日本人はどの程度幸せか~いちばん嘘をつかない数字とは何だろうか | MATTのブログ ~ 政治・経済・国際ニュース評論、古代史、言語史など ~

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元新聞記者。 アメリカと日本を中心にニュース分析などを執筆します。




happy family



日本人はどの程度幸せなのだろうか。果たして徐々に幸せになっているのだろうか。よく「生活への満足度」や「幸福感」を尋ねる世論調査結果があるが、これらはどうも主観的なので、あてにならないように思う。第一、日本人の謙虚さ、奥ゆかしさはそれ以外の民族と比べて尋常ではない。第二に、ほかの国で生活したことがない人がほとんどなのだから、外国と客観的に比較するのも無理だ。第三に、これらの回答は気分的なものが大きく、たとえば社会事件やマスコミの報道論調などで左右されやすい。




それ以外にも、平均所得だの貯蓄額だの物価だの、さまざまな経済や社会的な統計指標がある。しかし、経済発展の度合いは低くても、国民のほとんどが「幸せ」と答えるブータンのような例もあるから、必ずしも経済的な指標は「幸せ」とは一致しない。もちろん「幸せ」という概念が主観的で曖昧なものである以上、それと寸分違わず一致する指標などないのかもしれないが、数ある指標の中で、もっとも嘘をつかない数字とは何なのだろうか、少し考えてみた。



そこで、まず「自殺者数」が考えられる。自殺にはさまざまな要因がある。倒産や失業、生活苦などの経済的な要因、うつ病や闘病苦などの精神・身体的な要因、いじめなどの社会的要因・・・。どうもこの数字は、もっとも包括的かつ客観的、直接的に国民の「幸せ度(不幸度)」を反映しているように私には思われる。







自殺者数推移




日本の推移を見てみると、2014年の自殺者数は25,374人 で、5年連続で減少しており、前年(2013)からは7.0%も減っている。17年ぶりの低水準だ。17年前は金融危機の影響で自殺者が増えたと言われていた。内閣府は今回の数字について「中高年の男性の数が著しく減少し、健康や経済が原因の自殺も大幅に減った。09年から地域ごとにきめ細かい対策を行えるよう財政支援した効果が表れた」と分析しているそうだ。



次に挙げたいのが「殺人件数」だ。殺人の理由も、経済的、精神的など、さまざまあろう。しかし、殺人を思い立つ人がいて、殺される人がいるということは、それがどんな理由であるにせよ、「幸せ」の対極にある出来事には違いない。世の中が「荒れている」という証左でもある。「犯罪件数」も重要と思われるが、この数字は認知・検挙を行う警察の取り組みによっても左右されそうだ。だが、殺人事件の認知件数が警察の取り組み方次第でそう左右されるとは考えにくい。




日本の殺人件数は2013年に939件と、戦後初めて1千件を下回った。  実はものすごい快挙と言える数字なのである。一応、犯罪(認知)件数も見ておこう。2014年は121万2千163件   と、12年連続で減少し続けているうえ、平成に入ってから最低の数字となっている。



その次は「失業率」を見てみたい。収入が低くても必ずしも「不幸感」の原因にならないかもしれないが、本人の意図に反して失業すれば、それは「不幸」の理由になり得る。そのうえ、大事な点は、失業に伴う生活苦や不幸感が、自殺や殺人に直接結びつく場合もあり得るし、その土壌となる社会的荒廃や精神疾患を生む原因にもなり得る。




完全失業率は、2014年が3.6%(約250万人) で、2010年の5.1%以来、4年連続で減少している。同年12月の数字は実に17年ぶりの低水準である。こちらのほうも、ものすごい快挙と言えよう。傾向として、自殺者数や殺人件数、犯罪件数の数字もどうやら連動している。



もう一つは倒産件数である。会社が倒産すれば、社員全員が路頭に迷うし、経営者が莫大な個人負債を抱え込む場合もある。こちらも、どうみても不幸な状態と連動しているように見える。東京商工リサ―チによると、 2014年の企業倒産(負債1千万円以上)は9,731件 で、前年比10.3%減。6年連続で前年を下回り、1990年(6,468件)以来、24年ぶりに1万件を下回った。この要因について同社は「金融機関が中小企業のリスケ要請に応じていることや、4月の消費税率引き上げに対応して景気対策として実施された公共事業の前倒し発注の効果などが挙げられる」と分析している。


ついでに、不慮の事故死の中でもっとも多い交通事故死の数だが、2014年は4,113人で、前年より5.9%(260人)減っているうえ、14年連続の減少だ。統計を始めた1948年以降で3番目に少ない数である。

おさらいをすると、自殺者数は5年連続で減少、殺人件数は戦後最低、犯罪件数は12年連続で減少、失業率は4年連続で減少、倒産件数は6年連続で減少、交通事故死は14年連続で減少している。ここまで数字が出揃うと、ここ45年の日本人の幸福度は向上していると結論づけないわけにはいかないのではないだろうか。(経済学や社会学の学究を専門としているわけではないので、もしもおかしな点があればご指摘願います。)



無論、日本の現状に問題がないわけではなく、不幸な人々がいなくなったわけでもない。現実に、日本国内に日々、不満が渦巻いていることも知っている。ただ、日々のマスコミ報道やネット情報を見ていると、暗いニュース、苛立つようなニュースばかり伝えられるので(メディアとはネガティブなニュースをより大きく、実際よりも過大に伝えるものだ)、我々はその時々にネガティブな心理的影響を非常に受けやすい環境にあり、現状や将来を必要以上に悲観する傾向があるということを認識しておくことも、時には必要なのではあるまいか。