忘れられた人々(’50)
監督は、『昼顔』 のルイス・ブニュエル
スペイン人であるルイス・ブニュエルが、'46年から'58年にかけてメキシコに渡って撮った5作品のうちのひとつ
メキシコシティのスラム街を舞台とした、愛に飢えた貧しい少年たちの物語
現実を見つめた作風は、イタリアの 『ネオレアリズモ』 を思わせます。
特に、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の 『靴みがき』 に近いものを感じます。
ただ、ブニュエル監督は、やることがえげつないです。どぎついです。残酷です。
感情が剥き出しと言うか、研ぎ澄まされているとでも言いましょうか。
『昼顔』 の時にも、この世界観は凄いな。とは、感じてましたが・・・・
盲目の老人や、足の無い障害者を虐待したり、鶏を叩き殺したり、加減を知りません。
少年が夢?幻想?を見るシーンでも、血も滴る生肉が出てきて・・・・
あれは、少年が母親へ愛情を求めるが故のシーンなのだろう・・・今夜、夢に出てきそう・・・・
冒頭で、『非行はあまねく大都市が抱えている社会問題だ』 という説明があるにも関わらず、
徹底的に突き放して描いています。
社会批判があるというわけでもなく、同情的なものもなく、ほったらかしです。
少年が更生施設の養鶏場で暴れてカメラに向かって卵を投げつけるシーンがあるんですけど、映像は卵まみれになるんです。
『あっ 上手い!』 って思わず言ってしまいました。
今でも、自分の顔に卵がついているんじゃないかと思ってしまいます。衝撃でした。
あの卵が、全ての人に向けてのメッセージだったのかな。
実は、この作品というか、ブニュエルのメキシコ作品を薦めてくれたのが 『淀川長治さん』 なんです。
薦めてくれたって、友達かっ(笑)
最近、淀川さんの書籍を読んでいまして 『淀川さんの言葉』 を、このブログでもちょいちょい紹介したいと思ってます。
それで、淀川さんのブニュエル評なんですけど
『アヴァンギャルドの最高峰』 『中学生でもわかるし、映画の勉強をしている人も唸らせる』
『映画の神様。神様というより哲学者。哲学でもない、もっと、美術。目の美術。神経の美術ね。』
なんか、淀川さんも終いには、ブニュエルに翻弄されてますね(笑)
※参考 『淀川長治のシネマトーク』
メキシコシティの貧民街、そこに暮らす人々――少年たち、盲人、少年の親など――は誰もが皆、何者かから忘れられた存在である。
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