英語探訪(No.1:アポストロフィー「’」) | Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

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<本記事を引用された場合、その旨を御連絡頂けると有り難いです。>

本日から、新シリーズ「英語探訪」のスタートです。


今回のテーマは「アポストロフィーapostrophe」。

御存じの様に、何かが省略されている事を意味するとされています。

(例)aren't→are not,I'm → I am


特に綴りの省略のみでなく、音も省略されている場合に使われている事が多く(省略されている文字を発音する場合もありますが、それはあくまでも例外)、その意味では欧米の言語であるドイツ語、イタリア語などでも同様の使われ方をしています。

フランス語のエリジョン(母音の脱落)などは、「必ずしなければならない」という意味でその最たる例かもしれません:

(例)je aime→j'aime


では、英語所有格の'sは何が省略されているのでしょうか?上の例の様に「省略前の形」が見えてきません。


それに関しましては、昨日の記事で『「英語探訪」開始の前に、(5/20付け)の「複数形-sの偶然!」 について補足する必要がある』と述べた事と関連しています。

もう一度古英語名詞stane(男性強変化形,aの上に-)の活用を御覧下さい:


※単数-複数の順、格の名称(1,2,3,4格)はドイツ語と比較したという経緯が有って、それと合わせています。

1格(主格)   stan   stanas

2格(所有格) stanes stana

3格(与格)  stane stanum

4格(対格) stan   stanas

これらの内で現代英語に残っている活用形は、

複数1格(主格)の-as

および

単数2格(所有格、属格)の-es

のみです。あとは見事に消滅してしまいました。


しかも、そのままの形とは言えません。例えば複数1格の-asは-esを経て-(e)sとなっている事は(5/20付け)の「複数形-sの偶然!」 で述べました。

(現在は-sの複数語尾を持つものでも、中英語期には子音で終わる場合には-esだった。armes→armsなど。)


では、残る単数2格を御覧下さい。現代英語の所有格'sのアポストロフィーは元々の形が-esであった事に由来する事が分かります。

即ち、アポストロフィーは省略されたeを示している訳ですね。但し、現代英語の範囲での類推は難しいものです。


では、なぜ複数形の語尾は-'sと示されないのでしょうか?

どうやら単純に複数語尾-s所有格語尾-'sとの区別を付けるための様です。敢えて書かないという訳ですね。