国賓として来日したシハモニ・カンボジア国王歓迎の晩さん会が17日夜、皇居・宮殿で開かれる。母国のために「草の根」で支援活動している女性、ペン・セタリンさん(55)も招かれ、出席する。36年前に来日。その後の政変で帰国できなくなり、家族6人が殺されたり、消息がいまだに行方不明という悲痛な体験をしたが、持ち前の明るい笑顔と性格で在日カンボジア人ネットワークの中心的存在だ。民間交流の様子などを両陛下に知ってもらいたいと楽しみにしている。

 セタリンさんは74年に国費留学生として来日した。翌75年にポル・ポト政権が誕生。自国民の虐殺、内戦など母国の混乱は続き、家族も失った。

 その間、東京都町田市でカンボジア料理店「アンコール・トム」を経営しながら、作家として活動。13年前には同国のシアヌーク国王文学賞も受賞した。森鴎外や芥川龍之介などの日本文学を翻訳し、カンボジアの児童・生徒に本を寄贈する活動も続けており、「鴎外の『山椒大夫(さんしょうだゆう)』に描かれている安寿と厨子(ずし)王の苦難の運命は、かつてのカンボジア国民が味わった過酷な時代にも重なり、よく理解してもらえている」と語る。

 晩さん会には、首相はじめ三権の長や閣僚、政官財の代表らが招かれるが、相手国に縁の深い民間人も招待される。その中にはアンコールワット遺跡の保存に尽くしている石沢良昭上智大学長らがいるが、セタリンさんは、在日カンボジア人としては唯一リストアップされた。

 昨年は両国の仏教説話を比較し、「布施の観念」についての論文で文学博士号を取得するなど、多彩な才能を発揮するセタリンさん。20年前に日本国籍を取得したが、晩さん会には、民族衣装で出席するつもりだ。【大久保和夫】

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