(前回の関連記事は「悟りでドツボにはまる? 」です)
幸せな人生
前回の記事では、
このようにわたしがあくまで神秘行と道徳は全く別にして考えるのに
対して、神秘行と道徳をごっちゃにするタイプの人がいるわけです。
というより、ほとんどの人は神秘行と道徳をごっちゃにして考えます。
と説明しました。
道徳的価値観を神秘行に持ち込む人は本当に多いです。
特に願望実現が絡んでくると、この傾向は顕著で、
「あなたの願望は叶わないのは怒りや妬み、罪悪感で意識が
汚れているからです。」
「人のためになる事を行えば運勢が好転します。」
「○○のマントラで潜在意識を浄化すれば願いはかないますぞ。」
「宝くじも当たりますぞ。」
などと言う人もいるくらいです。
わたしから見れば、いい年した大人がロクに努力もしないで宝くじで大金を
得ようと真剣に考えている時点で、もう潜在意識がダメになっている気が
するのですが。
ここで当然、
本当に成功した人間には怒りや妬みなどというマイナスの
感情がないのか?
という疑問が浮かんできます。
この問題について考える際に興味深い2人の人物がいます。
1人目は過去記事でも紹介した元アップル社CEOスティーブ・ジョブズです。
彼について元マイクロソフト会長 古川 享は彼について以下のエピソードを
語っています。
日本では、NeXTの発表会を、キヤノン販売がぜんぶおぜん立てして、
NKホールで、素晴らしいステージをつくって、人間国宝級の人が
素晴らしいお花をアレンジして。
ところがリハーサルにジョブスが来て、壇上に置いてある花を見て、
いきなり通訳を呼んだ。
「この犬の糞を積み重ねたような醜悪なものをすぐどけろ。
このことを、正しく通訳して、帰ってもらえ」
……帰ってもらえ、はまだしも、犬の糞、を!?
しょうがないから伝えたといいますけどね。
その人はもう、青筋立てて帰っちゃったという。
ジョブズはこのように人の善意を平気で踏みにじるような
傲慢かつ怒りに満ちた人間だったんですね。
11月1日から日本で映画「スティーブ・ジョブズ」が公開されます。
主役はアシュトン・カッチャー(デミー・ムーアとの年の差婚+離婚で
ニュースになった人です)だそうですが、こういったジョブズの傍若無人な
エピソードがどこまで盛り込まれるのか興味があります。
2人目の人物は、そのジョブズと共にアップル社を創業した
スティーブ・ウォズニアックです。
写真を見ると、いかにも人のよさそうなアメリカの田舎の親父といった
風貌ですが、 Apple IおよびApple IIを開発した優秀なコンピュータ・
エンジニアです。
彼は21歳の時にジョブズと知り合ってから共同でコンピューターの
開発・販売を行っていたのですが、2人の関係を伝えるエピソードが
あります。
ジョブズがアタリの技師になったころ、ブロック崩しゲームである
「ブレイクアウト」の設計を命じられた。
ジョブズは自身の手に余る仕事であることを認識。
すぐにウォズニアックに助けを頼んで、2人は4日間の徹夜で
ブレイクアウトを完成させた。
ジョブズは報酬の山分けをウォズニアックに提案し、アタリから
受け取ったとする700ドルのうち350ドルを小切手にして
ウォズニアックに渡した。
しかし、実際にはジョブズはアタリから5000ドルを受け取っていた。
後にウォズの知るところになるが、彼は
「たとえ25セントしかもらえなくても引き受けただろう。」
と語った。
この2人の性格は本当に対照的です。
単純に1ドル=100円で換算して、
①報酬は山分けにしようと提案して50万円を受け取っておきながら、
②報酬は7万円と嘘をついてウォズニアックには3万5千円しか渡さない。
③50万円の内46万5千円を着服した。
ジョブズはまさに、
お前のものはオレのもの。オレのものはオレのもの。
というジャイアンのような性格です。
これに対してウォズニアックは、
④「ボクは別に25円の報酬でも引き受けたよ。」
という、ドラえもんに泣きつくのび太も真っ青のお人好しぶりです。
IQ200以上の頭脳を誇り、ほとんど独力でAppleⅠ、Ⅱの
コンピューターを開発するほどの天才的才能を持ちながら、
「ボクは別に25円の報酬でも引き受けたよ。」
というお金には全く無頓着なお人好し。
ジョブズにしてみればウォズニアックと知り合ったのは
金脈を掘り当てたようなもので、徹底的に彼の才能を
利用して自分自身の利益を得たわけです。
ウォズニアックの人の良さについては、以下のような2つのエピソードが
あります。
(エピソード1)
1980年にアップルが株式公開をする際、株を持っていたのは創業者と
一部のマネージャーだけであった。
しかし、ウォズニアックはストックオプションの権利を持たない従業員に
ウォズプランという形で、彼の所有分から1人2,000株まで買えるようにした。
ジョブズは、この行為は間違っていると非難したが、ウォズニアックは
「おかげで家を買ったり、子供を大学に通わせたりできたと多くの
感謝を受けた。」
「やった甲斐があった」
と語っている。
(エピソード2)
1982年にウォズはウッドストック・フェスティバルの再来を夢見て、
第1回USフェスティバルのイベントを開催した。
正規の入場料を払った参加者は少なく、さらに340人の逮捕者を
出して終わった。
しかしウォズは1983年にも第2回USフェスティバルを開催する。
USフェスティバルを主催したウォズは、推定2000万ドルを損失したが、
本人は大満足しているそうである
20億円の損失を出して大満足している人間ってなかなか
いないんじゃないでしょうか?
ここでスピリチュアル的成功法則の観点から2人を評価すると
ジョブズです。
逆にウォズニアックは、波動を読んでも普通一般人より怒りや妬みといった
マイナスの感情は非常に少ないですし、自分が受けるべき利益を削ってまでして人助けをしています。
〈潜在意識の浄化〉や〈人助けをすれば成功できる〉という一般的成功法則から
すればぶっちぎりでウォズニアックが成功するはずです。
しかし、iPhone、iPad、iTunesの開発でアップル社を世界最大のIT企業に
成長させて歴史に名を残したのはジョブズです。
それに対してウォズニアックは自分が開発したApple IIの取扱いを巡って
その後は起業の失敗、離婚などを経て、現在は地域の子どもや
若者のための情報化教育活動などをしているそうです。
こうして対照的な2人の人生を観察すると、
「あなたの願望は叶わないのは怒りや妬み、罪悪感で意識が
汚れているからです。」
「人のためになる事を行えば運勢が好転します。」
などという法則は絶対でないことがよくわかります。
しかし、人間はどうしても道徳的に優れた(性格がいい人間)が
成功して、(性格が悪い人間)が失敗することを望みます。
すると、ジョブズのような優れた功績を残した人間は、
人格的にも優れた人間だったと考えようとします。
理論ではなく、情で物事を判断しようとするわけです。
このように情で物事を判断する人間は、人生全般で同じような
判断ミスを繰り返し、それが最終的に破滅を招きます。
特に神秘行ではこのような判断ミスが命取りになります。
現実は情で単純に判断できるものではありません。
ウォズニアックはジョブズにその才能を徹底的に利用された上に
追い出されましたが、アップル社が株式公開を果たし時には1億ドルを超える創業者利益を得ることができました。
ジョブズは他人の手柄を横取りし、容赦なく切り捨てるような傲慢な
人間でしたが、ウォズニアックはそんな彼に出会い利用されたからこそ、その才能が世にでたわけです。
もし、出会っていなければ普通のコンピューター会社の一社員として
埋もれてしまっていたかもしれません。
こう考えてみると、
怒りや妬み、罪悪感で意識が満たされていて、他人を利用してでも
のし上がろうとする傲慢な人間が歴史的に残るような偉業を成し遂げる。
そして、そういう人間の存在が、心のきれいな善人にとってプラスに
作用することもある。
という1つのパターンが導き出されます。
善人だけじゃ世の中回らないんですね。
↓はウォズニアックの言葉です。
「同じ日に死ぬ二人の男のことが頭に浮かんだ。」
「片方は成功者。会社を経営し、いつも目標の売上を達成し、
「もう一人はのらりくらりとしてて、お金もあまり持っていない。
ただただ笑って人生を過ごすんだ。」
「物事をコントロールする人より、笑って過ごす人のほうが幸せだって、
僕は思う。」
「それが僕の考え方なんだ。僕は、人生で一番大事なのは幸せであり、
そうなりたいとずっと思ってきた。」
彼はこういう考えで人生過ごしながらも、ちゃっかり1億ドル手に入れて
楽しく生きているわけですから、ジョブズよりも幸せな人生なのかもしれません。
(正確にはウォズプランで1億ドルのうち、6000万ドルは一般社員と
その家族に譲っています。)
※次回の記事更新日は9月1日になります。

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