世代間格差解消のため、参議院に年代別選出枠を! | MATTのブログ ~ 政治・経済・国際ニュース評論、古代史、言語史など ~

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元新聞記者。 アメリカと日本を中心にニュース分析などを執筆します。

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近年、世代間の不公平の問題が指摘されることが多くなりましたね。原因は年金、福祉、財政負担など、世代間の利害の衝突が以前にも増して深刻になってきたためでしょう。





高校生の息子の話を聞いていても「もう僕たちは将来、年金もらえないんでしょ。だったら保険料払っても仕方ないんじゃない?」と不満たらたらというか、かなり悲観的になっているようです。おそらく10代、20代、30代といった若い世代のほとんどは、そのような考え方なんじゃないでしょうか。





エコノミストの島澤諭さんも「日本で世代間不公平性の問題が取り上げられる機会が少ないのはなぜ?」
で、日本では高齢者の優遇度合いは英国以上なのに、大手マスメディアがこの問題を取り上げることは多くない、と指摘しています。





新聞も概して高齢者の味方で、現状維持に貢献しているように思えます。だって、50~70代が中心的読者層なんですから。








併せて、日本では若い世代が投票に行かないということが問題になっていますね。その一方では、高齢者の投票率は高いため、政治家も高齢者を優遇する施策ばかりを提案しようとします。若者の生活を幸せにする政策はあまり実行されていないように見えます。「シルバーデモクラシー」と言われる所以です。













日本では、欧米諸国と異なり少子化問題・子育て支援が長い間放っておかれたのも、実質破綻同然の年金の改革が放っておかれたのも、相対的に資産より所得に重い税が課されているのも、将来に財政負担のツケが回されているのも、長いデフレで若者の失業者やフリーターが増え、ロストジェネレーションが生まれたことも、結局、そういうことではないかと私は思っています。





デフレ政策というのは、貯めたお金の価値をただ置いておくだけで増加させる一方、物価と賃金を下げ、経済を縮小させて失業を増やすという意味で、高齢者に優しく、現役世代とくに若い世代には厳しい政策ですよね。デフレ政策=適度なインフレ政策への反対=高齢者優遇政策なのです。







先述の島澤さんによると、高齢者と若者世代との扱いの差を指摘することは、仮にそれが事実であったとしても、世代間戦争を惹起するため好ましくない」と言う人がいるのだそうです。しかし、私はそのような「知らしむべからず」的な考え方には反対せざるを得ません。それは結局、高齢者優遇の制度を固定化し、若い世代にあきらめをもたらし、政治に関心を持つことをますます遠ざけることにつながると思います。







そこで今日は、世代間格差の問題の解決へ導く、大胆な提案を2つしましょう。







1つは、現在その存在意義自体も問われている参議院の選出枠を、たとえば20代、30代、40代、50代、60代、70代以上と年代別に、しかも人口割合を正確に反映して設けるのです。現在は20代の人が投票に行こうにも、20代の人の意見を代弁する政党や候補者がほとんどいませんから、投票する気が起きないのもある意味、無理はありません。(共産党候補者にややそういう傾向がありますけど)





このままでは、若者の投票率はますます下がってしまいます。60代、70代の人々が投票したくなる候補者はたくさんいるでしょう。みな、「年金」とか「福祉」とか「医療」とか「公営交通の高齢者無料化」とか唱えていますから。候補者が「年金」や「福祉」や「医療」などと唱えるのは、高齢者の票が集まるからです。







もし2030代の人が投票したくなる候補者がいるとすれば、「年金」「福祉」「医療」ではなく、きっと「雇用増大」とか「低所得者・子育て世帯の減税と課税最低限の引き上げ」とか「出産・育児奨励金」とか「保育園の大幅増設と延長保育・利用料引き下げ」とか「ベビーシッター派遣制度」とか「年金の世代間格差の抜本的改革・資産のある人の年金減額」とか「資産増税」とか「生前贈与の優遇」とか「ネット投票の導入」とか「公教育予算の充実」とか「私学への補助金増額と学費値下げ」とか「奨学金の充実」とか「新産業の創出・ベンチャー支援」とか「正規社員と非正規社員の待遇格差是正」とか「消費減税」とか「配偶者控除の廃止」とか「転職用の教育訓練給付金の充実」とか「外国人メイドの解禁」なんかですよ。





「ネット選挙の導入」は、実現すればまず間違いなく、若い世代の投票率をアップさせられるでしょう。しかし、これに反対する人々は、やはり若い世代の政治参加を阻もうとする高齢者世代なのではないでしょうか。







正規社員と非正規社員の格差是正に反対するのは、実は経営者たちではなく、正規社員という既得権益を必死に守ろうとする労働組合でしょう。





また、アメリカの固定資産税なんかは日本と比べてめちゃくちゃ高いですよ。普通の家を一軒持っているだけで、1年間に200万円ぐらい資産税を取られてしまいます。資産に税をかけても大した税収は上がらないという意見もありますが、これだけ徴税したら、相当な税収が生まれるでしょう。





高齢者(や40~50代の正規社員)に配慮するため、そのような若者に有利な政策を打ち出している候補者は少数か、いたとしても実際には(高齢者向け政策と比べて)あまり力を入れていないし、省庁や既得権益団体の壁が強力なわけですから、若い世代の投票率が下がるのも当たり前と言えば当たり前です。







ですから、私の意見では、この問題を根本的に、しかも恣意的ではなくきわめて民主的に解決するためには、参議院に年代層による選出枠を設けるしかないのです。そうすれば、衆議院が地域別の選出枠になっていますから、世代別の参院との間で見事なバランスが成り立つと思います。そうすれば、もう「参院には存在意義がない」と言われることもなくなり、参院が見事によみがえるでしょう。パチパチ(拍手)。







そう言うと、おそらく「世代間対立を煽る結果となり、好ましくない」と言う人が出てくるでしょう。それでは、そう言う人にうかがいたいと思うのですが、衆院の地域別選出は、地域間対立を煽る結果になっているので、やめたほうが良いんじゃないでしょうか。実際に、ある議員は新幹線の東への延伸を、別の議員は西への延伸を求めるといったことが起きているでしょう。





また、参院の候補者は労働組合の代表とか、医師会、農協など職能団体の代表が多いようですが、職能別の選出システムは、国民同士の対立を煽る結果にはなっていないのでしょうか。経営者と労働組合、医師と患者、農業生産者と消費者は、それぞれ利害が対立することが多いのではないでしょうか。





現在のある意味最大の問題は、20代の有権者が投票に行って一票を投じようとしても、20代の意見を代弁してくれる候補者がいないうえ、たとえいたとしても、若い世代の投票率が低いため、そのような候補者はどのみち当選しませんから、一票が無駄になってしまうわけです。60代の人が投票に行けば、同世代の投票率が高いうえ、候補者も60代ですから、当選しやすいですね。だから、その人の理想の政策が実現される可能性も高いのです。







もし20代の候補者枠が存在していれば、たとえ20代有権者の投票率が低かったとしても、人口割合に応じて国会に意見を反映してくれるようになり、投票が無駄になることが少なくなります。「20代では経験が少ないため議員は無理」というのであれば、30代の枠から始めてもよいでしょう。




これまでの政党・候補者だって、若い人向けの政策はちゃんと提案してきていますよ、との反論もあるかもしれない。だけど試しに一度、20代の候補者同士を、同じ20代の有権者の票を獲得するために競わせてごらんなさい。これまでの候補者が言っていたような政策とはがらりと変わった内容になりますよ。つまりそれは、これまでの50~70代の候補者が、どれだけ若い世代に目を向けてこなかったかを意味していると思います。





もう一つは、若い世代(1030代)の意見を代弁する全国政党をだれかがつくり、影響力を広げていくことです。上記の国会改革を実現すれば、自然の理としてそうなるとは思いますが、その参院改革自体が、ちょっと考えただけでも実現がものすごく至難の業ですから、それを実現する駆動力とするためにも、若い世代向けの政党・運動が必要でしょう。逆に、そのような強力な牽引車がなければ、上記参院改革も、まったくもって絵に描いた餅になります。







日本にも深く根づいている儒教の考え方に「長幼の序」というのがあります。また、「どうせみんな、いつか年老いるのだから、そんなに高齢者をいじめるなよ」との意見もあるでしょう。まあ、それらの意見はそれなりに一理も二理もあると思うのですが、だから若い世代は黙っていろ、政治参加しなくていい、ということにはならないでしょう。





それに国会はそもそも戦争をする場ではなく、理性的に話し合い、最善の道を決める場なのですから、各世代の代表者が理性的に話し合えばよいことです。