無防備都市(’45)
監督:ロベルト・ロッセリーニ
『自転車泥棒』 『揺れる大地』 と並んで “ネオレアリズモ” の代表的作品。
“戦争映画” という括りでも、この映画は頭ひとつ抜けている気がします。
ナチに捕らえられた婚約者を追いかけるアンナ・マニャーニの姿は
映画史に大きな爪痕を残す名シーンとなりました。
1942年、ローマ。
レジスタンスの指導者マンフレーディ(マルチェロ・パリエロ)は
資金調達のためローマにやってくるがゲシュタポに追われ
恋人ピーナ(アンナ・マニャーニ)との結婚を翌日に控えた同志
フランチェスコ(フランチェスコ・グランジャッケ)の家へ身をひそめる。
そこで神父のドン・ピエトロ(アルド・ファブリーツィ)に仲間との連絡を頼む。
しかし、フランチェスコの結婚式の当日、ナチが踏み込んでくる。
「映画の歴史は二分される。『無防備都市』 以前と以後だ。」
オットー・プレミンジャー
戦時下のため製作資金もままならない、撮影所も爆撃を受けてしまった中
ロッセリーニは、この傷ついたローマをありのままに映し出そうとした。
対独レジスタンスの不屈の精神、ドイツ占領下の市井の人々の厳しい生活を
ドキュメンタリー以上のリアリズムで描き、実際はローマ解放後に撮影されたが
ドイツ占領下でナチの目を盗んで撮影されたのではないか?という
無防備 “都市伝説” まで生まれてしまったほど(笑)
“ネオレアリズモ” の代表的作品でありながら、デカダンスな側面も見せています。
ナチス高官の部屋の隣には拷問部屋、反対側の部屋にはピアノを奏でながら
高官たちがソファにもたれながら、ブランデーなんか飲んでいる。
その中には、酒とクスリに溺れた女たちがレズビアン的な香りを漂わせながら
焦点の合わないうつろな目で、何を見つめるでもなく虚しい世界に堕ちている。
この映画を初めて観たときは、金網越しの子供たち表情を捉えたラストに
絶望感しかなかったのですが、肩を組みながら歩いていく子供たちの背中に
ロッセリーニは、これからのイタリアの未来を託したのではないか・・・・・
捕らえられた婚約者を追いかける妊婦やレジスタンスに協力する神父の話は
イタリアで実際に起こった話を基に脚本が作られ、その中には
若きフェデリコ・フェリーニも参加していたそうで、先日の 『カビリアの夜』 では
パゾリーニが脚本に参加していて、パゾリーニの作品にはベルトルッチが・・・・
という具合に、イタリア映画がしっかりと受け継がれていることが分かります。
現在のイタリア映画は、そのバトンが途切れてしまっているのが哀しい・・・・・・
カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞(当時グランプリ)受賞作
映画史を変えたネオレアリズモの代表作。
わが身で体験した戦争の厳しい現実をフィルムに写しかえたロベルト・ロッセリーニの傑作。
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