ヘヴィサイケ特集 その18 | サイケデリック漂流記

ヘヴィサイケ特集 その18

The Flow
のちにソロ名義で''One Day of a Chrystalline Thought''(1974)を発表するPete Fineが率いたNYのトリオ。オリジナルのアナログは自主制作で、(1972年の片面盤と後発の両面盤あわせて)二百枚くらいしかプレスされなかったというお宝だそうです。

まず一聴して印象的なのが、豊富なアイディアと才能に満ち溢れていること。エフェクトとしてシンセサイザーを用いたり、曲がジャズな展開をしたり、大胆にクラシックを引用(バッハの「トッカータとフーガ」!)したり、のちのソロ作の布石となるようなアコースティックな曲があったり・・・。とはいっても、決してゴテゴテしてたり散漫だったりということはありません。基本はジャケットのイメージどおりの、ローでアングラでギターオリエンテッドなヘヴィサイケデリアが通底しています。

三人のメンバーの演奏技量はグレードが高くて上手いのですが、Pete FineのボーカルがTom Rapp系の不安定でナイーブな感じなのが、サイケ的にいい感じのバランスになっています。それと、ずっと耳に残るような(かといって「ポップ」ということはない)印象的なメロディも良い。あらゆる意味でハイレベルな一枚です。名盤! (''The Flow's Greatest Hits''はアナログ盤から付けられていたタイトル。)


The Flow
Greatest Hits

ちなみに、上述のPete Fineのソロ作ですが、こちらは一転して、まったくヘヴィサイケ作品ではありません。男女のボーカルとアコースティックギターを中心に、クラシカルなストリングスやフルートを交えた、英国フォーク~カンタベリー系プログレのような響きをも感じさせる、「プログレッシブ・アシッド・フォークロック」といった趣き。ふわりとしたアシッド感と研ぎ澄まされた感覚、のどかさと凛々しさの同居する、こちらも素晴らしい内容の作品です。


Pete Fine
One Day of a Chrystalline Thought



Morly Grey
オハイオ産のトリオ。1972年発売(1969年説は誤り)の唯一のアルバム''The Only Truth''はヘヴィサイケ・クラシックとして、おおむね評価が定まっているようです。Fuzz, Acid and Flowersには「過大評価されてる」なんて書かれていますが、確かに、一見なんでもないような感じで、「煮え切らないGFRみたい」と感じる人もいるかもしれません。でも、私はそのあたりの一見なんでもない部分、普通っぽい部分の雰囲気というか「姿」が良くて気に入っています。

最大のウリはラストの表題曲で約17分の長尺ヘヴィアシッドナンバー。南北戦争時代のアメリカ民謡''When Johnny Comes Marching Home''(「ジョニーが凱旋するとき」)のフレーズを引用した、ベトナム戦争への哀歌とも取れる大ダウナーチューンなんですが、ただ鬱々と沈み込むだけでなく、その先にほのかな希望の光のようなものが見えるような感じがします。ともかく、ニューロックやらプログレやらが勃興している時に、こんなまったりサイケな曲をやってたというだけで拍手ものです。


Morly Grey
The Only Truth



Wizard
これもわりと有名ですね。未聴の方でもジャケットは見かけたことあるのではないでしょうか? フロリダ出身(レコーディング時はアトランタ)のトリオですが、音はFrijid Pinkとかのデトロイト産ヘヴィロックに近いものも感じます。と思ったら、「(ミシガンなどでギグをして)Bob Seger, Frijid Pink, Third Powerなどと一緒にプレイした」とメンバーが言っているので、そのあたりの影響もあるのかもしれません。ヘヴィなリフやトリッピーなソロのみならず、耳に残るキャッチーなメロディが顔を覗かせたりするのも特徴です。

アルバムは1971年の一枚のみで、CDはGear Fabから、唯一のシングルの両面をボーナストラックに加えたものが出ています。


Wizard
The Original Wizard