MH小説エピソード10~獣王の目的~ | 緋紗奈のブログ

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このブログではモンハンやデジモン
日常で起こったことを自由気ままに
マイペースで描いています

実際こんなことあったらとんでもないな
パニックどころじゃ済まなそう…


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ドーン、ドーン、という警告のドラの音で砂肝は目を覚ました

しかしまだ少し寝ぼけているようで起き上がろうとして
ベッドの端に手を掛けようとしたら滑って
落ちてしまった、寝起きは悪いらしい

顔面を強打したようだが、寝ぼけているせいで鈍い砂肝
が、何気なく二階の窓から外を見た瞬間、一気に覚醒する

「う…嘘だろ!?翠ぃ!!!」

二階の窓からは大老殿が見えるのだが、
その屋根の上に獣王が立っているのがハッキリ見えた

「どうしたんですかニャ?お弟子さん」

慌てて降りてきた砂肝にきょとんとした様子の翠

「翠、左官さんはどこにいるんだ!?」
「左官殿ならお買い物に行ったニャ、
そんなに慌てて本当にどうしたんですかニャ?」
「大老殿に獣王がいるんだよ!!ヤバいぞ!!」
「ええぇぇぇ!?そんな…左官殿買い物だけだからって
防具も纏ってないし、武器も持っていないのに」

それを聞いた砂肝は失敬ながら左官の部屋に行き、
左官が愛用しているアグナコトルの防具と
獣王には火が効くのでは無いかとリオレウス希少種の
素材を使ったランス、ディバイン=ソルを持った

流石に一人では全部持てないので翠にも協力して貰う
自分も愛用の武器と防具を持って街の中心部へ急ぐ

「何で獣王が…頼む間に合ってくれ…!」




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パニックになり逃げ惑う人々
未だかつて無い緊急事態に街にいた警備兵も
ハンターもどうしたらいいか分からなくなっていた

街の中心部に突如として現れた正体不明のモンスター

その正体を知っているのは左官のみ

しかしその左官も今現在防具を纏っておらず
武器も勿論持っていない、戦うことなど出来ない状態だ

「な…何故こんなところに3日前まで樹海の奥地にいたのに…
一体どれほどの速さで走っていたんだ!?獣王…」

最悪の事態が頭をよぎる


「お…おい!何者だ貴様!俺達の街になんのようだ!?」

一人のハンターが獣王目がけてボウガンの弾を一発発射した
それが獣王の顔に当たり、獣王の動きがピタリと止まる

それに続けと言わんばかりに他のハンターや
警備兵が正体不明のモンスターに攻撃を仕掛けようとした





グルルルル……





獣王が低い唸り声を上げる
硬化した毛が密集している尻尾を持ち上げると
その尻尾を小刻みに動かし始めた

すると硬化した毛がせり上がり、尻尾がまるで茨のように変化する
獣王はその尻尾を軽く振るった


ドオン、という大きな音と共に家屋が簡単に破壊された
近くにいたハンターが巻き込まれ、吹き飛ばされる

「ま…不味い、このままでは…」
「左官さんあのモンスターを知っているんですか?
あれは一体なんなんですか?」
「あのモンスターは牙獣種から獣王と呼ばれているモンスターです。
最近頻発している狂竜化モンスターが何者かに討伐されているという
事件の犯人はあのモンスターなんです。実力は桁違いです」
「うえ!?マジで!?じゃあこの状況本当にヤバくない!?」

どうする!?今の自分では戦うことは出来ない
というか獣王がどうしていきなりドンドルマに!?

獣王は何かに怒っているように見える
しかしその割には建物や人にあまり危害を与えていなかった

これは一体どういうことか…


「左官さーーーーん!!!」


その時どこからか自分を呼ぶ声が聞こえた
辺りを見渡したが自分を呼んだらしい人物の姿は見えない

「キュイイィィィィ」

すると今度は甲高いモンスターの鳴き声が聞こえてきた
この鳴き声は…セルレギオスの鳴き声…?

鳴き声が聞こえた方、空を見上げると凄いスピードで
セルレギオスが左官の元へ滑空してきているのが見えた

「な…何故セルレギオスまでドンドルマに!?」

防具も武器もない左官はとっさに逃げようとしたが
セルレギオスの背中に誰かが乗っていることに気付いた

「あれは…間違いない!フランキーさん!
と、いうことはあのセルレギオスは千姫!?」

セルレギオスは左官の近くで着地すると
背中に乗っているフランキーをゆっくり下ろした

「千姫ちゃんありがとう!作戦通り千姫ちゃんはすぐにここを離れろ!
この状況じゃ他のハンターは千姫ちゃんに攻撃をしかねない」

フランキーの言葉を聞くと千姫は「キュイィィ」と
一声鳴き、その翼を羽ばたかせ空へと飛び立った

それを見送るとフランキーは左官へ顔を向ける

「左官さんとりあえず無事だな!?」
「は…はい!フランキーさん、これは一体どういう状況なんですか!?」

少し困惑している左官にフランキーは
誰もが驚くべき事実を言い出した

「左官さん、あの獣王は数日前に人間に連れ去れたらしい
牙獣種の子供を取り戻しに来たんだ!どの種族かは
千姫ちゃんも流石に調べる時間なかったそうなんだけど…
左官さんなんかそれらしい情報知らないか!?」

「え!?獣王はそのためにドンドルマに来たんですか!?」


なんと獣王は牙獣種の子供を取り戻すために
樹海の奥地からこのドンドルマまで来たらしい

あまりに衝撃の事実に唖然とする左官

「も…申し訳ありません。私も帰ってきて間もなく
それらしい情報は何も知らないのです」
「えええぇぇぇ!!??マジか!!??」

恐らく左官なら知っているだろうと考えていた
フランキーは少しショックを受けていた

と、その話を聞いていたシエルが割って入って来た

「急に話しに入ってごめんね、実は一昨日
ケチャワチャの子供が調査隊によって連れてこられてたの、
もしかしたらそれじゃないかな?」

「「それだ!!」」

シエルの話ではそのケチャワチャの子供は
街の奥にある研究所に連れて行かれたらしい

「よし、左官さん。俺がなんとか獣王の足を止めておく、
左官さんは研究所に行ってケチャワチャの子供連れてきてくれ!
その子供返せば獣王は縄張りに帰るハズだ!
この先は民家が多い、これ以上獣王が街の奥へ行くのは危険だ」

「そ…そんな…フランキーさんだけで対処できる相手では…」

しかし今の左官は何も出来ない状態
仕方なくフランキーの言うとおりにしようとした時
左官さん、と砂肝が翠と共に大急ぎで左官の元へやってきた

手には左官の防具と武器を持っている

「砂肝さん、どうして」
「家から獣王の姿が見えたから…左官さんこれを!
アイテムも持てるだけ持ってきました!」

砂肝は左官に武器と防具を渡した

「左官さん、研究所には私とシエルが行きます!
左官さん達は獣王をお願いします」

「お願いします緋紗奈さん、シエルさん」

「まっかせてー!絶対に連れてくるよ!」

左官は防具を纏うため一旦その場を離れる
緋紗奈とシエルは自分達が持っていた回復アイテムを
フランキーと砂肝に渡すと研究所に向かい走り出した

フランキーは息を大きく吸うと獣王の耳に届くよう大声をあげる

「おい獣王!!」

その声は獣王の耳にしっかり入った
動きを止め、フランキーへ視線を移す

それに思わず一歩引き下がってしまったフランキーだが
反応したと言うことは人間の言葉は少しは理解出来る
ということだと判断し、言葉を続ける

「あんたが探している牙獣種の子供は確かにこの街にいる!
今俺の仲間が探しに行ってくれている、見つけ次第
すぐにあんたのところに返してやるよ。それまで俺達が
あんたの相手してやるから無差別に攻撃するのは止めろ!!」

その言葉に獣王の鋭い眼光がフランキーに注がれる
自分と左官、砂肝だけでどこまで行けるか…

嫌な汗が全身から止めどなく溢れる

「お待たせしました」

左官が準備を整えて戻ってきた
準備の手伝いをしていた翠も合流する


「他のハンターの皆さん、警備兵。攻撃を止めて下さい!
このモンスターは牙獣種の王と呼ばれる存在です。
そんじょそこらにいるモンスターとはワケが違います。
むやみに刺激しないで下さい、ここは私達でなんとかします!」

ギルドも一目置くハンターの言葉に全員獣王から一斉に離れた

獣王は左官達を睨み付ける
左官、フランキー、砂肝、翠は武器を手に
獣王と一戦交える覚悟を決めた









「気付いていますか?フランキーさん」

「ああ…勿論気付いているぜ左官さん」

「どうしたんですか?二人とも…」

「砂肝さん、翠…絶対に油断してはいけませんよ、
獣王は実力の半分どころか恐らく1割も出していません。
もしケチャワチャの子供が死んでいたりでもしたら…
明日はドンドルマという街自体存在していないかもしれません」

「………え!?」



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