宮廷画家ゴヤは見た-★★★- | not simple.

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英題: GOYA'S GHOSTS
製作年: 2006年
製作国: アメリカ/スペイン
日本公開: 2008年10月4日(スバル座 ほか)
上映時間: 1時間54分
配給: ゴー・シネマ
公式サイト

スタッフ:
監督・脚本: ミロス・フォアマン
キャスト:
ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド



【シネマトゥデイより】
18世紀末スペイン、ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は国王カルロス4世(ランディ・クエイド)の宮廷画家に任命される一方、権力や社会を批判する絵画も描いていた。
ある日、彼のミューズであるイネス(ナタリー・ポートマン)が、ロレンソ神父(ハビエル・バルデム)が指揮する異端審問所にとらわれてしまう。
そして彼女を救おうとしたゴヤが見たものとは……。

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原タイトルは「GOYA'S GHOSTS」
家政婦が見た!的な邦題とはちょっと離れてますね。
またあらすじもミスリード。
普段見ているシネマトゥデイというよりも、公式サイトも似た感じだったので、多分配給自体がミスリード的なあらすじを配っているような気がします。

しかし。
ミロス・フォアマン・・・恐ろしい人だと思います。
『カッコーの巣の上で』、『アマデウス』と何か人間心理の底をえぐるものが多いですよね。
この人の作品は。
本作ではゴヤは本当に傍観者です。
これは監督本人の冷静な視点で物語を捉えるという役回りでもあるように思います。

悲劇の主役は天使のような美少女イネス。
うっかり兄と出かけた居酒屋で苦手な豚肉を食べなかったことから悲劇へと巻き込まれていきます。
豚肉を食べない=ユダヤ教信者という図式自体がこっけいですが、でも拷問にあった挙句、15年も拘束され、信じていた神父の子供を出産するとこまでいっちゃうのですが、すでに正気を手放しているのでこれが悲しいことということがまったく彼女にはわからないわけです。

もうオソロシスギル、の一言に尽きますね。
神を絶対とするということの危険さを感じます。
この狂信っぷりというのは人間のどっから沸きあがるんでしょうね~。
そもそも論として聖職者全員、非常に弱いです。
バルデム扮する神父は、仕事や野心を満足させるために宗教を選んだような人なので、思想はないです。
なので美しい少女の裸体を見せられてとんでもないことしちゃうわけですし。
そんな人たちが、「痛みを感じるのはうそついてるから。真実を話しているのであれば神が光臨する」とかチャンチャラおかしいことを大真面目に語っています。

ただ、この作品いったい誰が主役なんだろう?みたいな気持ちになるくらい視点がぐらぐらします。
ラストの最大の盛り上がりともいえる処刑シーンに関しては神父になっちゃいますね~。
ゴヤは本当に傍観者です。
イネスについては後半は、物語を進めるための動力ですしね。

追記:wikiでスペイン異端審問を見てみると実際上は結構無罪を証明されて放免になってるみたいですね~。
スペイン異端審問には(スペインを批判するために用いられた)「黒い伝説」の一部として、誇張され過大に語られてきた部分もあると見られる。
という風にあるので、イネスのような善良なお嬢さんのような人があんなめに遭うことはないように思いますが、フォアマンが描こうとしたものを表現するために必要だったんだろうなーとよりいっそう思います。