★1963年三菱ふそうスーパーデラックスはとバス 東京オリンピック ~自動車カタログ棚から121 | ポルシェ356Aカレラ

ポルシェ356Aカレラ

★20世紀の自動車カタログ、鉄道車輛カタログ、玩具・模型カタログ、ビートルズ、ショパン、ヴィンテージ・ポルシェ、草軽電鉄 etc


★都心でよく見かける鮮やかなレモンイエローの大きなバス。ボディサイドのHATO BUSの赤いレタリング。昔から東京観光といえば、この「はとバス」。その名は東京だけでなく、観光バスの代名詞のように広く全国に知れ渡っている。「はとバス」は路線バスのように決められた時間に発車して決められたコースを運行する「定期観光バス」。定期観光バスは全国で様々なバス会社が運行しているが、東京では「株式会社はとバス」だけが唯一定期運行の許可を得ている。はとバスの株式の4割近くを東京都が保有しており、歴史的にも都との繋がりは深い。

★「株式会社はとバス」の前身である新日本観光株式会社が設立されたのは、戦後3年を経た1948年(昭和23年)8月14日65年前のこと。東京地下鉄道出身の山本龍男氏が設立し、「はとバス」の名も山本氏が平和の願いを込めて名付けた。平和、安全、スピード、そして発車してまた元の場所に戻ってくるという意味も込めた「はとバス」には、鳩を図案化した円形のシンボルマークも創られ、バスの前面にはヘッドマークとして取り付けられるなどして永く使われることとなった。
終戦直後の混乱期に山本氏は復興後の日本の姿を思い描き観光バス事業に注目した。東京で定期遊覧乗合バス「青バス」の運行が開始されたのは1925年(大正14年)年だが、戦争によって運行は休止し、営業権は東京都(当時は東京市)が所有していた。都に営業権譲渡申請をしていた山本氏は、タクシー会社と共同で会社を作り営業権を獲得。新日本観光株式会社は本社を上野に車庫を中野に構えて業務を開始した。
同社が運行した最初の観光バスは、1949年(昭和24年)年の元旦に出発した成田山初詣の団体貸し切りバス。会社が保有するバスは新車・中古車を合わせて10台あったが、運転士は7人しかおらず、やむなくタクシー会社のドライバーを派遣して補っていたという。
団体貸し切りバスで運行を始めたものの新日本観光が目標としていたのは、都内の名所を巡る定期観光バスの運行だった。それが実現したのは、成田山初詣の最初のバス運行から2か月程後の1949年(昭和24年)年3月19日。「富士」と名付けられた第1号車は上野駅の正面口から発車し、「都内半日Aコース」と名付けられたルートを3時間半かけて周遊した。このコースの下車ポイントは、上野公園、皇居前、赤坂離宮(現 迎賓館)、浅草観音の4ヵ所。午前と午後の1日2便を運行し、料金は大人250円だった。大卒初任給が3000円程だった時代のこと、現在の貨幣価値では15000円程度に当たるだろうか。僅か半日の周遊にしては贅沢な観光だったといえる。ちなみに、2013年現在、はとバスのショートコースは大人1500円程度で乗車できる。
法的に路線バスと位置付けられる定期観光バスは、一人でもお客がいれば運行しなければならない。私は都内に居ながら、はとバスが好きなので時たま気が向くとふらりと乗車するのだが、実際本当にお客さんが少ないなと思う時もある。ここ最近はスカイツリーや東京駅丸の内口駅舎の復元など東京を巡る新しいトピックが増え、また2階席屋根なしオープンバス導入などの効果もあって客足は伸びているようだ。

★1958年の東京タワーの完成や1964年の東京オリンピック開催のあった昭和30年代(1950年代後半から1960年代前半)は庶民の所得増も手伝い空前の観光ブームとなり、はとバスのチケットを買うのが難しいほどでもあったらしい。そんな時代に登場したはとバスが今回ご紹介するスーパーデラックスはとバス。ちょうど今から丸50年前の1963年(昭和38年)4月、東京オリンピックの開催を翌年に控えてデビューした当時最新鋭の豪華観光バス。三菱ふそうのシャシーにボディは個性的なデザインのA・B2タイプのボディが架装された。自動車歴史研究の第一人者であった五十嵐平達氏がデザインしたことでも非常に有名な月光仮面と言われたAタイプは京成自動車工業で製作され、金魚鉢と呼ばれたBタイプは梁瀬(現ヤナセ)で製作された。最前部の運転席が最も低く、後席に行くほど高くなるという乗客の視界が抜群のシアター形式シート・レイアウト(劇場型座席配置)がされていたことが大きな特徴であった。運行は外人用定期観光コースから開始された。1960年代を代表する日本の花形バスであり、当時の絵本に多数登場したほか、モデルカー(ミニカー、プラモデル、ブリキ玩具)としても多数発売される人気者であった。

【主要スペック】 1963年三菱ふそうAR470Sスーパーデラックスはとバス
全長10800㎜・全幅2480㎜・全高3000㎜・ホイールベース5400㎜・車両重量9800kg・エンジンDD34型ターボチャージャー8550cc・最高出力220ps/2300rpm・エアサス・冷暖房完備・4ヵ国語同時放送可能テープレコーダー搭載・乗車定員40名+乗員2名


●1963年4月発行 三菱ふそうAR470Sスーパーデラックスはとバス 本カタログ (A4判・3つ折+α)
新日本観光株式会社 発行。新日本観光は、1963年9月に「株式会社はとバス」に社名変更。
$1959PORSCHE356Aのブログ-本表紙

※中頁から 
$1959PORSCHE356Aのブログ-本1中
$1959PORSCHE356Aのブログ-本2中
$1959PORSCHE356Aのブログ-本3中
$1959PORSCHE356Aのブログ-本4中
$1959PORSCHE356Aのブログ-本5中
$1959PORSCHE356Aのブログ-本6中
$1959PORSCHE356Aのブログ-本7中

※スペック掲載頁
$1959PORSCHE356Aのブログ-本8中スペック

●1963年4月発行 三菱ふそうAR470Sスーパーデラックスはとバス 簡易カタログ(B5判・両面1枚)
新日本観光株式会社発行。裏面は当時のはとバス各コース案内。スタンダードコース500円前後から吉原おいらんショーを含む夜の豪華コース3300円まで30コース以上がラインナップされている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-簡易表紙
$1959PORSCHE356Aのブログ-簡易裏面



★オマケ(その1): マルサン商店 1/27スケール 1963年スーパーデラックスはとバスAタイプ
1964年発売。マルサン品番:No.226。当時定価:全国売価380円。全長約40cm。このバスをデザインした五十嵐平達氏もこの出来の良いマルサン製モデルを購入され、山中湖高村美術館の五十嵐コレクションコーナーに長いこと展示されていた。
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン(2)
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン(3)


★オマケ(その2): 米澤玩具 1/23スケール 1963年スーパーデラックスはとバスAタイプ
1964年発売。米澤玩具品番:No.714。当時定価:都内800円・全国880円。全長約48cm。
$1959PORSCHE356Aのブログ-米澤(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-米澤(2)


★オマケ(その3): 東京プラモ 1/36スケール 1963年スーパーデラックスはとバスAタイプ プラモデル
1966年4月10日発売。当時定価1500円の高級プラモ。部品総数264点もある巨大な箱に入った精密プラモ。はとバスのカラーパンフレット入り。
$1959PORSCHE356Aのブログ-東京プラモ(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-東京プラモ(2)
プラモデルの箱に封入されていたスーパーデラックスはとバスのパンフレット(B5判・両面1枚)。裏面は、はとバスの営業所案内。
$1959PORSCHE356Aのブログ-東京プラモ(3)


★オマケ(その4): ホープ 1/25スケール 1963年スーパーデラックはとバスBタイプ
アサヒ玩具から金型を譲り受けて発売された製品。当時定価:調査中。全長約44cm。同じ金型で更に室内の表現を省き窓を乗客のプリントとしたものが三浦トーイから発売されている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-ホープ(1)Bタイプ
$1959PORSCHE356Aのブログ-ホープ(2)Bタイプ
$1959PORSCHE356Aのブログ-ホープ(3)Bタイプ


★オマケ(その5): ダイヤペット159番 1/90スケール 1963年スーパーデラックスはとバスBタイプ
1967年1月発売。当時定価550円。日本初のバスのミニカー(マルサン商店の英国製DINKYコピーモデルを除く)。
$1959PORSCHE356Aのブログ-ダイヤペット(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ダイヤペット(2)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ダイヤペット(3)


★オマケ(その6): 映像「1963年 東京」
懐かしい場所、クルマ、鉄道、そして人々。私にとって、この時代の東京の映像は感涙もの。
東京オリンピックを控えて都内で道路工事、地下鉄工事が盛んに行われていた頃。ハイヒールの女性の踵が歩道の木目に挟まってしまう場面が印象的。東京オリンピックを控えた貼紙も見られる。



★オマケ(その7): 2012年 はとバス スカイツリーコース 動画
高さ3800mmの鉄道高架ガード下を全高3750㎜の2階建てオープンバスが通過するのは驚き。僅か5cmしか隙間がなく、通過時に乗客が手を伸ばしたら大怪我しそうだ(立ち上がったら首が飛びそう)。子供の頃、バスから手を出しているとよく危ないと言って怒られたものだが、そんなレベルの危なさを超えているような気もする。