テオについて3~里親希望者の来訪 | ぽや♪すみ(旧「おみちょり♪通信/おみ♪てお」)
くだんの市内の愛犬家Mさん(仮名)とは、仕事が休みの水曜日の午後にアポイントを取りました。
コンパクトカー(車種は失礼します)に乗ってMさんはやってきました。
50代くらいのざっくばらんな主婦の方です。
服装もジーンズにポロシャツと、動きやすそうな格好です。
「ここに来る前に、いとこの所のビションフリーゼと遊んできたから匂いがついているかも」とMさん。

中にお通しすると、テオは一瞬ひるみましたが、敵ではないと確認すると、大喜び。
もともと犬よりも人に行くタイプの子なので、新しい人がうれしかったのでしょう。
リビングと和室を往復ダッシュしまくって大ハッスルです。

「ああ、うれしいんだね、うれしいんだね!」
Mさんがくりかえし声をかけます。
一見して、非常に犬に慣れている様子が伺えます。

私は一瞬焦りました。テオが混乱してパニックになって、Mさんがあわてて必死になだめているようにも見えました。
でも、そうではなく、これは犬がとてもうれしくて遊びに誘っているときにする行動だというのを、後で知りました。
Mさんがひざを突いて座りテオをだっこすると、すごい勢いでMさんの顔をべろべろなめます。
しっぽはそれこそ目にも止まらぬ速さでぶん回しています。

テオが人間の顔をべろべろなめるのは、本当に久しぶりのことです。
まれに食糞もしましたし、雑菌も多いし、あまり顔をなめさせるのはよくないと思ってやめさせていたからです。
テオもストレスがたまっていたのでしょう。
本当は私も、顔をなめさせても良いのならなめさせたいところではありますが、そこまで思い切れません。

もうテオは私や家族のことなどほぼ忘れて、すっかりMさんと意気投合しています。
あっというまに話はとんとん拍子に進んで、トライアル(お試し期間)を1ヶ月くらい設ける算段になりました。

もしかしたら、この環境のままではテオにストレスがかかってよくない、とMさんが感じたのかも知れません。
そのへんは、かなりテンポよく話が進みました。

「とにかく、そちらでいらなければ、すべて備品はお預かりいたします」

ケージもフードもペットシーツもおもちゃも服も、何もかもあっというまに自分の車に積み込んでしまいました。
コンパクトカーなのによく全部入るなあ!
そのスピードというか手際の良さには私もさすがにびっくりしました。

「すいません、犬にリードをつけてください」

Mさんの声が玄関から聞こえます。
もうクレートもトイレもないリビングで、首輪をテオにつけます。
まるで散歩に行く直前のような感じです。

はーい、と返事して、テオに首輪をつけているときに、驚くことがおこりました。
なんと、とてつもない量のおしっこを「ジャーッ!」と床にやらかしたのです!
量としては朝一のおしっこと同じくらいの大量です。
それもおしゃがみもせずに。

(Mさんもいるから怒っちゃいけない)

衝動を抑えながら、淡々とリードを首につないでMさんに渡します。

こいつめ、お迎え当日にもドッカーンとやらかしやがって!

でお別れのときもドッカーンかい。。。orz

粗相の始末が終わったら、もうMさんはテオを連れて車に乗り込んでいます。
最後に血統書や鑑札・(駐車)済票、書類一式を渡しに、車の所にいきました。

テオといったらもうMさんのひざの上に乗っかってハンドルに手を乗っけて前を見ています。
「テオ、じゃあな」
軽く口元に手をやったら、ちょこっと2~3回なめられましたが、目は合ってなかったと思います。
車が発進したらもう前向いて、すっかりMさんっちの子になっていました。
運転手気分なんでしょうか、どうなんでしょうか。

よく、犬が飼い主との別れを名残惜しむ、なんてドラマであるじゃないですか。
そんなことは一切ありませんでした。
すがすがしいほどあっさり、Mさんの子になってしまいました。

もしかしたら、リードをつけるときに大量の粗相をしたりした時点では、もう心は完全に我が家から離れていたんでしょう。

何の因果か、翌日はテオの1歳の誕生日でした。
本当は誕生日くらいは家で祝ってやろうと、小さい誕生ケーキを買っておいたのですが、この流れだったので、Mさんに「明日与えてください」と言伝がてらお預けすることにしました。

今だから申し上げますが、少し前に投稿した
テオ1歳の誕生日、おめでとう!の中の写真は、じつはその翌日にMさんから送られてきたものです。