm用シネレンズ。シネレンズ界のスターレンズである。1930年台の登場以来ハリウッドをはじめとする世界中のカメラマンに支持され、多くのバージョンを持つ。今回の試写は初期のものである。開放から非常に高い解像度と切れのある抜けを持つ。発色も自然で人気の理由が分かる。ただシャッターを切っただけで映画のワンシーンのように感じるのは知らないうちにこのレンズで撮った映画を見て育ったせいではないかと思ったりもしてしまう。5.6まで絞り込むとまさに絶品。ピント部のシャープネスと背景のボケ味の調和はほぼ人の目のようだと思う。まるで被写体までの空気までも写っているのではないかという気にすらなる。僕が知る限りの最高のレンズのうちの1本である。フルサイズまでカバーするようで、ライカマウントに改造して使用している方もいらっしゃるようである。そんなこともあり中古相場はかなり高い。とはいえ写りからすると、むしろ格安だと思う。現代だからこそ個人所有できると考えるべきかもしれない。




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Angenieux R2 18.5mm F2.2
レトロフォーカスで有名なアンジェニューのR2 18.5mmシネレンズ。35mm用シネレンズである。APS-Cでもけられない。レトロフォーカスとはいわゆる逆望遠レンズと呼ばれるものでカールツアイスではディスタゴンにあたる。本来焦点距離とはレンズの後玉からフィルム面までの距離になる。これをフランジバックとかバックフォーカスと言う。18.5mmの場合以前のレンズ設計だと1.85cmになるがレトロフォーカスの場合後玉の後ろにひっくり返しにした望遠レンズ(乱暴に言うと)がついていて、フランジバックを伸ばしている。このことにより一眼レフなどのようなレンズとフィルムの間にミラーを持つカメラでもワイドレンズをつけることができるようになった。その反面レンズ構成枚数が大幅に増えてしまうことによる画質低下と言うデメリットも併せ持つ。戦後マルチコートレンズの登場によりこの問題も解決されるが、戦前のレンズは淡い発色でハレーションを起こしやすいレンズが多い。とはいえその発色とハレーションがフランス映画特有のアンニュイな雰囲気を醸し出し、ファンも多い。今回の試写でもシネレンズでは一番ソフトな写りになっている。開放ではちゃんとピンとの芯を残しながらも柔らかな描写。発色は控えめだが独特。画面全体に調和が取れていて品がある。5.6まで絞り込むとさらに芯がハッキリする。どこか別世界のような写りはアンジェニューの独特の世界観だ。マイクロフォーサーズやAPS-C換算で35mmという画角のシネレンズはあまりないため、希少なレンズである。






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KERN SWITAR ARC 25mm F1.4
スチールカメラユーザーはケルンのスイターといわれてもあまりピントこないかもしれない。かく言う私もシネレンズに興味を持つまでは全く知らなかったメーカーである。知っている方はALPA好きか、ALPAユーザーであろう。このレンズはいわゆるCマウントレンズといって民生機の16mmムービーカメラについていたレンズです。とはいえこのケルンBOREXという超高級カメラについていたレンズでその作りも写りも業務用に引けをとらないできである。こと作りのギミックに関してはシネレンズ界屈指のものであると思う。今回の話の前半にお話したコストを無視したレンズである。開放ではアリフレックスマウントレンズに引けをとらない解像度と定評の有るとろけるボケが見て取れる。同じ25mmF1.4のCine-Xenonよりさらに柔らかいボケ、泡のようなきらきらは幻想的だ。5.6まで絞ると夢から覚めたようにシャープな描写に変わる。絞り形状が正円に近いので絞り込んでも丸いボケが健在だ。マイクロフォーサーズではケラレもなく使える。アリマウントのレンズとは比べ物にならないほど小さいが、作りこみは繊細で芸術的な外観である。アルミ製のねじ込みしきレンズキャップなど最高級の嗜好品らしい作りでアリフレックスのポリキャップのようなレンズキャップとは雲泥の差である。フードやフィルター、外箱の作りなどもすばらしいので完品だと結構な価格になる。





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KODAK CINE EKTARⅡ 25mm F1.9
今回一番意外だったレンズである。時代のコダックとボシュロムは別格らしい。開放からきれいなボケ、シャープな描写、鮮やかな発色はすばらしい。5.6まで絞ると現れる金平糖のようなきらきらはまさにこのレンズの絞りの型です。今回その他のレンズが良すぎるので霞んで見えがちだが、周りはF-1カーみたいなものなので、民生のしかも大量生産品がこのクオリティーと言うのはこの時代のアメリカの国力のなせる業などと思ってしまいます(勝手な印象です)。話がそれるのですが8X10(エイトバイテン)と言うカメラがあります。4X5(シノゴ)よりさらに大きい8インチX11インチ(A4位)という巨大なフィルムを使うこのカメラ用の名玉にコマーシャルエクターというのがあります。バイテンとコマエクと言うのがコマーシャルカメラマンの憧れと言うか目標だったことを思い出しました。話はそれましたがそれほどいいレンズと言うことです。ちなみにこのレンズはトリウムレンズとしても有名だそうです。


拡大比較(すべて開放時)

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