マイ・ブラザー-★★★★- | not simple.

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あるときはさすらいの本読み、あるときはジャンル無用の映画好き、またあるときは、B級グルメの備忘録

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(C) 2009 Brothers Production, LLC. All Rights Reserved.

英題: BROTHERS
製作年: 2009年
製作国: アメリカ
日本公開: 2010年6月4日
(TOHOシネマズ みゆき座 ほか)
上映時間: 1時間45分
配給: ギャガ
カラー
公式サイト
監督: ジム・シェリダン
脚本: デヴィッド・ベニオフ
キャスト:トビー・マグワイア、ジェイク・ギレンホール、ナタリー・ポートマン、サム・シェパード


アフガニスタンで兵役に当たっている夫・サム(トビー・マグワイア)の帰りを待つグレース(ナタリー・ポートマン)の元に、サムの訃報が届く。絶望のふちにいるグレースと二人の娘を慰めてくれたのは、サムの弟、トミー(ジェイク・ギレンホール)だった。そんなある日、まさかの帰還をしたサムだったが、まるで別人のように変ぼうしていて……。
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今年の45本目。
デンマーク映画の「ある愛の風景」のハリウッドリメイク版です。

まさかこの作品を両方とも観るとは思いもよらなんだ。
いあ。観たかったんですが、鬱になりそーな重たい話なので腰がちょっと重くてって感じでした。
オリジナルは若干難解なんですよ。
ラストとかどうなるかわからない雰囲気で終わるので。

しかし観てよかった。

メインどころ3人はじめ、役者がすごい全力投球というか、キョーレツな演技力。
トビー・マグワイアの激痩せぶりも怖いけど、弟役のジェイク・ギレンホール、ナタリー・ポートマンそれぞれも非常に静かに熱い演技がすばらしい。
彼らだけでなく、長女役の子役(ベイリー・マディソン)が憎いくらいの演技なんですよ。
この子はまじですげえ!

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若干、使用前使用後があまり差分はない気がしないでもないですが、すごい痩せててこわかった。
罪の意識から、弟と妻の仲を疑い、家族をばらばらにしてしまう夫。
しかし髪型がどうにも似合わないね~。

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16歳から付き合ってた夫と結婚して幸せだったはずなんですけどね~。
フットボール選手とチアリーダーのカップルというどう考えても栄光のカップルだったはずなのに。
非常に不幸そう・・・ってか苦悩した女の顔がすばらしい。

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兄を慕っているけれども、だんだん兄の位置を家族の中で占めてしまう弟。
兄と比べ続けられ、父にもぼろかすに言われて落ちこぼれ人生だったんですが、兄の不幸が起こったおかげで自分の家族としての位置をはじめて得ることができた。
でもそれがいびつなことも知っている。そんな複雑な心境の表現がすばらしかった。

この3人の感情の起伏といい、やり取りがなんともいいです。
オリジナル版は妻と弟はどうやっても喪失感を埋めるために傷をなめあっていることがわかる演技なんですけど、ハリウッド版はこの2人の気持ちは危うい一線でどちらともつかない印象。
こういう心の深部の揺らぎ具合を表現しているというのは本当に、気持ちにぐっと来ます。
対して、2人の仲を疑う夫も、本当は心のそこから、二人の仲を疑ってないんです。

苦しくて苦しくて。
アフガニスタンで起こった拷問や自分が最終的に選択した答え、そしてそれを誰も責めない(というかその事実を知らない)。
罰してほしい・・・!そういった無言の叫びから一番大事にしていた家族をばらばらにしてしまおうとする。そういう解釈の広がりが今回はあってよかった。

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また子役がいいんだわ。
特に何回も言うけど長女。
みんなでスケートに行く途中に、「みんな妹のことが好きなんだよね。だってかわいいんだもん」と寂しそうにいうところとか、戻ってきた大好きだったはずの父親が様子が変で、つらい。
大好きだったんだけど、好きになれなくなってしまった。でも大好きだったはずなのにってところで、トビー・マグワイアが何度も子供たちに使っている冗談を言うシーン。
それをきいて笑って、トビー・マグワイアがほっとしていなくなったあとに、へちゃっと顔の表情が崩れる。
もうこのシーンはやばいぃ!としかいえない。

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戻ってきた兄を出迎えるシーンの複雑さ加減もすばらしい。
うれしくて、でもやっと出来上がった居場所をなくすことへの恐怖。
そしてナタリー・ポートマン扮する妻への淡いまだはっきりしないけれども惹かれている気持ち。
これらを振り切らなきゃいけなくて、どうにも気持ちが定まらない。
そのあたりがよいです。

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そしてその感情をまだきれいに整理がつかない状況での兄の自分への疑い。
これに反発したり、怒ったりもせず・・・たぶん心のどっかにあるんですけど、怒りは。
でも、兄が好きだっていう気持ちが先にあふれてしまうスケート場のシーン。
もうこのあたりはやばいっす。

エピソードがうまくつなぎあって、ミルフィーユのように層になっていく形。
はかないパイ生地の間に挟まれてある、繊細なクリームが淡く融け消えていきそうな味わいがたまらんっていうような後半。

で。結局、夫は爆発してどうにもならなくなり警察のお世話→精神科のある病院に収監。
面会に来た妻との会話で、未来はこれからどうなるかわからないけれども・・・。
ただ、「16のときからあなたを愛してきたのよ」という妻にやっと泣きつけるシーンは非常に複雑。
だって全員、もう元の気持ちに戻れないのはわかりきっているから。
無邪気にお互いを信じられないけれども、でも何らかの強い感情が、もしかするとそれを「家族」という感情なのか、「一種の愛」というのかが存在するから、というなんとも複雑な忘れられない作品になっています。

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