(「他人の不幸は蜜の味」からの続き)
姉と私、2人の子を得て、貧しくとも幸せな家庭を築きつつあった父母でしたが、1つだけ気掛かりな事がありました。
母方の祖母は孫の顔見たさに時々訪ねて来てくれましたが、祖父とは結納の席以来、全く会っていなかったのです。
夫婦そろって何度も母の実家を訪ねはしましたが、祖父は父と母に会おうとしなかったのです。孫の顔を見せてやりたいと思う母。その気持ちを知りながら何も出来ない父。
母は孫に会ってくれさえすれば父の気持ちも変わるだろうと思っていたのです。何故って、姉も私もとても可愛い子供だったのです(姉ちゃんは解るけど、お前スイカ頭だったろ)。
そうそう、毛の濃い所と薄いところがあって、それはそれは正にスイカの様でした。って放っとけ(超~うける~)。誰だお前は・・・。
でも本当ですよ。父の兄弟や母の兄弟の奥さん(義伯母・義叔母)達は、よってたかって「可愛い」って言ってくれていたのです(「可愛くない」なんて言う人はおらんわな)。
何だと~、皆キスまでしてくれたんだぞ~。キスする度に舌入れたもんだから、「まぁ~、この子舌入れて来たわ、末恐ろしいわね」なんて言われていたんだぞ。って何言わすねん。
え~、私なりに分析すると、女性の柔らかい唇を乳首と勘違いして咥えようとして、誤って舌が入ってしまったものと思われます(何分析してんだ、バ~カ)。一応弁解しとかなきゃね。
父は母に内緒で、休みの度に裏の仕事と称して母の実家に顔を出すものの、会おうとしない祖父。ある日、祖父が人から借りて耕している畑に行ったと聞いた父は畑を覗いたのです。
農機具を置く為に造ったと思しきみすぼらしい小屋で一服している祖父を認め、挨拶するも一瞥するや眼も合さず無視。話しかけても知らん顔。
祖父の手によると思われる小屋の細工が許せなかった父はある事を考えました。家に帰ると材木を調達し切り刻み、一週間後の夕方、弟に材木を運んでもらい、二人で小屋を建て替えたのです。
翌日それを見た祖父は如何だったでしょう。びっくらこいたでしようね。
更に一週間後に畑を訪れた父は小屋で休んでいる祖父の隣に腰かけ、「孫の顔だけは見てやってください」と一言言って立ち去ったそうです。
それから1ヶ月程した頃、畑で取れたと思しき野菜を籠一杯背負込んでひょっこりと訪ねて来た祖父は、野菜を置くなり「孫を見せろ」と一言。
母は慌てて姉と私を連れて来たのですが、厳つい顔の老人を初めて見た姉は泣き出してしまったそうです。私はと言うとぽかんと口を開けて祖父の顔を見ていたそうですね。
祖父が私を抱き上げると私は祖父の顔を触って笑っていたそうです。祖父は嬉しそうに、私のしたい様にさせていた様です。私を下ろすと泣いている姉の頭をなぜなぜして去って行ったのです。
母は後を追っかけて「御飯食べて行って」と言うと振り向きもせず「また来る」と一言。これ以降、季節の変わり目になると、野菜を大量に背負って訪ねて来る様になったそうです。
訪ねて来る時は独り。決して祖母と一緒には来なかった様です。勘当した手前、孫の顔を観に行くとは照れくさくて祖母にも言えなかったのですね。そんな事バレバレなのにね。
こうして、次第に父とも打ち解けた祖父でした。訪ねて来ると一緒に酒を酌み交わすまでになったのです。父は不思議と気難しい人を手なづけるのが得意だった様ですね。
世間一般に怖れられている集団のボスにも知り合いがおり、町内の嫌われ者を説得して町内会に入れたり、何処でその技を磨いたのか。
もし父が外務大臣をやっておれば、竹島も北方領土もとうの昔に日本に戻って来ていたでしょう(そんな訳あるかい)。兎に角不思議な父でした。
(つづく)
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