★1951年 三菱ふそうB2型ボンネットバス ヤナセボデー  ~ 自動車カタログ棚から 212  | ポルシェ356Aカレラ

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★1945年(昭和20年)8月15日に終戦となった後、爆撃により廃虚と化した国内の都市を復興するためには交通・運輸の再生が不可欠と判断したGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は民需用トラック・バスの生産を早期に許可した。
終戦後僅か1ヵ月余の1945年9月25日のことである。その許可にいち早く応えたのが三菱ふそうであった。1946年(昭和21年)7月にKT1型4tトラックを、同年11月にはB1型バスを生産開始した。このB1型バスが戦後の国産バス生産第1号となった。

★三菱ふそうB1型バスは、戦時中、鉄道省や満鉄、台湾総督府に納入して定評のあった大型バスB46型をベースとして、120psGA型ガソリンエンジンを搭載した大型ボンネットバスであった。
しかし、我が国の燃料事情によりディーゼルエンジンの開発が急ピッチで進められ、戦前の商工省統制型エンジン三菱Y6100D型をベースに1948年(昭和23年)にDB0型ディーゼルエンジンが完成。このDB0型エンジンは6気筒水冷直列4サイクル予燃焼室式で大型バス・トラックに搭載されることとなった。このDB系エンジンは次世代エンジンにバトンを渡す1966年(昭和41年)まで三菱の大型車に搭載され、産業用エンジンとしては1987年(昭和62年)までと非常な長寿を誇り三菱の戦後を代表する名エンジンとなった。

★三菱ふそうB1型ボンネットバスは1950年(昭和25年)までに約500台が生産された。
一方、三菱ふそうでは1947年(昭和22年)には、当時のガソリン入手難による電気自動車ブームに乗り三菱電機、日本電池、日本建鉄と共同開発で大型電気バスMB46型も開発、1948年(昭和23年)までに107台を生産した。1948年(昭和23年)には前述のディーゼルエンジンDB0型を搭載したB1型バスが生産された後、1950年(昭和25年) にはエンジン搭載位置を前進させフロントオーバーハングを延長したB2型ボンネットバスにモデルチェンジした。なお、B1型およびB2型バスのシャーシはT1型およびT2型トラックにも流用されたが、1951年(昭和26年)よりトラックは全く別シャーシのT31型の生産を開始した。

★三菱ふそうB2型ボンネットバスはホイールベースの異なる次の3種が生産された。
(1) B23型中型バス・・・・・ホイールベース4500mm・全長8990mm
(2) B24型超大型バス・・・・・ホイールベース5600mm・全長10440mm(ロマンスシート車)
(3) B25型大型バス・・・・・ホイールベース5220mm・全長10060mm(ロマンスシート車)

即ち、B25型が標準車、B24型が長尺車、B23型が短尺車であった。
B2型ボンネットバスは1955年(昭和30年)に型式名はそのままでヤナセボディに影響されたと推察されるフロントスタイルにデザインを一新した。その後、翌1956年(昭和31年)には型式名称がB200型(B260=短尺、B270=長尺、B280=標準車)に変更され、1958年にはDB31A型155psエンジンを搭載したB300型(B360=短尺、B370=長尺、B380=標準車)となった。そして、エンジン出力を165psまで引き上げた後、1961年(昭和36年)限りで三菱製ボンネットバスは生産を終えた。三菱のボンネットバス生産終了から半世紀余り、現存している個体は非常に少ない。


【主要スペック】 1953年 三菱ふそうB24型ボンネットバス (ロマンスシート車)
全長10440mm・全幅2400mm・全高2750mm・ホイールベース5600mm・車重6775kg・FR・DB5A型水冷4サイクル直列6気筒予燃焼室式8550ccディーゼル・最大出力130ps/2000rpm・最大トルク50kgm/1200rpm・変速機4速フロアMT・乗車定員:座席41名・立席乗員含め76名・最高速70km/h



●1951年 ヤナセ・バスボデー カタログ (縦17.5×横23cm・3つ折6面)
1915年創業のヤナセは戦前からボディメーカーとしても実績を積み、戦後は1964年東京オリンピックに際して造られた三菱ふそうスーパーデラックスはとバス(本シリーズ第121回記事参照)までバスボディの製作を行っていた。現在も後継のヤナセテック(株)が医療車等のボディ製作を続けている。ボディメーカーとしてのヤナセのカタログは総じて現存が少ないが、自動車史研究の第一人者であった五十嵐平達氏が描いた表紙のものも存在すると言われる。このカタログは日野トレーラーバス1台を除き全て三菱ふそうバスで構成されている。表紙の車両は1951年に三菱の広報用キャラバン車として納入されたと言われるB22型。表紙の女性は当時20歳としても現在は80代になられているだろう。
ヤナセ表紙
中頁から
B-2と記載があるが、これは外国人専用定期バス「東京―箱根エクスプレス」用のB1型。室内は超豪華なシートが装備されている。当時、東京から国道1号線で南下して箱根までの所要時間は3時間も要したという。
ヤナセ中(1)B1
ヤナセ中(2)B1アップ
ヤナセ中(3)B1室内
三菱ふそうB-2型・大阪市交通局みちしお号。特徴的なフロント周りは英車スタンダードバンガードを真似たと言われるデザインだが、これが1955年のB2後期型のデザインに繋がった。
ヤナセ中(4)大阪市営
ヤナセ中(5)大阪室内
三菱ふそうB-2型・三菱東日本重工キャラバン用車両。表紙写真の車両でフロント曲面ガラスやスパッツを付けた後輪が魅力的な流線型。3色?に塗られた塗装がこのモノクロ・カタログでは分らないことが惜しまれる。
ヤナセ中(6)キャラバン
ヤナセ中(7)キャラバンアップ
三菱ふそうB22型・市営バス?とだけ書かれたボディは標準的な路線仕様だがリアフェンダーの流れるような装飾がヤナセらしい。市営?の文字の下あたりに見える紋章はどこかのバス会社のものだろうか。
ヤナセ中(8)市営バス
裏表紙:東京都港区芝高濱町六番地の梁瀬自動車高濱バスボデー工場全景と本社・各支店等の連絡先住所電話番号一覧
ヤナセ中(10)裏工場・支店


●1953年1月 帝国自動車工業 バスボディ カタログ (縦18×横18cm・3つ折6面)
これもボディメーカーの後年、日野車体工業となった帝国自動車のカタログ。いすゞBXや日野BDと共に三菱ふそうB25型メトロ窓仕様(4E A852)の東急バスが掲載されている。
帝国(1)東急メトロ
帝国(2)東急図面
このカタログの表紙はいすゞBX91Vリアエンジンバス
帝国(3)表紙
裏面
帝国(4)裏表紙



●1953年? 三菱ふそうディーゼルバス総合カタログ (B5判・6つ折12面)
飛び出たヘッドライトに通称「パルテノン神殿」グリルのB2型ボンネットバス前期型
53表紙
中頁から
53中(1)
右下の天井が開閉するトップフォルディングバスはヤナセが製作し大分県の亀の井バスに納入した車両
53中(2)オープンバス他
図面: B23型
53中(3)B23図面
図面: B24型
53中(4)B24図面
図面: B25型
53中(5)B25図面
裏面スペック
53中(6)B25裏スペック



●1955年4月 三菱ふそうB2型ディーゼルバス 専用カタログ(A4判・2つ折4面)
ヤナセボディの影響が感じられるフロントマスクに一新された。
55表紙
中頁から
55中(1)
55中(2)アップ
シャシー
55中(3)シャシー
室内・中央にふそうマークの入った魅力的なステアリングホイール
55中(4)室内&ハンドル
裏面スペック
55中(5)裏面スペック


●1957年5月 三菱ディーゼルバス/トラック総合リーフレット (B5判・表裏1枚)
B200型ボンネットバス掲載
57年リーフレット


●1958年6月 三菱ふそうB300型バス 専用カタログ (A4判・3つ折6面)
DB31A型155psエンジンを搭載した最終B300型
58表紙
中頁から
58中(1)
図面: B360型/B370型
58中(2)図面360+370
図面: B380型/各シャシー
58中(3)図面380+シャシー
裏面スペック
58中(4)裏スペック




★オマケ(その1): 京商 1/80スケール 1954年三菱B25型ボンネットバス 東急江ノ島線仕様 (金華ボディ)
2001年東急バス創立10周年記念限定モデル02番。ポリストーン製。恐らく三菱ボンネットバス唯一のミニチュア。実車は東急最初の長距離バスとして開業した「江ノ島線」(渋谷駅~江ノ島間56.4km)のために新造されたメトロ窓の斬新なデザインで淡島営業所に配備された。快適に長距離乗車が出来るよう全てロマンスシート。晩年は不動前営業所に配備され一般路線用に使用されたが一般路線の中でも比較的長距離の都心乗り入れ路線を中心に使用された。このカラーの東急バスを懐かしく感じる方も多いのでは。
ミニカー(1)
ミニカー(2)
ミニカー(3)
ミニカー(4)


★オマケ(その2): 五十嵐平達コレクション 1949~1950年?三菱ふそうB1型・B2型 カタログ
モータービークル臨時増刊「日本のバス1986」に掲載された五十嵐平達氏の記事「カタログで見る戦後10年のバス車両」に掲載されたカタログ写真。上がB1型表紙、下がB2型表紙。B2型の表紙イラストは遠近法を完全に無視した絵柄。どちらのカタログも三菱重工と川崎機器製作所のダブルネームとなっている。このカタログ達は現在、五十嵐氏のコレクションが寄贈されたトヨタ博物館に保存されているはず。
五十嵐氏カタログ


★オマケ(その3): 上野広小路の三菱ふそうボンネットバス都営新旧カラー2台
河村かずふさ氏撮影。ネコ・パブリッシング2006年刊「思い出色のバス」より。三菱ふそうの都営新旧塗装2台が揃った珍しい写真。手前の緑系塗装が1959年までの旧カラー、奥の肌色に赤帯が新カラー。右奥の上野松坂屋、背後の三井信託銀行(現三井住友信託銀行)と手前の公園の前に都バスが停車という風景は現在も殆ど変わっていない。
都営ふそう車2台


★オマケ(その4): 光洋社の保育絵本「自動車づくし」 (B5判・12頁)
当時定価30円。1950年代、光洋出版発行。絵:梅本 洵 画伯。表紙は三菱ふそうB2型ボンネットバス。背後には80系湘南電車。中頁にはトヨペットスーパーRHK型や1954年トヨタFA型トラックなどが描かれている。
絵本(1)


★オマケ(その5): きくやの愛児絵本「あたらしいのりもの」 (B5判・12頁)
当時定価30円。1950年代、大阪阿倍野区のきくや書店発行。絵:初瀬五郎 画伯。背後に描かれたEF58青大将つばめが泣かせる。中頁には1956年登場の赤い京浜急行初代700形電車や旧塗装の都電7000形などが描かれている。
絵本(2)


★オマケ(その6): ひかりのくに絵本「消防じどうしゃ」 (B5判・12頁)
当時定価50円。1950年代、大阪市南区のひかりのくに昭和出版刊。絵:秋吉文夫 画伯。これはバスではないが、「パルテノン神殿」と言われたB2前期型バスと同じ特徴的なグリルが鮮明に描かれた魅力的な表紙。中頁にはヂャイアント三輪消防車、1958年以前のいすゞBX消防車などが描かれている。
絵本(3)消防車


★オマケ(その7): バスラマエクスプレス06「ヤナセのバスボデー」 (A4判・56頁)
ぽると出版2001年7月31日発行。定価1200円(税抜)。ヤナセの造ったバスボディに関心のある人必読の書。日本のバス研究の第一人者 和田由貴夫氏による梁瀬次郎氏、ヤナセの設計担当だった藤田文彦氏、井上精二氏へのインタビューなど非常に興味深い内容の一冊。
絵本(4)ヤナセ本