[追記2あり] 『ROCK IN JAPAN FES』のマニアックな話をお一ついかが?(笑)
このエントリーを公開してから約1週間ほど経ったが、思い出したことがあったので [追記2] を書かせていただいた。
しかしながら、[追記2] を含めるとエントリー自体が非常に長くなってしまったので(苦笑)、 "『SUMMER SONIC 2013』大阪会場のF.O.Hシステムの出音のトラブル" に関しての内容はカットさせて頂いた。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』とは関連が薄いといえばそうだし(苦笑)。
ただし8月12日のオリジナルのエントリーは残してあるので、ご興味がある方々はそちらを参照していただきたいと思う。
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Perfumeが大トリを務めた『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』が終わって一週間が経った・・・・ ということで、そろそろ当BLOGの"マニアック・シリーズ(?!)" のネタをお一ついかが(笑)。
まず、オレが観戦したアーティストとそのステージは以下の通り。
○KREVA ・・・ GRASS STAGE
○avengers in sci-fi ・・・ PARK STAGE
○ピエール中野(凛として時雨) ・・・DJ BOOTH
○BABYMETAL ・・・DJ BOOTH
○奥田民生(2曲のみ) ・・・ LAKE STAGE
○10-FEET ・・・ GRASS STAGE
○Perfume ・・・ GRASS STAGE
それで印象的だったのが "DJ BOOTH" 以外は、"PARK STAGE"と"LAKE STAGE"、"GRASS STAGE" のいづれも投入されていたSRスピーカーシステムが、PA界に革命をもたらすシステムと言われるイギリスのMartin Audio社の『MLA』(Multi- cellular Loudspeaker Array)という次世代ツアーリングシステムを用いていたことだ(ただしキャパが小さい "PARK STAGE" などは『MLA COMPACT』の可能性もある)。
* "other" となっているのは "DJ BOOTH" などでは『MLA』以外のスピーカーが導入されていたため
*昨年11月の『Inter BEE 2012』でパワーわんこが撮影したもの
*『MLA compact』(『Inter BEE 2012』でパワーわんこが撮影)
オレはこの『MLA』のテクノロジーの革新性に "Live会場の響きのさらなる改善" の可能性を予感し、そして昨年年末の『rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 12/13』に参戦した際にその響きを初めて耳にして、その素晴らしさから虜になっている。
そして、この革新的なSRスピーカーをを所有しているのがPerfumeのLiveパフォーマンスを音響面で支えてきた "MSI JAPAN" であり、今年の年末に控えているPerfumeのドームクラスのワンマンLiveでそれを導入すれば、かなり素晴らしい成果が見込めると考えている。
ちなみにオレが参加した『SONICMANIA 2013』のPerfumeが登場したステージである"CRYSTAL MOUNTAIN" においても『MLA』が投入されているのを視認している。また『SUMMER SONIC 2013』においても導入されているようだ。
さて話を戻すとして、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』の当日にオレが会場に到着して、一目散に向かったステージが "GRASS STAGE" で、朝一番でKREVA氏がステージを行っていた。まだ会場には余裕があり、まずオレはF.O.H用スピーカーの銘柄の確認のために最前列まで向かった。そして『MLA』が投入されているのを視認する。
その "GRASS STAGE" のF.O.H用スピーカーのレイアウトはメインがステージの両端にそれぞれ1本ずつリギングされ、その隣にはSub-Wもリギングされていた。さらにその外側には両翼のカバレッジを確保するためにサイドフィル用スピーカーが設置されていた。ただしディレイスピーカーの設置は無かった。
またSub-Wはステージ下にも追加でグランドスタックされていた。すべて『MLA』で統一されていた。
それで朝一番ということもあって会場のスペースには余裕があったため「これは『MLA』の実力を体感する絶好のチャンス」だと思った。要するに同一のアーティストのパフォーマンスを会場のさまざまな場所で『MLA』の響きを試聴できるまたとないチャンスだ。それでこのような試みを行ってみた。
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
*実施概要
○対象アーティスト ・・・ KREVA
○対象SRスピーカー ・・・ 『MLA』・サイドフィル用 (他のオーディエンスの迷惑にならないように)
○具体的な方法 ・・・ サイドフィル用の軸上に位置しながら、縦軸方向に移動してそれぞれの位置で試聴する
・スタンディングゾーンの最前
・スタンディングゾーンのキャパ1/4
・スタンディングゾーンの1/2(F.O.Hブース付近)
・スタンディングゾーンの3/4
・スタンディングゾーンの最後方
・シートゾーン前方
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ちなみに"国営ひたち海浜公園" の地図で概算したところ、スタンディングゾーンの最前から後方までは "130m ±α" 程度に考えられる。それで今回はディレイ・スピーカーは設置されていなかったので "ステージからの距離=F.O.Hスピーカーからの距離" と考えて良い。
それで各位置での試聴したインプレッションを書こうと思ったが・・・・ それは必要無いと思った。だって、中・高音域はどの位置にいても素晴らしい明瞭性と十分な音圧を保っており、全く同一の響きなのだから(シートゾーン前方を除く)。
例えば、ゾーン最前のF.O.Hスピーカーの真前に位置して、耳が痛くなったことは皆さんも経験済みだと思う。今回『MLA』の真前に位置しても中・高音域は不快に感じることはなく、むしろバランスの取れた、適宜な響きだと思った。このF.O.Hスピーカーの真前に位置して耳が痛くなるというのは、特に用いられているのが点音源方式のスピーカーの場合だと思う。
点音源方式のスピーカーを用いて、中・高音域を長い距離の後方まで十分な音圧で音波を飛ばすとなると、スピーカーの出音はゾーン最前では尋常ではないほどの高い音圧に設定しておかないと後方まで届かない。
"DJ BOOTH" のF.O.H用スピーカーはその点音源方式のものが採用されていた(最前まで行けず銘柄を視認できず)。それで"DJ BOOTH"でのピエール中野氏のパフォーマンス時は、オレはゾーン外の柵の外から観ていたが、十分な明瞭性と音圧だった。その後、BABYMETALのパフォーマンスとなってゾーン内に入り、F.O.Hブース横で観ることにしたが・・・・
その音圧が尋常ではなく、5~8kHzの高音域がかなりピーキーで金属系音色が特に耳に刺さるように痛く、正直聴いていられるようなものではなかった(苦笑)。それで耳への過剰な負担が心配になって後方に下がってしまった。それでもまだきつくて・・・・
結局、ゾーンの最後方付近が一番バランスが良かった。 同じ日に次世代のシステムの『MLA』と点音源方式のSRスピーカーの響きを聴いたことは "SRスピーカーの正統な進化" を象徴しているようにさえ思えた。
ちなみにBABYMETALのパフォーマンス時は、後に下がったオーディエンスを多く目にしたが、それが要因のような気がしてならない。メンバーはかなり頑張っていたのに残念だと思った。
ただし、F.O.Hエンジニアの名誉のために書いておくと、『TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2013』のBABYMETALのパフォーマンス時も点音源のスピーカーを導入しており、オレはF.O.Hブース付近で観たのだが、耳が痛くなったとは感じなかった。おそらくF.O.Hシステムの特徴なのだろう。
その一方で『MLA』はキャビネットごとに音波を飛ばすエリアを分割担当させているため、中・高音域においてはエリア最前であっても過剰な音圧になることもなく、そうかといってエリア最後方であっても、明瞭性と音圧が不十分になるとは感じなかった。
そして特筆すべきはゾーン後方のスピーカーから100m以上離れて試聴していても、音波の遅延はほとんど感じられず、驚くことに音源が5m前後に存在するような "定位と音像が近くに感じられる" ことだった(音波の遅延に関しては、屋外であるため反射や残響が少ないことも影響しているが)。
これはオレが主催するオーディオ・オフ会に参加された方々ならお気づきかもしれないが、オレのクルマのオーディオシステムもタイムアライメント機能を用いて "定位と音像が近くに感じられる" ようにセッテングしてある "あの感じ" だ(過去のオーディオ・オフ会後に、なおっちさんがその感想エントリーに「音源が近い」と書いていた)。
これも本当に凄いと思った。 "Digital Signal Processer(DSP)" のテクノロジーの進化ハンパない。これも『MLA』の響きの真骨頂だと思う。
ただし超低音域に関してはどうしても距離における音波の減衰が感じられた。屋内の使用であれば建物自体の共鳴などを用いて、直接音でなくても後方まで十分な迫力が引き出せると思う。しかし今回のように野外となってはその手法も使えない。その対策として今回はメインの隣にSub-Wもリギングされてはいたが、後方では超低音域の量感は不足気味だった。
そういうこともあってか後方までの超低音域の音圧を稼ぐために、逆にゾーンの最前では超低音域が過剰気味の音圧であることは否めなかった。その後のPerfumeのパフォーマンス時はグランドスタッキングされたSub-Wの4~5列目に位置していたが、その尋常ではない超低音域に・・・ 恐怖さえ感じた(苦笑)。
そのような意味で考えると、『MLA』において超低音域から高音域までバランスのとれた響きで楽しむとなると、F.O.Hブース付近からその少し前ぐらいが適していると思う。
そういえば最近コアなPerfumeファンの間では "F.O.Hブース付近に陣取る" というのが流行っている(?!・笑)らしいのだが、その響きを楽しむのであれば正しい選択だと思う。 だってオレもPerfume以外だったら、ほとんどF.O.Hブース付近に陣取るからなぁ(笑)。
さて、『MLA』の設計思想には『最適化(optimization)』というものが強く反映されている。これは、
"どの会場であっても、どのエリアであっても、オーディエンスに同一の音圧・音質を提供する"
というものだ。
そのための手法として "ラインアレイ" のような線音源方式とはまた一味違った "Multi- cellular" 方式を採用した。この方式は最大72のエリアに分割担当させ、会場のエリアごとの音響特性にあわせて"能動的な最適化" が行える。この特性こそが『MLA』が持っている性能の真髄といっても過言ではないだろう。
今回の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』ではこのような "距離を変えて試聴" が実施でき、『MLA』の性能と本領をオレ自身の耳で確認できたことがかなり貴重であり、非常に有意義だと思った。また勉強になったと思う。
こんなことはワンマンLiveでは到底できない。フェスの朝一のステージを観に行ったからこそだと思う。そしてこれもフェスの楽しみ方の一つなのかもしれないと思った。
今年の年末にドームクラスのワンマンLiveを控えているPerfume。その際に『MLA』が投入されれば・・・・ かなり期待して良いんじゃないだろうか。
<○追記>
過去のエントリーで、おとわしゅなさんからこのようなコメントを頂いた(ありがとうございます!!)。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
ちなみに私は初日から参戦したのですが、初日の渋谷社長の朝礼の話では、今回GRASS STAGEのレイアウトや方向をかなり変えたとの事。
前回までは舞台上から観覧車が全く見えなかったのですが、今回から見えるようになるくらい、角度が変わったようです。
お陰様で?終日フロントエリアは日差しに見舞われることになりましたが・・・
さらに興味深い事に。ステージの向きを変えた事により、近隣にまで音が届いてしまうので、目の前で爆音でもある一定の距離で急激に減衰するようなセッティングにした、と言っていました。
エンジニアの方の名前と映像が紹介されていましたが、名前はちょっと忘れてしまいました。
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これは『MLA』の最大の特徴である "LEKGE性能" のことを語っていますね。『MLA』はその指向性も電気的にコントロールできるので、
"狙ったところに音波を飛ばし、狙ったエリア以外は音を漏らさないようにする"
ということが高次元で達成したシステムです(ちなみに位相特性でコントロールするようです)。ちなみにMSI JAPANは既に、2012年4月の東方神起の東京ドーム公演でこの『MLA』を導入し、大きな成果を得ています。これは東京ドーム公演を控えるPerfumeにとっては、その意味は大きいです。
指向性をコントロールできるため反射や残響音をかなり減らせますし、ご存じかもしれませんが、東京ドームでの公演では近隣への配慮のため音圧規制があります。そのため、これまでは会場のエリアによっては迫力不足などがあったかもしれません。
しかし『MLA』は極端に音漏れが少ないため、これまでのように音圧規制を気にしなくてもいいんですね。東方神起の東京ドーム公演のF.O.Hを担当した村田孝氏(佐々さんの上司)がインタビューでこのように語っています(もう少し詳しい内容は過去エントリーをご参照ください)。
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「村田 : 前省略・・・ それで言うと今回、音に対する苦情が1件もなかったんです。『東京ドーム』はこれまで何度も経験していますが、規制値が100dBのところをピークで、105dB入ると必ず周辺のどこからかクレームが入ります。」
「村田 : でも最終日はアベレージで105dBを超えても苦情がありませんでした。」
『PRO SOUND』2012年8月号より
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『RIJ2013』や『ソニマニ2013』などでも『MLA』の響きはリスニング用のオーディオ機器の雰囲気に近く、素晴らしい響きだと思いましたよ。たしか『RIJ』では2011年ぐらいから『MLA』は導入されていると思いました。
ちなみに『MLA』のシステムのエンジニアリングを担当するのは菅原拓也氏だと思います。
ドーム公演を期待しましょう!!!!!
<○追記2・18日am9:27>
あっ、そうそう思いだした(笑)。
今回の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』では、最後の追加募集でようやく駐車場を確保できた(苦笑)。その確保できたところは臨時第2駐車場で "翼のゲート" をすぐ出たところに位置し、アクセスが非常に便利だった。
*ちょうど駐車場ぐらいの位置から撮影したもの。目前の赤い『RIJ』の看板付近が "翼のゲート" でその手前がロータリーとなっている
したがってベースキャンプをそこに設置して、休憩は自分のクルマまで戻って適宜とっていた。
会場の位置関係としては "翼のゲート" を通過すると眼前に "LAKE STAGE" が拡がるという感じだ。ちなみに当然 "LAKE STAGE" もF.O.H用スピーカーとして『MLA』を導入し、ディレイスピーカーの設置は無かった。
*『RIJ2009』のものだが、位置関係は同じなので代用(笑)
それでお昼の休憩をクルマでとった後、ピエール中野氏のパフォーマンスを観るために会場に向かう。それで興味深いことに "翼のゲート" のロータリーを通過するぐらいから突然、中・高音域の高い明瞭性と十分な音圧が感じられる、伸びの良いトータス松本氏のボーカルが耳に飛び込んできた。
そして更に驚くことにF.O.H用スピーカーからは約200m前後離れていると思われたが、音源が5~10m前後に存在するような "定位と音像が近くに感じられる" ことであった。
その後に"LAKE STAGE" で奥田民生氏のパフォーマンスが行われ、オレはステージの最後尾で観ていた。残念ながらこの後のPerfumeのパフォーマンスに備えるために2曲のみを聴いた後、休憩を取りにクルマに戻った。その時もやはり "翼のゲート" ぐらいまでは中・高音域の高い明瞭性と十分な音圧が感じられたが、ロータリーを越えたぐらいから、急激に中・高音域が減衰したように感じた。
そうなると"LAKE STAGE" のカバレッジは"翼のゲート"のロータリー付近を境界として、かなり厳密に設定されていると考えても良さそうだ。
これには思わずオレは唸ってしまった。心の底から感心した。
『MLA』の最大の特徴である "LEKGE性能" を物語るエピソードであり、その指向性の高いコントロール性能とエリア外での音漏れの少なさを偶然にも体験できたエピソードだと思う。こういうこともワンマンLiveではなかなか経験することは難しく、非常に貴重な経験だと思った。
こういうところも含めて楽しむのが、フェスを満喫する醍醐味だと感じたことを追記しておきたいと思う。
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しかしながら、[追記2] を含めるとエントリー自体が非常に長くなってしまったので(苦笑)、 "『SUMMER SONIC 2013』大阪会場のF.O.Hシステムの出音のトラブル" に関しての内容はカットさせて頂いた。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』とは関連が薄いといえばそうだし(苦笑)。
ただし8月12日のオリジナルのエントリーは残してあるので、ご興味がある方々はそちらを参照していただきたいと思う。
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Perfumeが大トリを務めた『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』が終わって一週間が経った・・・・ ということで、そろそろ当BLOGの"マニアック・シリーズ(?!)" のネタをお一ついかが(笑)。
まず、オレが観戦したアーティストとそのステージは以下の通り。
○KREVA ・・・ GRASS STAGE
○avengers in sci-fi ・・・ PARK STAGE
○ピエール中野(凛として時雨) ・・・DJ BOOTH
○BABYMETAL ・・・DJ BOOTH
○奥田民生(2曲のみ) ・・・ LAKE STAGE
○10-FEET ・・・ GRASS STAGE
○Perfume ・・・ GRASS STAGE
それで印象的だったのが "DJ BOOTH" 以外は、"PARK STAGE"と"LAKE STAGE"、"GRASS STAGE" のいづれも投入されていたSRスピーカーシステムが、PA界に革命をもたらすシステムと言われるイギリスのMartin Audio社の『MLA』(Multi- cellular Loudspeaker Array)という次世代ツアーリングシステムを用いていたことだ(ただしキャパが小さい "PARK STAGE" などは『MLA COMPACT』の可能性もある)。
* "other" となっているのは "DJ BOOTH" などでは『MLA』以外のスピーカーが導入されていたため
*昨年11月の『Inter BEE 2012』でパワーわんこが撮影したもの
*『MLA compact』(『Inter BEE 2012』でパワーわんこが撮影)
オレはこの『MLA』のテクノロジーの革新性に "Live会場の響きのさらなる改善" の可能性を予感し、そして昨年年末の『rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 12/13』に参戦した際にその響きを初めて耳にして、その素晴らしさから虜になっている。
そして、この革新的なSRスピーカーをを所有しているのがPerfumeのLiveパフォーマンスを音響面で支えてきた "MSI JAPAN" であり、今年の年末に控えているPerfumeのドームクラスのワンマンLiveでそれを導入すれば、かなり素晴らしい成果が見込めると考えている。
ちなみにオレが参加した『SONICMANIA 2013』のPerfumeが登場したステージである"CRYSTAL MOUNTAIN" においても『MLA』が投入されているのを視認している。また『SUMMER SONIC 2013』においても導入されているようだ。
さて話を戻すとして、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』の当日にオレが会場に到着して、一目散に向かったステージが "GRASS STAGE" で、朝一番でKREVA氏がステージを行っていた。まだ会場には余裕があり、まずオレはF.O.H用スピーカーの銘柄の確認のために最前列まで向かった。そして『MLA』が投入されているのを視認する。
その "GRASS STAGE" のF.O.H用スピーカーのレイアウトはメインがステージの両端にそれぞれ1本ずつリギングされ、その隣にはSub-Wもリギングされていた。さらにその外側には両翼のカバレッジを確保するためにサイドフィル用スピーカーが設置されていた。ただしディレイスピーカーの設置は無かった。
またSub-Wはステージ下にも追加でグランドスタックされていた。すべて『MLA』で統一されていた。
それで朝一番ということもあって会場のスペースには余裕があったため「これは『MLA』の実力を体感する絶好のチャンス」だと思った。要するに同一のアーティストのパフォーマンスを会場のさまざまな場所で『MLA』の響きを試聴できるまたとないチャンスだ。それでこのような試みを行ってみた。
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*実施概要
○対象アーティスト ・・・ KREVA
○対象SRスピーカー ・・・ 『MLA』・サイドフィル用 (他のオーディエンスの迷惑にならないように)
○具体的な方法 ・・・ サイドフィル用の軸上に位置しながら、縦軸方向に移動してそれぞれの位置で試聴する
・スタンディングゾーンの最前
・スタンディングゾーンのキャパ1/4
・スタンディングゾーンの1/2(F.O.Hブース付近)
・スタンディングゾーンの3/4
・スタンディングゾーンの最後方
・シートゾーン前方
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ちなみに"国営ひたち海浜公園" の地図で概算したところ、スタンディングゾーンの最前から後方までは "130m ±α" 程度に考えられる。それで今回はディレイ・スピーカーは設置されていなかったので "ステージからの距離=F.O.Hスピーカーからの距離" と考えて良い。
それで各位置での試聴したインプレッションを書こうと思ったが・・・・ それは必要無いと思った。だって、中・高音域はどの位置にいても素晴らしい明瞭性と十分な音圧を保っており、全く同一の響きなのだから(シートゾーン前方を除く)。
例えば、ゾーン最前のF.O.Hスピーカーの真前に位置して、耳が痛くなったことは皆さんも経験済みだと思う。今回『MLA』の真前に位置しても中・高音域は不快に感じることはなく、むしろバランスの取れた、適宜な響きだと思った。このF.O.Hスピーカーの真前に位置して耳が痛くなるというのは、特に用いられているのが点音源方式のスピーカーの場合だと思う。
点音源方式のスピーカーを用いて、中・高音域を長い距離の後方まで十分な音圧で音波を飛ばすとなると、スピーカーの出音はゾーン最前では尋常ではないほどの高い音圧に設定しておかないと後方まで届かない。
"DJ BOOTH" のF.O.H用スピーカーはその点音源方式のものが採用されていた(最前まで行けず銘柄を視認できず)。それで"DJ BOOTH"でのピエール中野氏のパフォーマンス時は、オレはゾーン外の柵の外から観ていたが、十分な明瞭性と音圧だった。その後、BABYMETALのパフォーマンスとなってゾーン内に入り、F.O.Hブース横で観ることにしたが・・・・
その音圧が尋常ではなく、5~8kHzの高音域がかなりピーキーで金属系音色が特に耳に刺さるように痛く、正直聴いていられるようなものではなかった(苦笑)。それで耳への過剰な負担が心配になって後方に下がってしまった。それでもまだきつくて・・・・
結局、ゾーンの最後方付近が一番バランスが良かった。 同じ日に次世代のシステムの『MLA』と点音源方式のSRスピーカーの響きを聴いたことは "SRスピーカーの正統な進化" を象徴しているようにさえ思えた。
ちなみにBABYMETALのパフォーマンス時は、後に下がったオーディエンスを多く目にしたが、それが要因のような気がしてならない。メンバーはかなり頑張っていたのに残念だと思った。
ただし、F.O.Hエンジニアの名誉のために書いておくと、『TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2013』のBABYMETALのパフォーマンス時も点音源のスピーカーを導入しており、オレはF.O.Hブース付近で観たのだが、耳が痛くなったとは感じなかった。おそらくF.O.Hシステムの特徴なのだろう。
その一方で『MLA』はキャビネットごとに音波を飛ばすエリアを分割担当させているため、中・高音域においてはエリア最前であっても過剰な音圧になることもなく、そうかといってエリア最後方であっても、明瞭性と音圧が不十分になるとは感じなかった。
そして特筆すべきはゾーン後方のスピーカーから100m以上離れて試聴していても、音波の遅延はほとんど感じられず、驚くことに音源が5m前後に存在するような "定位と音像が近くに感じられる" ことだった(音波の遅延に関しては、屋外であるため反射や残響が少ないことも影響しているが)。
これはオレが主催するオーディオ・オフ会に参加された方々ならお気づきかもしれないが、オレのクルマのオーディオシステムもタイムアライメント機能を用いて "定位と音像が近くに感じられる" ようにセッテングしてある "あの感じ" だ(過去のオーディオ・オフ会後に、なおっちさんがその感想エントリーに「音源が近い」と書いていた)。
これも本当に凄いと思った。 "Digital Signal Processer(DSP)" のテクノロジーの進化ハンパない。これも『MLA』の響きの真骨頂だと思う。
ただし超低音域に関してはどうしても距離における音波の減衰が感じられた。屋内の使用であれば建物自体の共鳴などを用いて、直接音でなくても後方まで十分な迫力が引き出せると思う。しかし今回のように野外となってはその手法も使えない。その対策として今回はメインの隣にSub-Wもリギングされてはいたが、後方では超低音域の量感は不足気味だった。
そういうこともあってか後方までの超低音域の音圧を稼ぐために、逆にゾーンの最前では超低音域が過剰気味の音圧であることは否めなかった。その後のPerfumeのパフォーマンス時はグランドスタッキングされたSub-Wの4~5列目に位置していたが、その尋常ではない超低音域に・・・ 恐怖さえ感じた(苦笑)。
そのような意味で考えると、『MLA』において超低音域から高音域までバランスのとれた響きで楽しむとなると、F.O.Hブース付近からその少し前ぐらいが適していると思う。
そういえば最近コアなPerfumeファンの間では "F.O.Hブース付近に陣取る" というのが流行っている(?!・笑)らしいのだが、その響きを楽しむのであれば正しい選択だと思う。 だってオレもPerfume以外だったら、ほとんどF.O.Hブース付近に陣取るからなぁ(笑)。
さて、『MLA』の設計思想には『最適化(optimization)』というものが強く反映されている。これは、
"どの会場であっても、どのエリアであっても、オーディエンスに同一の音圧・音質を提供する"
というものだ。
そのための手法として "ラインアレイ" のような線音源方式とはまた一味違った "Multi- cellular" 方式を採用した。この方式は最大72のエリアに分割担当させ、会場のエリアごとの音響特性にあわせて"能動的な最適化" が行える。この特性こそが『MLA』が持っている性能の真髄といっても過言ではないだろう。
今回の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』ではこのような "距離を変えて試聴" が実施でき、『MLA』の性能と本領をオレ自身の耳で確認できたことがかなり貴重であり、非常に有意義だと思った。また勉強になったと思う。
こんなことはワンマンLiveでは到底できない。フェスの朝一のステージを観に行ったからこそだと思う。そしてこれもフェスの楽しみ方の一つなのかもしれないと思った。
今年の年末にドームクラスのワンマンLiveを控えているPerfume。その際に『MLA』が投入されれば・・・・ かなり期待して良いんじゃないだろうか。
<○追記>
過去のエントリーで、おとわしゅなさんからこのようなコメントを頂いた(ありがとうございます!!)。
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ちなみに私は初日から参戦したのですが、初日の渋谷社長の朝礼の話では、今回GRASS STAGEのレイアウトや方向をかなり変えたとの事。
前回までは舞台上から観覧車が全く見えなかったのですが、今回から見えるようになるくらい、角度が変わったようです。
お陰様で?終日フロントエリアは日差しに見舞われることになりましたが・・・
さらに興味深い事に。ステージの向きを変えた事により、近隣にまで音が届いてしまうので、目の前で爆音でもある一定の距離で急激に減衰するようなセッティングにした、と言っていました。
エンジニアの方の名前と映像が紹介されていましたが、名前はちょっと忘れてしまいました。
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これは『MLA』の最大の特徴である "LEKGE性能" のことを語っていますね。『MLA』はその指向性も電気的にコントロールできるので、
"狙ったところに音波を飛ばし、狙ったエリア以外は音を漏らさないようにする"
ということが高次元で達成したシステムです(ちなみに位相特性でコントロールするようです)。ちなみにMSI JAPANは既に、2012年4月の東方神起の東京ドーム公演でこの『MLA』を導入し、大きな成果を得ています。これは東京ドーム公演を控えるPerfumeにとっては、その意味は大きいです。
指向性をコントロールできるため反射や残響音をかなり減らせますし、ご存じかもしれませんが、東京ドームでの公演では近隣への配慮のため音圧規制があります。そのため、これまでは会場のエリアによっては迫力不足などがあったかもしれません。
しかし『MLA』は極端に音漏れが少ないため、これまでのように音圧規制を気にしなくてもいいんですね。東方神起の東京ドーム公演のF.O.Hを担当した村田孝氏(佐々さんの上司)がインタビューでこのように語っています(もう少し詳しい内容は過去エントリーをご参照ください)。
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「村田 : 前省略・・・ それで言うと今回、音に対する苦情が1件もなかったんです。『東京ドーム』はこれまで何度も経験していますが、規制値が100dBのところをピークで、105dB入ると必ず周辺のどこからかクレームが入ります。」
「村田 : でも最終日はアベレージで105dBを超えても苦情がありませんでした。」
『PRO SOUND』2012年8月号より
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『RIJ2013』や『ソニマニ2013』などでも『MLA』の響きはリスニング用のオーディオ機器の雰囲気に近く、素晴らしい響きだと思いましたよ。たしか『RIJ』では2011年ぐらいから『MLA』は導入されていると思いました。
ちなみに『MLA』のシステムのエンジニアリングを担当するのは菅原拓也氏だと思います。
ドーム公演を期待しましょう!!!!!
<○追記2・18日am9:27>
あっ、そうそう思いだした(笑)。
今回の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』では、最後の追加募集でようやく駐車場を確保できた(苦笑)。その確保できたところは臨時第2駐車場で "翼のゲート" をすぐ出たところに位置し、アクセスが非常に便利だった。
*ちょうど駐車場ぐらいの位置から撮影したもの。目前の赤い『RIJ』の看板付近が "翼のゲート" でその手前がロータリーとなっている
したがってベースキャンプをそこに設置して、休憩は自分のクルマまで戻って適宜とっていた。
会場の位置関係としては "翼のゲート" を通過すると眼前に "LAKE STAGE" が拡がるという感じだ。ちなみに当然 "LAKE STAGE" もF.O.H用スピーカーとして『MLA』を導入し、ディレイスピーカーの設置は無かった。
*『RIJ2009』のものだが、位置関係は同じなので代用(笑)
それでお昼の休憩をクルマでとった後、ピエール中野氏のパフォーマンスを観るために会場に向かう。それで興味深いことに "翼のゲート" のロータリーを通過するぐらいから突然、中・高音域の高い明瞭性と十分な音圧が感じられる、伸びの良いトータス松本氏のボーカルが耳に飛び込んできた。
そして更に驚くことにF.O.H用スピーカーからは約200m前後離れていると思われたが、音源が5~10m前後に存在するような "定位と音像が近くに感じられる" ことであった。
その後に"LAKE STAGE" で奥田民生氏のパフォーマンスが行われ、オレはステージの最後尾で観ていた。残念ながらこの後のPerfumeのパフォーマンスに備えるために2曲のみを聴いた後、休憩を取りにクルマに戻った。その時もやはり "翼のゲート" ぐらいまでは中・高音域の高い明瞭性と十分な音圧が感じられたが、ロータリーを越えたぐらいから、急激に中・高音域が減衰したように感じた。
そうなると"LAKE STAGE" のカバレッジは"翼のゲート"のロータリー付近を境界として、かなり厳密に設定されていると考えても良さそうだ。
これには思わずオレは唸ってしまった。心の底から感心した。
『MLA』の最大の特徴である "LEKGE性能" を物語るエピソードであり、その指向性の高いコントロール性能とエリア外での音漏れの少なさを偶然にも体験できたエピソードだと思う。こういうこともワンマンLiveではなかなか経験することは難しく、非常に貴重な経験だと思った。
こういうところも含めて楽しむのが、フェスを満喫する醍醐味だと感じたことを追記しておきたいと思う。
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