新型インフルエンザ特措法は再び社会を混乱に陥れる | KNのブログ

KNのブログ

テニス、生活の知恵、B級グルメ、時事問題、精神世界、その他いろいろ書いています。
      ※使用PCは、ブログ開設時から 「Windows XP」 です。(マシンは2台目→3台目)

「新型インフルエンザ特措法は再び社会を混乱に陥れる」


ここでも、良くない流れになってます。

谷田憲俊さん: 山口大学大学院医学系研究科 医療環境学
浜六郎さん: NPO法人 医薬ビジランスセンター(薬のチェック)
の共同執筆による論説を、転載します。

本当の専門家の意見を聞き、
正しい知識を持って、政府や行政・マスコミの偏向した説明をうのみにせずに
適切な判断が出来るようになってください。
彼らは、その薬に本当に効果があるかどうかや、その道の治療の専門家です。
誤った認識に基づく無闇なワクチン接種は、危険です。


3/28 「新型インフルエンザ特措法は再び社会を混乱に陥れる」
   =『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No156
  from NPOJIP 医薬ビジランスセンター (薬のチェックは命のチェック)
  http://www.npojip.org/sokuho/120327.html

(途中から引用開始)
4 新型インフルエンザ特措法の問題
4)治療と予防について

抗インフルエンザウイルス剤は,症状改善までの期間を1日ほど短縮させる臨床的効果が確認されている.しかし,肺炎合併や重症化を予防する効果は,メタアナリシスによって確認できなかった[12,13].

一方,オセルタミビル(商品名タミフル)は,ザナミビル(商品名リレンザ)使用者,あるいは抗ウイルス剤非使用者に比較して服用後12時間以内に重篤化する突然型の死亡が多かった[14].ザナミビルが抗ウイルス剤非使用者に比較して死亡を減らすというデータは得られていない [14].したがって,新型インフルエンザに対して抗インフルエンザ剤を推奨する根拠はない.なお,オセルタミビルによる重症化防止効果をうたった報告もあるが,重大な利益相反ゆえにそれら報告の信頼性には疑義がある[12].

インフルエンザワクチンは,感染を防ぐことはできないが予測されたウイルス抗原に流行がうまく当たった時に重症化を予防する効果があるとうたわれる.しかし,症状の発症を抑えたという場合でも,接種者と非接種者の普段の健康状態を調整すると,インフルエンザ症状の発現率に差はなくなり,「厚生省研究班が検出した効果が実は,健康度に交絡した『見かけ効果』であったことが強く推測された」とされている(図4)[15].

  ここに(図4 インフルエンザ様風邪による欠席日数とそれ以外の平均病欠日数の関連)が入る


実際,効果を示せなかった臨床試験も多く,メタアナリシスでは感染予防や重症化防止は20~30%程度とされる [16,17].それらの値は相対的防止効果であり,ワクチンとウイルスがうまく適合しワクチンが有効と判定された場合でも実数(絶対的防止効果)では成人で3%に症状軽減効果が見られただけ(重症化防止効果はなかった)と数値がはるかに小さくなる[18].介護者へのワクチン接種も,有効と見積もったとしても推奨するほどの効果はない[19].

巷には「新型インフルエンザワクチンの有効性が確認された」という報告や報道があふれた.それらの「有効性」とは,「ワクチンを接種したら血清抗体が上昇した」というもので,「ワクチンの臨床的有効性」とは別ものである[20].

これらの情報を総合すると,インフルエンザワクチンを公衆衛生的施策に導入するには無理がある.その点,メディアなどでインフルエンザワクチン推進意見のみが紹介される現状では,誤解している人が多いと思われる.誤解は不合理そのものである.インフルエンザワクチンの効果については,マスメディアの人々を含め,ある種「信仰」に近いものにさえなってきている.それがワクチンを組み入れた新型インフルエンザ特措法の上程につながった理由の一つであろう.

5)強制措置について

有効なワクチンでさえ,強制的接種の導入は人権侵害の懸念が強いにもかかわらず,推奨するほどの効果がないワクチンを強制接種することは暴挙である.しかしながら,アメリカのニューヨーク州では介護者や医療従事者への強制的ワクチン接種を法制化した[21].日本の特措法も,現実には強制措置として機能する可能性が高い.現に任意接種であるにもかかわらず,医療従事者へのインフルエンザワクチンは実質的に強制接種となっている.特措法が「強制ではない」とうたっても,政府が強制措置として機能することを狙っているのは確かであろう.

また,特措法は施設の使用・催物開催の制限や各種生活上の自粛等も定めているが,公衆衛生上の理由で個人の自由を制限するには国際的な合意事項がある.すなわち,①制限は法に基づいた方法で行使される,②制限は公衆が関心を寄せる合法的目的の利益にかなう,③制限は民主制社会において目的達成に強く必要とされる,④同じ目的を達成するために,それより侵害性・制限性の少ない方法がない,⑤制限は理不尽または差別的に専横的に押しつけられるものではない,というシラクサ原則(註2)が適応されなければならない[22].

しかし,そもそも「新型インフルエンザ」は歴史的にも医科学的にも重症にはならないので(かりに重症化するとしても新型でなくなってから),シラクサ原則のいう公衆衛生上の理由は存在しない.つまり,新型インフルエンザには個人の権利を制限するいかなる根拠も存在しないので,それに対する特措法がシラクサ原則にかなうか否かについての検討すら必要ないことになる.それでも新型インフルエンザ特措法がその原則にかなうか否かを検討してみても,詳細は割愛するが,原則の①が該当するだけで特措法はシラクサ原則に合致しないと判断できよう.

シラクサ原則は国際連合による取り決めであり,日本政府も署名しているはずである.国際公約を誠実に履行することは国の義務であろう.「特措法は過大」との指摘には,適応を適切にすることで対応すると政府は述べているが,まさに「ドロナワ」であり額面どおりに施策が運用される保証はない.1998年の新感染症法成立時には,不合理な「公衆衛生審議会伝染病予防部会基本問題検討小委員会」の提言より,さらに不合理な法案が成立した[23].今回も,不十分な「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書」より,さらに不十分な特措法が上程されている.こういった愚挙は繰り返されてはならない.

註2:1985年,イタリアのシチリア島シラクサにおいて国連経済社会理事会が話し合って合意した,公衆衛生上の理由から人権への制限を加える際に考慮されるべき原則. 国連人権委員会なども人権侵害の判断の際に参考にしている.


5 合理的な新型インフルエンザ対策について

これまでみてきたように,1918年スペインかぜ重症化の主因は医原性であることから新型インフルエンザに対する恐怖には根拠がないことがわかる.むしろ,NSAID(非ステロイド抗炎症解熱剤)やオセルタミビル(タミフル)などによる過剰治療が患者を害している可能性が高い.

すなわち,恐れなければならないのは,ウイルスよりも過剰治療である.一般的予防のためには,咳エチケットや手洗いなど個人衛生が求められる.学校閉鎖はそれが考慮される時には感染が進行しているため,感染拡大予防に役立たない.罹ったら休養が大切で,かぜ薬は肺炎合併を増加させたりするので使用しない.高熱には,氷嚢などを用い,頭痛などで不眠の場合に必要あれば抗炎症作用のあまりないアセトアミノフェンを少量用いる.呼吸困難や意識混濁などの重症合併症が考えられるときか,症状が落ち着いた後に再度発熱するなどの肺炎合併などが疑われるときは病院を受診する.

感染症に対する危機管理は,炭疽菌テロなどの実例もあって,世界中で配慮されている.アメリカ公衆衛生学会のマニュアルには [24],その第一条に「低毒性呼吸器感染症などのある程度のリスクは受け入れよ」とある.すなわち,通常起こりうるリスクに対する対策ではなく,重大な結果を招きかねない感染症に焦点を絞ることが大切である.新型インフルエンザは,まさに「低毒性呼吸器感染症」に相当するので,危機管理上は大きな問題にならない.

また,日本では高齢者のインフルエンザ死が大きな話題になる.かつて,近代医学の父,ウィリアム・オスラーは「肺炎は老いの友だち」と言った.現在であれば,さしずめ「インフルエンザは老いの友だち」としたであろう.高齢者のインフルエンザを特別視する医学的・医療倫理的根拠はないので,日本社会には冷静な対応が求められる.
(引用終了)